バレンタイン・ソクラテス

ぷろぴれん

バレンタイン・ソクラテス


 二月七日、中川隆雄はあと一週間後にまで迫っているバレンタインデーにむけて気合を入れていた。

 バレンタインデーとは世の男子高校生にとって、若き青春の日々を彩る一大イベントである。女子は恋心を抱いている男子のためにチョコレート計画を練り上げていると同時に、男子たちはこの聖なる日を一週間も前からカウントダウンしているものなのである。自分はいくつチョコをもらえるかや、家で自分のことを好きそうな子を数えたり(たいていの場合それらの予想は見事なほど外れている)、時にそわそわして落ち着かなくなったり、授業中にふとチョコをもらった時のことを考えてニヤリと笑う、またもらった時に脈ありへとつながるような行うべきイケメンな反応を模索したりするものなのである。

 バレンタインの朝、全ての男子は緊張しながら教室に入る。朝一で渡してくる子もいるかもしれない。席に着く。机に教科書を入れる時にさりげなく机の中をチェックする。休み時間中は友達と話して普段通りの自分を装っているが、内心気が気ではない。授業など脳に届くはずもない。ただもらったチョコか未来にもらうべきチョコのことを考えるのみだ。帰り道は自分のことを待っているかもしれない女子を探しながら帰る。

 数多くの恋がこの日に成就されうるのだ。「これうけとって」と頬を赤らめながらチョコをさし出してくるうら若き乙女。それを「ありがとう」と照れながら受け取るさわやか青年。なんと甘酸っぱいではないか。めでたく結ばれた二人は手をつないで帰る。俗に言う「バレンタイン・マジック」という現象である。

 そして男子にとって、もらったチョコの数は一種のステータスとなりえるのである。何個ももらった男子は嬉し気に友人にその数を自慢する。俺のモテ度はこのくらいだぞ。それは色恋沙汰にとらわれている若者たちにとって重要なことなのである。

 逆に一つももらえなかった哀れな非モテ男達は羊の群れのようにひっそりとしている。彼らはチョコ数を聞かれることを恐れ、聞かれれば嘘をついてごまかすか、お母さんからのをカウントしたりするのである。あるいは同類たちと傷をなめあう。これらは地味系男子の傾向として多い。筆者もこちら側の人間であった。彼らは絶望にくれる。

 このようにバレンタインとは、ただ単にチョコの流通が起こるわけではない。派生する深い連鎖反応または二次災害があるのだ。だから隆雄が一週間も後のバレンタインデーのことを考え始めるのは全く不思議ではないのである。

 隆雄はバレンタインで失敗しないためには、一週間前からの準備が必要であるとこれまでの経験から知っていた。

 二月八日、隆雄は学校から帰ると瞑想を始めた。カバンをおいて、部屋の中央にあぐらをかいて座り、目をつむった。心を無にしなければならない。煩悩を捨てよ。三時間もの間、そうしていた。最初の方は頭に漂っていた邪念が隆雄の心を清める邪魔をしたが、途中からは完全に無我の境地であった。目を開いた時、世界が何やら調和に満ちたもののように思えた。この世の全てが何一つ不要でなく整っているというような感じが何か漠然と多分あるような気がした。とにかく第一段階はクリアした。これから一週間、この瞑想は続くことになる。

 二月九日、英語の授業中、隆雄の頭の中に突然「人はどこからやって来てどこへむかっているのか」という問いが浮かんできた。その日の朝も四時起きで瞑想してきたからかもしれなかった。心の波は無風時の湖のように穏やかだった。

「人がサルから進化してここまで繁栄してきたのはわかりきっている。しかしだからと言って、人はサルからやってきたとは言えないと思う。人間が生み出してきた物や精神作用を、全て祖先がサルだからという理由で片付けるのはあまりに陳腐で本質的でない。僕が知りたいのは人の存在がどのような意味を持ち、それがどこから始まっているかということなんだ。これが分かるようになるためにはもっと人を知らなければならない。でも、人を知るということは言葉ほど簡単じゃないぞ。ましてや僕の求めているものは人の存在の根源という最も深くに眠っているものなのだから……」

 二月十日、だんだんと自ら意識せずに悟りの境地に入ったり、何か深い意味を持つっぽいことを考えているようになった。これまでは自分で考えようとしなければ頭をよぎりもしなかったことが、気が付けば頭の中で渦巻いていた。彼はさながら若き芸術家か哲学者のようであった。

 二月十一日、この日は土曜で学校は休みだった。隆雄はこの日、いつも通り瞑想した後、「人間失格」を読み始めた。無論、朝から読みだすような気持ちのいい代物ではない。夕方くらいに読み終わり予想通り気分が落ち込んだ。これはいわゆる「太宰効果」と呼ばれ、三~四日程度継続し、世の中の全てが嫌になりナーバスになる症状が出る。ずっと絶望感が続くようになり日常生活に支障をきたし、生まれてごめんなさいとつぶやくようになると「太宰病」にランクアップする。隆雄は病気に罹患した。

 二月十二日、病気になった彼は前日に引き続いて「カラマーゾフの兄弟」を読んだ。イワンの無神論とアリョーシャの純粋な信心とを自らに取り込み、神と人間、その関係性に真剣に悩んだ。「太宰と同様、人間は苦悩を共にして生きているのだ。そこから自らを救い出すためにひたすら信じるか、それでも真実を追い求めて救いなどないと結論づけるかは人によるだろう。自分はどちらだろうか。いや、そもそも現代にそこまでの大きな苦悩を持っている人がどれだけいるのだろうか。いるとすればどんな、どの程度の、いやしかし………」

 二月十三日、バレンタインは早くも明日であった。だからか、隆雄が朝、教室に入るとどこか浮ついた雰囲気が漂っていた。女子たちはチョコレートの準備の話とか、同じ部活の人のための友チョコが大変だの言っていた。男子たちはそんな女子たちをチラチラ見ていた。隆雄は自分の席に向かいながら彼ら彼女らを一瞥して、フッと鼻で笑った。「バレンタインか……もうそんな俗物に興味などない。そんな行事、サンタクロースと同様、既に卒業した……」隆雄にはもはや、同胞であるべき男子のソワソワも、女子たちのキャッキャウフフも眼中にはなかった。

 これが隆雄の目的である。気合を入れたのはこのためだったのだ。彼によればバレンタインとは軽い男女がチョコを、またはたいして仲良くない友達と呼び合うだけの間柄で友チョコと言って、お菓子を交換し合うだけの低俗な行事らしかった。なので真に高尚な人間はそんなもの目もくれないはずであり、そんなくだらないことに時間を割くくらいならもっと意義のあることに時間を費やすはずだ。

 そして自分自身が人や自然などといった深みのあるものに目を向けて内面的な洞察を行おうとしているならば、その自らの悩みと比べて相対的にバレンタインのチョコ数などはくだらないものに感じるはずである。つまりバレンタインチョコをもらえないという絶望を背負わなくて済む。全てはバレンタインデーにチョコをもらえない哀れな男が悲しみを紛らわすために編み出した、精神的健康を保つための対策であった。

 既に隆雄はこの境地に達しており、友人からバレンタインデーの話題を振られてもほとんど興味を示さなかった。どうでもよく感じた。友人たちは彼のこの世の欲を捨てきったような表情を見て、僧侶みたいだと思った。

 ついに二月十四日になった。朝、隆雄は眠りから覚めるとすぐに目を開かずに閉じたままにしておいた。頭は起きている。しかし視界は眠っている時と同じ真っ暗で、まだ眠りの世界にいる感じがする。意識はあるが頭はぼんやりとして、なんだか体が浮かんでいるようだった。しかし決して不快ではなくこの全身を包んでいる感覚は新鮮だった。

 真っ暗な宇宙の中で一人浮いている。そもそも人は宇宙の中に住んでおり、皆、宇宙に浮かんで生きているのだ。地球の外に宇宙があるわけではなく、宇宙の中に地球があり、そこに人間が住んでいるのだ。そうだ、僕たちは普段意識していないが、宇宙の住人であるのだ。隆雄はこの考えと今全身に感じている無重力状態を結び付けた。

 朝からこんなことを考えたのは昨日の夜、寝る前に「明日はバレンタインデーだドキドキ」とではなく「宇宙とはいったい何でできているのだろうか」と思い始めたからであろう。だから昨日寝る前に健全に前者の文句を唱えていれば、起きた時には「今日はバレンタインデーだ。いくつもらえるかなドキドキ」と思うのみである。宇宙の構造なんて頭をよぎりもしない。

 ああ、真っ暗闇の宇宙の中で、灯台のようにポツポツと小さく輝いている星が浮かんでいるのは特別な意味があるのだろうか、と考えながらトーストを食べて、自転車をこいで、学校に着いて、いつもとにぎわい方の違う教室に入った。

 女子はキャピキャピとはしゃいで今日は特に乙女なにおいを醸し出している。隆雄は彼女らをちらりと一瞥したのみで自分の席に直行した。途中でチョコを渡しにくる女子はいない。別に鼻から期待などしていなかったし、どうでもよかった。逆に「これで宇宙の神秘にまた一歩近づくために一人の世界の中で集中できる。一人孤独に宇宙の創生について考えるなんて、まるで世界を創造する前の神と同じではないか」とさえ思った。

 そもそも、この広大過ぎる宇宙の中では人間など大海を漂うプランクトンのような物だ。ミジンコたちの餌の交換に興味など湧くはずがない。

 席に着くとカバンから教科書とノートを出して確認しながら机の中に入れるという作業を黙々と行った。入れながら机の中にチョコはないということを知った。予想通り、全てわかっていた。すぐに宇宙の星々のことを頭によぎらせると、とるにたらないことだと気が付いた。もし受け取ったら返品してもいいかもしれない。

 一昔前の隆雄であれば内心穏やかではないのに、何もないような表情で一時間目の予習をするふりをしていただろう。しかし今の彼は違う。まっすぐ前を見て、余裕の表情でたたずんでいた。

 二つ前の席の奴が教室に入って来て、自分の席に着いた。いつもは遅刻ギリギリなのに今日は八分前だ。恐らくチョコをもらうタイミングとしては結構良い朝の時間を逃したくはなかったのだろう。かといって十五分も二十分も前に来ると「あいついつもギリギリなのに今日はバレンタインだから張り切ってやがるwww」と言われるから、彼的にはこのくらいの時間がベストだと判断したのだろう。

 彼は教科書を机に入れる時にさりげなく手をサッと中で滑らせてチョコの有無を確認した。覗き込んでの目視だと期待している感が出て、誰かに見られていると恥ずかしいし誰かに見られると馬鹿にされる。正しい判断だが、隆雄からは丸見えだった。

 彼は機械的に教科書を入れ終わると時計をチラリと見て「まだ時間あるな」と余裕ぶって一人呟き、教室から出て行った。背中には哀愁が漂っていた。これから彼は朝という一つ目のチャンスが駄目だったことを悲しみながら用を足すのだろうと思うと、隆雄は同情せざるをえなかった。去年までの俺もあんな風だったのかと、今は亡き過去の自分の冥福を祈った。どれだけ世の男子がこの悪魔的な行事に翻弄されて、痛めつけられるのだろうか。バレンタインデーはカカオ虐殺日であり、非モテ男子のメンタル虐殺日でもある。

 一時間目の世界史の授業では一八○○年代の話を聞きながら、物思いにふけった。

「これは俺が生まれるよりも、精子になるよりもはるか昔の話だ。俺がこの世に存在していなかった時でも、世界は俺と同じように生まれた人たちによって回されていたんだ。そしてその人たちはもういない。今は俺たちの時代であり、また時が百年二百年とたつとその時代の人たちが世界を創っていくんだ。そこで俺たちは今俺がしているように思いをはせられるだろう。その時俺はもう生きていない。そしてその人たちは今はまだ精子にすらなっていない。なんと不思議なことだろう。俺たちは断片的な時間をそれぞれ生きているのに、思いの上ではつながっているのだ。これまでの人類もこれからの人類も、一つのひもでこの瞬間を結び目として、つながっているのだ」

 隆雄は内心の感動を抑えることができなかった。この教室には今、産業革命とバレンタインと精子とが混在していた。隆雄の後ろの席の女子は、隆雄が小刻みに肩を震わせているのを見てひどく気持ち悪く思った。世界史が終わるとその奇行は女子の光ファイバーほどの速度を持つ情報伝達網で広まった。

 数学の時間では絶対に変わることのない真実として公式の美しさをあがめ、英語の時間には言葉の認識について模索し、体育では自由に全身を動かして走り回れる喜びを噛みしめ、休み時間トイレで放尿する時には自分の体の中で起こっている生命の神秘に神を認めた。

 隆雄の二月十四日はかくして過ぎていった。教室では休み時間になるたびに女子がチョコを配り歩いたり、二人で出ていった男女の噂話が飛び交っていた。隆雄は彼らを全員見下した。こいつら全員にこんなバカげたことをやめて、宇宙と人類の関係について演説してやろうかと思った。

 昼休み、友人が「チョコいくつもらった?」と聞いてきた。その時隆雄はまた一つ宇宙の神秘に近づきつつあったので気持ちが穏やかだった。

「ゼロだ」隆雄はすみきった顔ではっきりとこう答えた。

 友人は聞いてはならぬことを聞いたと戸惑い「ああ……すまん」と謝った。そして「でもまだ午後があるさ」と気休めを言ってそそくさと立ち去った。隆雄は安らかな表情で頷いた。目はどこか遠くの明日を見つめていた。

 友人の予言は外れ、午後にも何もなかった。授業は滞りなく過ぎ、休み時間は何事もなくもっとスムーズに過ぎた。そして帰りのホームルームが終わった。

 隆雄はカバンに教科書とノートを入れるとスッと立ち上がった。そして未練なく一番に教室を出た。教室では男子たちが話すこともないのに机を並べて無駄にダベっていた。これは哀れな彼らのもしかしたら最後にワンチャンあるかもしれないという祈りを込めた悪あがきなのである。

 昇降口を下りていくと、今日一日勇気が出ずに渡せなかった乙女が、最後に自分を奮い立たせてお手製のチョコを渡している場面が二回ほど見られた。「なるほど、放課後は案外チョコの流通が多いのかもしれないな」と隆雄は経済学者のように冷静な分析をした。しかし全くどうでもいいことなのに気づき、すぐに頭の中の問題を別のものに切り替えた。

「生きる意味とは何なのだろうか。金だとか長生きだとは到底思えない。所詮人間なんて、死んだら全部消えてしまって終わりなんだ。目的とは最終的に何かを達成した時の成果が対象となるのだ。そうなると生きる意味とは死んだ時に何かが生じないといけないことになる。分からない。分からないぞ」

 隆雄の横を男女がいちゃつきながら通り過ぎた。

「考え続けてもこの問題の答えにはたどり着けないのではないか。しかし……いやでも……」

 彼は思考の迷宮に迷い込んでしまった。絶望的な気持ちになり、頭を抱えてしゃがみこんだ。

 しかしである。一瞬、脳内で閃光がさしたように何かが光った。「そうだ、そうだったのか」

 隆雄は目をいっぱいに見開いて両手で天を仰いだ。廊下の窓からはオレンジ色の夕陽が温かく差し込み、彼に祝福を与えているかのように見えた。

「俺は今日一日考えに考え抜いた。そしてその時は自分自身が確かに生きている、存在していると実感することができた。我思う、ゆえに我ありとはこのことだったんだな。生きるということは周りを見渡して見つけるものではなく、自分の中で見つけ、つくり出すものだったんだ。ついにたどり着いた!究極の真理!あぁ、こんなに胸が震えることがあろうか!普通に浮かれてなんとなく日々を過ごしていたら、絶対に触れることもなかったものだ。これからもこの真実を抱きしめて生きていたい、これからもずっと考え続けなければならない。それが、それこそが生きるということなのだから……」

 隆雄が下駄箱の前で震えていると、後ろから自分の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。隆雄が上の空で振り返ると、一人の女子が立っていた。

「中川君……ちょっといいかな?……」女子は体をもじもじさせながら言った。

 隆雄は、何だこの女と思った。軽くあしらって帰ろうとも思ったが、それは自分の紳士道に反する。「何?」とそっけなく聞いた。

 女子はまだもじもじしていたが、少し経つとやがて決心をつけたように手を隆雄の前に差し出してきた。「これ、受け取ってくれる?」手には可愛いピンクの紙袋がのせられていた。

 隆雄には一瞬、これが何なのか分からなかった。しかしそれを左手で掴んだ時、自分が今かなり重要な局面にいることに気が付いた。自分で無理だと決めてかかっていたことが、完全に油断していた時に叶ったのだ。隆雄の心臓は高鳴り始めた。

 女子は顔を赤く染め、明るく笑って「ありがとう、じゃあね」と言って走って行った。

 隆雄は何も言ってあげられないまま呆然と立ち尽くしていた。足はガクガクしていた。やがてカバンに紙袋を入れてゆっくりと歩き出した。カバンを宝物でも入っているかのように、しっかりと腕で抱えていた。

 次第に、今日一日聡明さをたたえていた隆雄の顔はみるみるニヤケ面に変わった。「……やった……やったぞ!」彼は勝利の叫びを上げた。いきなりのことに通りすがった老人が驚いた。

「ついに念願のバレンタインチョコをゲットした!生まれて初めてだ。俺はチョコをもらったんだ。バレンタインに。もらったんだ、チョコを!あぁ、こんなにうれしいことがあろうか!あの女子は俺のことが好きなんだろうか。結構可愛かった気がする。もしうまくいけば付き合えたりするんじゃないか。

 今度廊下で会ったら話しかけてみよう。いきなり話しかけたら気持ち悪がられやしないか?いや、大丈夫だろう。向こうから告白してきたんだから。話しかけてほしいに決まっている。それよりこのチョコは手作りだろうか。ブラックだろうかホワイトだろうか。帰ったら一番にむしゃぶりつこう。いや、一晩神棚に飾っておいた方がいいかもしれない。そうする価値がある代物だ。あぁ、この世に生をうけて十七年、ついに初のバレンタインチョコ!!!」

 隆雄は全身で今日一番のエクスタシーを感じていた。宇宙の神秘なんてわけの分からないものなど、もはやどうでもよかった。


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