第3話

 ホッコリ和む私の耳に届く、図書室の戸を開けるカラカラ音。

「お待たせ。ん? 吉岡じゃん」

 ユウキが駆け寄りながらヨシオカを見てる。て言うか……

「えぇっ? お知り合い?」

「うん。一年の時にさ、同じ体育委員だったから結構仲良くなったんだよ。一緒に体育祭のテント建てたりしたよな?」

 頷くヨシオカ。なんだそれ、羨ましいな。

「で、なんで二人が一緒に居るんだ?」

「それよそれ! ちょいと聞いてよお客さん! このヨシオカったらアタイを……」

「わー! それは言うなよ!」

 慌てるヨシオカ。

「はいはい、分かってますよーだ」

 何度でも言おう、私だって空気と言うものは読めるのだ。

「このヨシオカがさ、えーと……そうそう! 宇宙警備隊員になりたいからM七十八星雲まで連れてって欲しいって言われたんだー。実はヨシオカ、三分間だけ身長が四十メートルになって……でいい?」

「良くは無いけど、もうそれでいいよ」

 ヨシオカが項垂れて言った。それを見てユウキが眉毛をギュッと寄せて笑った。これはちょっと困った時の笑い、つまり苦笑。でもそんな顔もカッコいんだからやんなっちゃう。

「兎にも角にもこのヨシオカと友達になったんだよ、今」

 ヨシオカの背中を思いっきり叩く。グフッて声がヨシオカから聞こえたけど無視無視。

「そっか、良かったなアイラ。吉岡もアイラと友達になったからには仲良くしなよ?」

 ユウキがヨシオカを見据える。それにヨシオカは弾かれたみたいに頷いた。ユウキの鋭い視線にヨシオカは緊張してるみたい。

「……よし、約束だかんな?」

 そう言って笑う顔が最高にカッコいいから、

「ユウキ……って言うか、パパー!」

 ユウキの腕に思いっきり抱き着いた。

「ハイハイ、ヨシヨシ」

 ぐりぐりーって頭を撫でる手が暖かい。くすぐったくて気持ち良くて眠くなっちゃうような感じ。重たい瞼を必死で上げてユウキを見ると、なんだか忙しなく目がキョロキョロしてる。これはユウキ七不思議の一つ。突然落ち着きが無くなる。残り六不思議は現在保留中。

 そんなユウキを見てたらパッと目が合った。その瞬間に優姫はいつもの表情に戻った。

「ほら、そろそろ帰るぞ。吉岡この後は?」

「え? ……特に何も無いけど」

「あっそ。んじゃ、一緒に帰るか? アイラも良いよな?」

「良き良きー」

「じゃ、決まり。行こっか」

 ユウキがクルって踵を返す。私はその腕に掴まって一緒に歩き出した。後ろをちょっと見ると、ヨシオカはちゃんと付いてきてた。エライエライ。

「あ、自販機寄るけどいいよな?」

 振り返ってユウキが言う。ヨシオカが小さく頷いた。それにしても図体はデカいのに、反応は一々小さいんだよなヨシオカ。

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