第4話 真夏の暖かさ
そういうことをするのだなという覚悟はあった。だが女同士何をどうするのか分からないうえに何処に向かってるのかもわからない。あれ?なんだろう心臓がうるさくてあれ?何するんだっけ?
「い…おーい」
「うわっ!!」
「着いたけど…眠かった?」
「い、いえあのぁ…」
「くすっ。ほらいくよ」
お姉さんに手を引っ張られて外にでた。周りに車が1,2台ほど止まっておりどれも高そうな…
「ほらはやく!」
痺れを切らしたお姉さんに手を引かれて建物の中に入っていく。薄暗い部屋の中には大きなパネルが怪しく光っていた。部屋の種類、コース、代金が表示されている。
「ねぇ、どの部屋がいい?」
「へ?あ、ど、どれでも…」
「じゃあこれで」
手慣れた手つきで操作して料金を払うお姉さん。…やっぱり昔のお偉いさんたちと来ていて慣れているのかなぁ…。
エレベーターに乗り、鍵を開けるとそこには白いベッドに黄金色に輝くシャンデリア、高級そうな装飾が施してあった。広ーいと荷物を椅子に投げ置き、ベッドにダイブするお姉さん。いや、確かにどれでもとは言ったけど…
時刻は18時を回ったばかり。ここにあと数時間いることを考えると頭痛がしてきた。
「じゃあさ、お風呂いこうか」
立ち尽していた私の目の前でお姉さんは服を躊躇いなく脱ぎ始めた。メリハリのとれた体に色の綺麗な秘部。見た物すべても魅了するような裸に目が離せない。
「ほら、あなた…おっと、そういえば名前を聞いてなかったわね。」
「ゆき…小川ゆきです」
「そっか、ゆきちゃんか、かわいいね」
かわいい…かわいい!?私が!?ないないない!だっていろいろちっちゃいし顔だってへちゃむくれて…
「はい脱げた」
「え?」
気づけば一糸まとわぬ姿。小さい胸にきめ細かいとはいえない肌。アンダーも綺麗に整えていない。他人に見られるのが恥ずかしい体だ。
下を向いた私をつれてお姉さんは風呂場へ向かった。ジャグジーもあり、想像以上に広い浴室に少しだけ興味がわいた。
「お風呂…大きいんですね」
「そだよー。ここ、それなりのお値段するし」
「そういえば操作慣れてましたけど…」
「まあそりゃ私風俗で働いてるしね」
「え?その、あ、あれをしたのは銀行に勤めてた時じゃ」
「いやいや、私首になった後行く当てなくて特技になったテクで風俗いったんだよ。あれ?話してなかったっけ?」
「は、はい…」
「そかそか。じゃあ、続きはこっちで話そうか」
ジャグジーの音が響きわたる浴場で向かいあって座る2人。丁度良い温度はさっきまで緊張していたからだを優しく溶かしていった。体に溜まっていた息が抜けだし、ようやく二人の目が合った。
「どう?ラブホのジャグジー気持ちいいっしょ?」
「はい…」
背中に当たる泡が心地よく背中を叩いて、痛痒い刺激が脳でリラックスする何かに変わってゆく。
「…。」
「ん?おーい?大丈夫?」
まぶしく感じていた光も感じなくなる。自然と体から力が抜けていって…
さっきまでとは違う暖かいものに包まれていた。
目の前にいたはずのお姉さんが居ない。でもなんか右側に耳がある。そして私の胸の下には大きくて柔らかく突起したものがある。…これってまさか
「いや~ん、えっちぃ~」
「わ、わ、わ!」
「わざとじゃないんですって?」
「き、き、きゅう!」
「急に眠気がきてしまったから?」
「め、めの、めのまえ!」
「気づいたらこうなっていたと」
「何でこんなので分かるんですか!最後のなんて要約までしてくれているじゃないですか!」
「こちとらプロだからね♪」
すぐ隣から聞こえる声が自慢げに聞こえる。プロ…
「あの、さっき言っていたことって…」
「ああ、追い出されてから風俗やってるってことね」
「そうねぇ、まあ、働かないと生きていけないし、なんかスカウトされたし、そしてすごい儲かったし、喜んでくれるの嬉しかったし」
「こんな可愛いこにも合えるなんてやっぱ天職だったんだなって。ははは」
笑ってる。笑っているけどどこか寂しげで、どこか冷たかった。
人間関係の境界線。今私はそこに立っている。名前も年も好きな食べ物も何も、何も知らないこのお姉さんの。ここを超えれば取返しのつかないことになる。そのままでもお姉さんはどこかへ行ってしまうだろう。この体温をくれた彼女は誰から暖かさを貰うのだろう。客なのかこれから現れるであろう旦那様なのか。
「どうしたの?もう大丈夫?」
笑顔の彼女、どこかに行きそうな彼女を私は…
唇で繋ぎとめた
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