第2話 ダメな子
…波の音が聞こえる。近くのテトラポットに当たった時の音は私の今の聞き間違いの原因かもしれない。そう判断し、もう一度訪ねてみた。
「あの…!」
「ん?どしたん?」
座っている私に彼女がのぞき込んて来た。でかい…。そしてよく見たらお姉さんの服露出が多い!夏だから袖はないのは分かるけどえ?何でおへそ出てるの!?あわわ…
どこを見ていいかわからずそっぽ向いてしまった。でも当たり前だよね。だって目の前には…
「ははぁ~ん。君もエッチだねぇ。」
同性でも目が離せないほどの大きさを持つ彼女の谷間を前にして、視線をそらさないと話すことなんてできなかった。なんて魅力的な人だろう。私なんて、頭もよくないし顔も地味で努力家でも目標があるわけでもないのに嘘までついてサボってやっていることがただ海をみているだけで…
「…ねえってば」
「うわっ!な、なんですか…」
「うわって、さっきからさ、私の胸みては思いつめた顔して沈んでの繰り返しでそっちこそなんなの?」
「あ…ご、ごめんなさい」
「別にさ、謝って欲しいわけじゃなくてさ、どしたんってわけよ」
「え、あ、その…」
「なに?話したくない系のやつ?」
「いや…その…」
話せないわけではない。でも話したところで解決するわけでもないし。ましてやこのお姉さんを不快にさせてしまったら…
「あ?なに?自分が何もできない人間だから、不幸少女だから同情してくださいって?人生なめてんのか!てめえ〇すぞごらぁ!!」
なんて言われて私海から突き落とされるかもしれない!?どどどどうしよう!?
「あっ、あのですねじつはいきわかれたいもうとにこれからあうのでどんなことばかけようかまよってたわけでい、いまおもいついたのでかえりますそれでは!」
荷物をまとめてサイダーの蓋を持って立ち去る。完璧だ…ゴミを残さずこの場を去ることによって余裕感を出しつつ嘘をついていると思えないほど落ち着いている人だと思われた。これがボッチ歴約10年の演技りょ…
「まって」
「ひゃい!!」
まずい、お姉さんが私の前にもう来てた!出入口は1箇所しかないからこれはもう…
「これで勘弁してもらえませんか…」
手持ちの財布をお姉さんに渡す。小銭だらけの財布は今の荷物の重さのほとんどをしめており一気に荷物が軽くなった。緊張感は重くなったが。
「あのさぁ…」
「はい…」
「私はさ、あなたの悩みを聞きたいの」
「はい…」
「なのにさ、どうしてお財布を渡して逃げようとするわけ?」
「そ、それは…」
まずい…まずいまずいまずい!お姉さんなんか肩震えてるしこれってもう…
「う…ひっぐ…うぅ…売り飛ばさないでくださいぃぃxうわぁぁぁぁぁん」
「う、売り飛ばし!?ぷっ…はっはははははは!なに?なんでそうなるん?ぶっははははははは」
「と、とりあえず私の車来なよ。ここ人少ないけどこんだけ大声だしてたら迷惑かもだし」
「ひゃい…」
腰が抜けて歩けなかったがお姉さんが肩を貸してくれたおかげでなんとか移動することが出来た。あれ?もしかしてこの人売り飛ばしたりしないいい人なのでは?
お姉さんの車はピンクでかわいい車だった。一回泣いた挙句腰を抜かしたからかお姉さんは優しく介護してくれてシートベルトまでしてくれた。発進すると同時に海風とは違う涼しく心地よい風が私の顔を襲った。海岸沿いを走ること数分、お姉さんから口を開いた。
「私さ、実は今、夜の仕事してるんだよね」
「よ、夜?」
「そ」
「夜勤とか」
「ぶっ…あなたほんとに…ククク…」
「夜の仕事ってのは男性のあれを気持ちよくするお仕事でさ」
「なっ///」
まさか本当にエッチなお姉さんだとは思わなかった…で、でも
「その、え、エッチなお姉さんはどうして私に声、かけたんですか?」
「いやだってさ、今にも身投げしそうな顔をした女の子がカレーパンとサイダー片手にフェリー置き場に歩いていくのを見たら誰だって気になるじゃん?」
「えっ?私そんな顔…」
「してたしてた。いやあ、まさかこんなに面白い子だとは思わなかったよ」
「でさ、なんかあったの?私、結構話づらいことしゃべったんだしさぁ」
は、嵌められた…でも、このお姉さん悪そうな人じゃないし…
「あ、あの…私実は浪人生で…」
私は今日までの出来事を話した。人とこんなに長く話すのは久しぶりだったから説明が下手だったと思う。でも聞いてくれた。優しく笑ってくれた。ちょっとうれしかった。
「…だから私はサボってしまって。頑張ることもできない駄目な子なんです。あ、もう、子供でもないんですよね…19歳ですし。」
「どうも、聞いてくれてありがとうございます。あの、聞いてくれてありが…」
「ねえ」
「本当にダメな子ってさ、周囲は関わろうとしてくれないんだよ?」
「えっ?」
「あのね、これから話すことはお姉さんのことでさ」
「本当にダメな子のお話」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます