24 上月くんのDNA検査結果
上月くんのDNA検査結果が来た。
いや正確には、二人の相性が私のスマホアプリからも確認できるようになっていた。
私は家にいるときにたまたまDNA検査のスマホアプリを開いてそれを発見し、早速見てみることにした。
「HLA遺伝子マッチング率87%ですか。結構高いのではないでしょうか?」
そして肝心の遺伝的疾患のリスクを見ていく。
その全てに低リスクと表示されていて、相性は良いように思えた。
個人的に気になっていた心臓病のリスクも低いと表示されていて、私はほっとする。
「はい。問題はないようですね」
きっとこの結果をきらりさんに見せれば、納得してもらえるだろう。
私は結果を確認したことを上月くんへ伝える。
「私のスマホアプリに上月くんとの相性結果が追加されていて、先程確認させていただきました。どうやら二人の遺伝的相性には問題がないようです」
返事は5分ほどで返ってきた。
「それは良かったです。僕の元へはまだ書類は届いていませんが、恐らくは同じ結果でしょう。書類が届いたら母に結果を見せつけてやります!」
私はなんだか嬉しくなって一回転すると、それを見ていた母から「何か良いことでもあったの?」と興味津々に迫られてしまった。
「はい。とても良いことがありました」
素直に白状すると、母――祐奈は「もしかして上月くんとのこと?」と聞いてきた。
それに私は「はい。そうです」と言葉少なげに答えると、母は「ドレスを仕立てた甲斐があったわ!」と嬉しそうだった。
∬
二日後。私は上月くんに学校で朝話そうと誘われた。
いつもより30分ほど早く登校した学校は、まだ生徒が疎らで神秘的空気を醸し出していた。
出会って開口一番、上月くんが嬉しそうに言った。
「昨日、僕の元へも書類が届きました。
DNA検査の結果も母に見て貰って、二人のことを認めさせました!
これでもう母から余計なことをされることはないはずです」
「それは良かったです。あのきらりさんも認めてくれたんですね」
「はい。87%というマッチング率も日本人同士にしては高いと言ってくれました」
「私達の交際を認めて頂けたのは大きいですね……本当に良かったです」
とはいえまだ交際契約中なのだぞと自分に釘を刺す。
上月くんの本当の気持ちがどうなるかは分からないのだ。
「それで……遅くなってしまいましたが、藤堂さん、クリスマスイヴの予定は?」
「クリスマスイヴですか……? 夜は例年通り、父と母と過ごす予定でした」
「そうですか……平日ですし藤堂さんをディナーに誘いたかったんですが、昨日お店の予約状況を調べたらどこも一杯で……すみません!」
上月くんが私に深々と頭を下げる。
「いいえ……クリスマスイヴなのですからそれもしょうがないです。
……もしよろしければ、我が家へ来てはいかがでしょう?」
私がそう提案すると、上月くんは頭を上げて目を輝かせた。
「え?! 藤堂さんのお宅へですか?」
「はい。放課後軽くデートスポットを巡って、それから我が家になんてどうでしょうか? 私、母に聞いてみますね!」
まだ決まってもいない内から、私はスマホを取り出し母にメッセージを送った。
「その、いいんですか? 僕なんかが大事なご家族のクリスマスイヴにお邪魔して……」
「なんかではありません。結婚を前提とした交際をしている方ではありませんか。
ならば家族ぐるみの付き合いをするのも、当然と言えるのではないでしょうか?」
私が押し切るようにそう言うと、上月くんは「確かに……」と黙ってしまった。
この反応はそれで良いということだろう。
「では、そういうことで! 当日、楽しみにしています」
私は母から了承のメッセージが届かぬ内からそう言い切り、予定を決めた。
母だって当日の料理を一人分余計に用意することくらい造作もないはずだ。
だからこれでいいのだ! 私は清々しい気分だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます