20 DNA検査の結果
3週間後。DNA教からのDNA検査結果が家に届いた。
ちなみに上月くんからはDNA検査をしたという話は聞いていない。
私は検査結果を開くと、スマホ用アプリをダウンロード。
そして書かれていたIDとパスワードを入力し、私の検査結果を開いた。
まず最初にミトコンドリアDNAはハプログループD系統に属しているとの結果だった。
中国中部を起源とするグループで日本人に多いグループらしい。
私は中国中部から渡来してきた人が祖先ということなのだろう。
そして肥満リスクや心臓病リスク、がんリスクなどが続いていくが、特別問題は無いように思えた。
私としては心臓病リスクが低いことが、上月くんとの相性が良いと言われている気がして嬉しかった。
「特別問題は無さそうで良かったです」
私は自分の検査結果に一通り目を通すと、心配な項目がないことに安堵した。
しかし、一番のお目当てだった上月くんとの相性データがない。
該当項目にはデータなしと表示されるばかりだった。
上月くんが検査を受けた時、あとで追加でされたりするのだろうか?
まぁあの様子だと上月くんはDNA検査を受けてはくれないだろう。
そう思い、DNA検査が無駄ではなかったと思うが、必要な情報が得られなかったことを残念に感じる私だった。
∬
次の日。文音と談笑をしていた時、スマホにメッセージアプリが受信を知らせる。
「誰でしょうか?」
普段主にメッセージアプリで話す文音は、目の前で私とクリスマスについて話していて、残るは操か上月くんかと思っていた……のだが。
私がメッセージを読んで暗い顔をしているのに気付いたのか、文音が問う。
「どしたの碧?」
「はい……まだ読んでいる途中なのですが、どうやらDNAマッチングのお話らしいです」
「あー……検査受けたって言ってたもんね。結果出たの?」
「はい。結果は出たのですが上月くんがDNA検査をやっていないようで、お目当ての上月くんとの相性データは得られないままだったのですが……」
私が気落ちした様子を見せると、文音が勘付いた。
「え? じゃあマッチングって上月くん以外の男の人とってこと?」
「はい。そのようです」
私は相変わらずの長文であるきらりさんからのメッセージを文音に見せる。
数分してその全てを読み終えた文音が、「なにこれ言い訳だらけじゃん」と不満そうに言った。
「HLA遺伝子マッチング率98%って言うけど、碧はDNAマッチングなんて頼んだの?」
「いえ、私は上月くんとのデータが欲しかっただけで……」
「じゃあなに、これは上月くんのお母さんが勝手にやってるってこと!?」
文音が怒っているのは明らかだった。
私の方はと言えば、怒るよりも呆れているというのに近い。
きらりさんはこのことを上月くんに伝えているのだろうか?
「断っちゃいなよ碧!」
文音は怒り顔でそう言い捨てる。
「ですが、会うだけでいいからと書いてありますし……」
それになにより上月くんのお母さんの私への心象を悪くするのは避けたかった。
「会うだけ会って見るだけでいいなんて、大人の汚い誤魔化しだよ。
この文面見る限りじゃ、碧とその男の人をマッチングさせる気まんまんだよ!?」
文音がそう言い切る。
そんなことは私だって分かっている。
分かってはいるのだ。
「ですが、ここで断ったら私は上月くんのお母さんに悪い印象を持たれてしまうかもしれません……それは避けたいんです、文音」
「そんなの気にしちゃ駄目だよ碧! って気楽に言えるのは私が碧の立場じゃないからだけどさ……でも本当にいいの?」
文音が私に寄り添うように言う。
「はい。会うだけ会ってそれ以上はなしです。
なにせ私は上月くんと交際しているのですから!」
そう強く言い放ち、私はきらりさんへ「本当に会うだけで良いのでしたらお受けします」とメッセージを送る。
「それじゃあ、日曜の14時に新宿センターでいいかしら?」
と返事が返ってきて、「了解しました」とだけ返した。
ついでに上月くんへもメッセージを送る。
「今週末の日曜14時、きらりさんの紹介である殿方と新宿でお会いすることになりました。けれど本当に会いに行くだけですので気にしないでください」
メッセージを送り終わり、文音に「私、頑張ります!」と気概を見せると、文音はあまり納得行かなさそうな表情だったけれど「頑張んな……!」と激励してくれた。
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