美味なる記憶

ふなぶし あやめ

伝承

 むかしむかし、大陸にはたくさんの種類の妖精たちが暮らしていました。

 妖精たちは違う種族に分かれていましたが、それぞれの能力をいかして、お互いに協力することでささやかながら幸せな日々をおくっていました。


 しかしあるとき、ニンゲンが他の大陸から移り住んでくると、ニンゲンは妖精たちを蔑むようになりました。

 妖精たちを蔑み始めたニンゲンは、次第に土地を手に入れるために、妖精たちを殺すことを躊躇わなくなってしまいました。


 妖精たちは、ニンゲンと仲良く暮らすことはできないと感じ、森の奥深くに隠れることにしました。

 表立って生活できなくなった妖精たちは、やがて種族同士の協力ができなくなりました。そしてとうとう、同族だけで集まって、ひっそりと暮らすようになりました。

 しかし、他の種族と協力できなくなってしまっては、妖精たちは上手に生きていくことができません。そのうちに、妖精たちの数はどんどん少なくなっていきました。


 妖精たちを追いやったニンゲンは、土地を耕し、牛や豚や馬を飼い、商売を行うことで豊かになっていきました。

 そして、「妖精」はニンゲンが大陸にやって来る前に住んでいた種族ではなく、伝承へ、迷信へと変化していくのでした――。

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