無事ならば

 昼休み、志弦を除いて全員がナンゼロに集う。

「皆さまが無事で何よりです。志弦さまも欠席と連絡が入りましたのでひとまず、無事であるみたいで良かったです」

 誰も来ないから心配だったんだよ〜?と淋しそうな笑顔で言う癒月に「ごめんねぇ?」「悪いな」と返す。

 それぞれ、抱えるものが違う。本来交わることのなかった絶望と地獄が同じ学舎に集うことで交差した。消えゆくはずだった希望や命が、過酷な戦場で繋ぎ止められる。

「今日ね、起きたら十時だたんだよ。それはまぁ、焦ったけどさ、一時間に一本はあるのはありがたいけど、ちょうど発だから十一時まで時間あったんだよね…あっはは〜…」

「私はあれだな。いつものバスの、時刻表よりは前についたんだがさ?満車で次の乗れって言われちまって…」

「まともな理由がすぎるよ、瑠永ちゃん…」

「ありがとな。…だが…、此処じゃJRじゃない限り、遅延も何も認めてくれねぇじゃん。ましてや、満車で乗れなかったっつったら『満車で乗れないことを考えて前の便乗らなかったお前が悪い』だろ?」

「あ〜確かに…」

 (現実逃避)の意を込めて目を逸らす。

「先生は『社会はもっと理不尽で残酷だ』って言うけど、社会の方が優しい説立てたくなるよ、ね…」

「え、なにそれ初耳」

「あれ、聞いたことなかった?」

「ないないない」

 なにそれ、と繰り返して瑠永は全力で否定した。

「確か学校説明会では『お嬢さまの大切な個性を尊重し、ご所望であれば放課後はお嬢さまの生活に合わせた学習指導致します』って言っていたような…?」

「あ〜…真っ赤な嘘だね。寧ろ真逆でね、塾とか家の用事とかフル無視で学校第一!塾は欠席しろ、家庭の事情なんて知らん!補修の生徒は居残り!『お昼?成績の悪いお前らが昼飯食ってる時間あんの?追試だよ?』だし、寮のご飯だっていつも不味いって言われてるのに学校説明会のときだけ美味しいらしいしさ」

「とんでもねぇな…」

「そうだよ?ブラックだよ、真っ黒」

「で、ほら、課題研究とかいうやつ。あれで毎年脱落者出してるから」

「入る高校間違えたな…。いや、お前らと再会できた。ユヅと出会えただけはプラスか」

「何かしらで折り合いはつけないといけないから仕組みがたとえ極悪でも此処にい続けるよ。共にあると決めましたから」

「まだ挫けてないようで何より♪」

「当然!癒月は強いんですよ?」

「期待してるぜ?」

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