こころのうち
お父さまは生まれたときから治らない病気を持っていた。家父長制が廃止されてもなお、その考えは根強く残り、お姉さまがいたのにも関わらず一家の長となった。桜屋敷、家族…お父さまとお母さまと、自分と譜雪姫だけならお父さまはお父さまで、
お父さまは何度か『今日が峠です』という言葉をかけられている。その度に回復し、生き続けて来られた。私にはわかる。お父さまはもう長くない。それは、本人もわかっているかはわからないけれど、その事実は変わらない。
『私を忘れないで』それは、いまの私にとっては呪いだ。
「パパ上、今日も寝てるね。ずっと」
「お冬ちゃん…」
父の個室を出て廊下で話す。
「次の当主は誰なんだろうね。パパ上の弟君である
「悔しいけどその通りなんだよねぇ」
「むぅ〜…。ねーちゃんの方が力の覚醒遅かったのに、うちより強いじゃんかぁ〜」
「教わった術はお冬ちゃんの方が多いもん!」
「使える知識はあっても力がなかったら無力も同然だしぃ?」
「……。」
「それにさ、ねーちゃんが当主になって、うちが補佐やったらパパ上たちとねーちゃんを苦しめた『父親、長男は偉い!女はいらん!』みたいなあれ、ぶっ壊せるかもしれないし」
「別に癒月はそんな苦しめられてないよ?」
「滅多に会わない親戚とはいえ『お前か男なら〜』とか『女を立て続けに産むなんて』とか言われてたら誰だって傷つくよ。分家の分際でさぁ」
「お冬ちゃん、『分家の分際』はだめだよ。その人にはその人の誇りがあるかもしれないのに」
「……。、別にさー…、ねーちゃんたちを悪く言うような奴らを大事にしようとは思わないんだよねぇ。ねーちゃんが当主になってもいい、姉妹でまとめ上げてくれっていう人もいるわけだから?そういう人は大切にするけどね」
「そうだね…」
自室前でも話し込んでしまう。一人になったら余計なことを考えそうで。でもそんなことに妹を巻き込んでいるのも申し訳なくて。事実、自分が当主になってもまとめ上げられる自信は全くない。誰かの上に立つのは真の陽キャたる譜雪姫の方が向いているのではないか…?なんて愚かな。お冬ちゃんが当主になるなら私は再起不能と判断されているではないか。ダメだ、そんなこと。私は生きないと。
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