-第3節-
魔法少女の戦い方について説明しておこう。魔法少女は大気中にある元素を使い、それを行使することによって莫大なエネルギーを等価交換として得ている。詰まる所、元素が無いところでは魔法少女はただのやくたたずになる。しかし、元素が集まっている所では魔法少女は無類の力を揮うことができ、それを使役できる。
古くは魔法少女が沢山居たという。しかし現代に置いては神秘は薄れ、魔法少女というものが極端に少なくなり、大気中にある元素が有り余っている。よって、魔法少女――特にフランチェスカ――は、比類のない超常現象を攻撃に転じることができるようになった。
そして魔法少女が平和を維持している理由、それは抑止力である。元素を扱い無敵のように振る舞う魔法少女に通常の人間は太刀打ちができず、魔法少女によって魔法少女は殺せない。後者は大原則として古くから語られ、フランチェスカはメイザースに自分を殺すよう頼み込み、失敗している。
数少ない魔法少女を殺す手段、それは元素のない所、もしくは元素を扱う前に素早く殺す。それしかないのだが、この元素というものが厄介であり、魔法少女は危機感を元素の乱れから感じ取る。これはメイザースの研究結果から、敵意や殺意を元素が感じ取っているのだろう、と推測されている。よって事実上、魔法少女は不死である。老衰はするものの、戦闘などで死ぬことはまずない。
フランチェスカはハイネマンという魔法少女に会っていた。彼女は魔法少女きっての情報通と知られ、ハイネマンから通じてブランショという、インターネットに引きこもる、いかにも現代風の魔法少女を紹介してもらうつもりだった。
「それで、そのブランショとは連絡はとれるのかしら?」フランチェスカが目をきらきらさせながら問いかける。
ハイネマンは少し考えた後、「あいつには借りを一個だけ作った。そのカードを切ってもいいが、私は合理主義でね。対価を払って欲しい」
「対価っていっても…」フランチェスカはまた俯く。フランチェスカは喜怒哀楽が激しく、それを隠さずに天真爛漫に振る舞う。
「1人、私の知り合いをそのチームに入れてくれ。名をレヴィナス。悲しい子なんだ。私が同情するぐらいだ。察してくれ」
「どんな子なの? なにか言ってはいけないことがあるなら知っておきたいわ。私、そういうのすぐ言っちゃうから」
「ああ、そうだな。まずレヴィナスは死を恐れている。幼い頃のレヴィナスはそれはもう明るい子だったらしい。魔法少女の仲間に恵まれ、すくすくと育ったそうだ。しかし、それを危惧したとある国の秘密組織が、罠に嵌めた。祝賀パーティに招待すると言って誘い出し、予め会場内を秘密組織に加担していた魔法少女が大気中の元素を使い尽くしておいた。すると、人間が魔法少女を殺せる。その組織がなぜ殺しに至ったかはわからず、レヴィナスを逃した理由だけが判っている。見せしめだよ。レヴィナスはその事からいつ誰かに殺されるかが心配で、魔法少女以外とは全く連絡を取らない。更に、"自分が死ぬことによって何も変わらない世の中"を最も恐れている。だからチームに入れてあげたいのさ。少なくとも、繋がりを持てれば彼女が万が一、本当に万が一怪我をしたとしても、それは私達の記録に残る。そしてフランチェスカ、お前の戦力とレヴィナスの相性はいい。レヴィナスは、魔法少女の中でも特異体質で、危機感を著しく感じやすい。簡単に言うと、過去のトラウマから元素が無い状態を察知できる。魔法少女にとっては最強の盾なんだ」
「まあ! 許せないわ。その加担したっていう魔法少女は?」
「もう亡くなったらしいぞ。口封じだろうな。どうやったかは知らんが、どうにかやったんだろう。それさえ呑んでもらえれば、ブランショを紹介してもいい。メイザースの計画はわからないが、一人戦力が増えたところで問題は無いだろう」
「ええ! 歓迎するわ! メイザースには私から言っておく。だからブランショと連絡を取らせて頂戴」
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