『イベラン終わったらイベント終了』じゃないんですよ、初心者は
ゆかりがいつも通りナンゼロに向かうとそこには志弦、癒月、瑠永がもう既にそこにはいた。
「テストがあるんだと」
そこには同じくAクラスの癒月が単語帳を開いていた。
「珍しいね、癒月ちゃん。朝から単語帳見てるなんて」
「おはようございます、ゆかりさま。昨日までのイベントを全力で走っていたらすっかり単語テストの存在を忘れていまして…」
「ん?でもイベランは十時までだよな?」
「はい。そのあと未読のストーリーを無料公開のうちに読んでおこうと日付が変わるまで読んでいたんです」
「あ〜…」
「限界ヲタクだな…」
「しかしながら、学生の本分は勉強です。いまからでも間に合わせます、単語テストに!」 「で、お前はどうなんだ?同じクラスなんだろ?」
「私はなんとかなると思う」
「ほ〜。…で、一言も喋らないアイツは…」
志弦を指す。本人は窓の外を眺めている。
降り注ぐ雨は大きな水溜まりを作っていた。
「志弦ちゃ〜ん」
近づくと小さくこくっこくっ…と動いている。
「しーづーるーちゃ〜ん」
(だめだこれ、寝てる)
「寝てますね、はい」
「おいおい…」
瑠永はどうしたものか、と思っても策は打とうとしなかった。
(いい加減、お子様じゃないんだ)
自分のことは自分で管理しろ——などと突き放すのは心苦しかった。管理、というよりは制御というべきか、それができていない、できる限界を超えている志弦をあまり追い込みたくはなかった。
(なにより『自分のことは自分でやれ』でつらい思いをするのは私自身を以って痛感している…)
「仕方がないな、まったく…」
立ちながら寝ている志弦に自分の上着をかけた。
「鐘が鳴るまで寝かせてやるか」
「そうですね」
職員朝礼が始まる合図が鳴る。
「志弦〜そろそろ起きろ〜?」
瑠永が声をかけても無反応。
「志弦さま〜?」
「志弦ちゃ〜ん!」
全反応なし。
「マジか」
「マジですね」
「まじだね」
ゆかりがそっと肩を叩いてみる。するとビクッと背中を震わせて志弦は起きた。
「おはよう」
「おは…よ……」
返ってきた返事はとても眠そうだった。
「いま、なんじ……?」
「八時半だよ。起きといた方がいいでしょ?」
「…ん……」
「眠そうだな〜夜ふかしでもしてたのか?」
「ん、ぁ…こわかった……」
(怖かった…?)
(何処かの方言ですかね?)
「眠れなかった?」
「うん」
「そっかそっか…」
(勝手に二人の世界に入らないで頂けます??)
(やっぱりゆかりさまだけがわかってしまうのは悔しいですね…。)
「おはよぉ、みんなぁ〜」
「おはようございます、志弦さま」
「おはよう、志弦」
んっ…く、ぱはぁ〜と背伸びをして志弦は眠気を飛ばした。
「今日も一日、頑張ってやりますかね〜」
「上から目線w」
「このノリで行かないとやってらんねぇのですよ、実際」
「それはわかるかも」
「はい、わかったら教室直行〜!」
志弦の元気な声でナンゼロを後にした。
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