突然の来訪者
夜、志弦は何かが気になって起きた。部屋のカーテンをそっと開けると窓に雪鳴が立っていた。浮いていた、という方が正確か。
「雪鳴さま」
志弦が窓を細く開けて雪鳴が志弦と視線があう高さまで降りてくる。
「久しぶりだね、志弦」
三四年経とうと変わらぬ容姿と声。そしてもふもふ具合。
「久しぶりです、雪鳴さま。山端の土地神さまであるのになぜ此処に?」
「んー気まぐれ?久々に志弦の顔を見たくなった」
「とても純粋ですねぇ…」
「あと、この前力使いすぎたみたいだからそれも」
「それがメインなんじゃないですか…?」
「実はサブ」
「おぅ、まじか…」
慈しむような視線で雪鳴が言った。
「良かったね、志弦。一緒に眠れるような人ができて、共闘できる人がいて。お前はもう孤独じゃない」
「あぁ。僕はもう独りじゃねぇんですよ、凄いよね。でもだからこそ、怖くもなってきてるんですよ、置いていくのが」
「そういう契約だからね。今更どうこうできないよ。百も承知だろうけど」
「あぁ、わかってます」
「また会おうね、志弦」
背を向けた雪鳴を止める。
「待って、雪鳴」
止めた志弦の目が青から紫に変わる。
「ん?」
「やっぱり、志弦は死ななくちゃいけないのか?」
「
「やっと、『生きられる』ようになったあの子を、また…絶望に突き落とすなんて、私にはできないよ、雪鳴……。救えないの…?」
「結鶴、志弦の決意、覚悟をなかったことにしようとするな」
低い声で制止され、かつ、後悔と悲しみを含んだ目。結鶴は言葉を失った。
「っ…!」
それだけ言って彼は夜の闇に消えていった。夜闇にその白い身体は目立つはずだが、すぐに見えなくなって。
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