2月14日
二月十四日。バレンタイン。
昨日の夜から今朝にかけて降ったらしく、窓から見えるご近所の家の屋根を見て(結構降ったなぁ)と感心する。父親をはじめとし、近所の男性陣が除雪機を動かしていた。
羨む生徒が出るから、といつからかバレンタインもお土産も、誕生日プレゼントさえも明確に伝えられていないのに『校則で禁じられている』らしい降瑞小。志弦たちが一年生の頃はそんな話はなかったが、三四年生の頃からちらほらと出ていたこの話。しかし、陽キャたちは大人の目クラスメイトの目を欺き、目撃者には口止めをする。そうして義理チョコが満遍なく学年に行き渡る。比較的おとなしめの子たちは友人宅等で特別仲が良い子に渡す。
普段孤立している志弦の机の上にも善意なのか、憐れみなのかチョコが置かれていた。個包装のチョコが四種類。誰からなのかだいたいの見当はついた。一軍女子の中でも純粋に平等に接しようとする人たち。
(だとすれば純粋な善意か…)
基本的に広く浅く接し、特別仲が良い子には深く接する、というのは何処にいようとあまり変わらない。広く浅く以前に関わりを極力持たずに過ごす人もいるが。ただ、一軍の善意あるメンバーは広く浅くの『浅く』が一般人より深い。
(めんどくさ…)
善意の塊であるが故に他人を傷つけることに自覚がない。だから勝手に土足で入ってくるし、中途半端に足を突っ込んで去っていく。
(で、問題はいじめっ子とも仲良くやってるとこなんだよな…)
はぁ…とため息をついて昼休みを迎えた。
いつも通りバケツの水汲みで二往復して、席に着く。ぼけっと待っていれば丼や牛乳が置かれていく。日直が『いただきます』の挨拶をしてから減らす人がちらほらと立ち上がる。その人たちに紛れて志弦は配られなかった箸を取りに行った。
(めんどくさ…)
食べ物が配られないほうがマシなのに、と感想が浮かんでも掻き消した。
掃除をして昼休み、五六時間目、そして放課後。虚な目で見る世界の時は遅いようで速く流れ、気がつけば帰りの会まで時計の針は進んでいた。
ブーツに履き替え玄関を出る。外の空気は冷たく、昨日のプラス十度が嘘のようだった。家に帰っては宿題と家庭学習をして時間を潰した。
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