-第4節-
さて、魔法少女の存在理由とは。正直に明かしてしまうと、"今はもうない"。平和への抑止力、というものが主な役割となるが、他の仕事は実際の所汚れ仕事である。だから表に立つメルカトールと、裏で汚れ仕事を請け負うフランチェスカやメイザースが居るのだ。
ハイネマンやブランショはその汚れ仕事から若干ながら逃げた。2人共、今の時代に魔法少女は必要ないと考えている。だから、ハイネマンは魔法少女ということを隠してジャーナリストをやっているし、ブランショはダークウェブでの管理人をやっている。
メイザースは集合場所の喫茶店でたっぷりと砂糖を入れた紅茶を啜っていた。30分前に行動するのが彼女の主義で、人を待たせるのが苦手なのだ。それに、その30分間を思考に回すことができる。
世界を救う方法。メイザースは1つ思いついていた。更に熟考すれば他の方法もあるかもしれないが、フランチェスカはすぐさま世界を救わなければならない理由があるのだと、メイザースは確信していた。フランチェスカが"世界を救う"なんて言い出したのは初めてだし、長い付き合いの中から喜怒哀楽が激しいフランチェスカの、その中の本心すら、メイザースには見抜けるようになっていた。
しかし、この方法は少し遠回りをしなければならない。もう少しシンプルに行えないものか、とメイザースは考えていた。
次に集合場所に来たのはハイネマンであった。ハイネマンはメイザースのことを一方的に知っていたが、世間話をする仲でも無いと思い、軽く挨拶をして向かいの席に座りヘミングウェイの『武器よさらば』の続きを読み始めた。
そしてその次に、フランチェスカがレヴィナスを連れてきた。メイザースの眉間がピクリと動き、フランチェスカに顔を向ける。「その子は君の差し金かね」
「いいえ、メイザース。この子、レヴィナスを世界を救うチームに加えてほしいの。どうかしら? 策に支障はない?」
「ん」メイザースは紅茶を飲み干して「いや、特に無い。むしろ猫の手も借りたい所だ。レヴィナスと言ったな。よろしく頼む。漠然とした作戦、いや策戦だな。それは聞いているか?」
レヴィナスは目を泳がせながら「は、はい。世界を、救うんですよね?」
「ああ。きっかりと世界を救う。メルカトールがついたら、策戦の内容を話そう」
レヴィナスが呟くように聞いてくる。「……誰かに聞かれないのですか?」
メイザースは首を横にふる。「問題ない。ここの店主は私の取引相手で、故に信頼できる。更に一番音が聞こえづらく、ひと目につかず、そして貸し切りにまでしてもらった。だから大丈夫さ」
そして時間ぴったりにメルカトールが喫茶店の扉を開けた。フランチェスカとメイザースに笑顔を向けると、一番手前の席に座った。
「ねえハイネマン、ブランショは?」フランチェスカが問いかける。
読んでいた本を閉じたハイネマンは、「あいつはもう来ないよ。そもそもとして、ブランショは仕事が積もりに積もっている。来ようにも来れないのさ。だから私がリアルタイムで連絡を取る」ハイネマンはスマートフォンを懐から出して見せてみせた。
「……メイザース。大丈夫かしら」
「ああ、問題ないよフランチェスカ。それどころかそちらのほうがいい。むしろこうやって集合するのは時代遅れだ。1人でも、すぐさまネットに繋がれる人が欲しかったからそういう条件を出したし、仕事をしている、ということはパソコンの前にいるんだろう。なら好都合だ。ハイネマンと言ったね。調べてほしいことはすぐ連絡して、結果を迅速に伝えて欲しい」
ハイネマンは首を縦にふる。
「では策戦会議を始めよう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます