第2話 猫の引っ掻き痕
最初の一学期は誰しも緊張して話さないものだ。そのため教室はまるで誰もいないかのような静けさに満ちる。だが、今日は皆一つの事を話題としてざわざわとしている。面識のない男女までも壁なく話している。それもそのはずだろう、前から二列目に座る男、入学式にも出ず担任の先生がこれからよろしくと挨拶をしているなかやってきた、先生も最初の遅刻なので柔らかい表情をしながら遅れてきた彼を見た。皆言葉を出すことができなかった。右腕は赤く染まり、足を引きずっている真新しい制服のはずだった服は大きな猫に引っ掻けられたような痕が制服の背中にあった。
彼はなにもしゃべることのなく俺の前に座った。
傷痕は見れば見るほどそれは現実的なものだった、分厚い制服をこんな痕になるほどの出来事、いったいなにがあったのだろうか。彼以外のクラスメートは彼の話を中心に盛り上がっていき、いつの間にか皆仲良くなっていた。その中で優しそうな顔をした男女数人が彼に話しかけた、彼の声はこちらには聞こえないなにを言ってるか想像していると、男女は帰ってきた。聞くと彼は初日早々に事故にあったらしい自転車はぐちゃぐちゃになり、彼を跳ねた軽自動車は煙を出しながら走っていってしまい幸い高校までもう少しだったため歩いてやってきたのだと言う。一言も話さないのは酷い頭痛や、喉が痛いため出せなかったらしい。なんで病院に行かないのかと思うが、これは後で本人に聞こうかな。彼の名前はなんだっけ確か「葵陽」彼の名前を確認しながら肩に手を当てた。
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