月曜日

 月曜日、瑠永は異変を察知した。

 もともとゆかりがいなければぼっち確定の人脈のなさだが、明らかにおかしい。

 瑠永が教室に入った瞬間、賑やかだった教室は一瞬でしん…となり、すぐ何事もなかったように会話が始まる。その中に瑠永に対するヒソヒソ話も多含まれた。

 ゆかりはまだ登校していない。いつもなら瑠永が教室につくころには自分の席で百人一首か日本史の本を読んでいるというのに。

 仕方ない、と瑠永は図書室で借りた本を読む。

 チャイムが鳴って読書の時間、朝の会、一時間目と時間が流れていく。二時間目が始まった直後、ゆかりが欠席ということが伝えられた。

(風邪でもひいたのかな)



 一方、その頃のゆかりはというと三十八度を超える熱と独りで闘っていた。吐く息に熱が籠り、食欲という食欲は落ちている。熱のせいで情緒が不安定になり、泣くか泣かないかのギリギリを彷徨う。しかし現状、誰もそばにいない。

「ママ…」

 ゆかりは一度、登校を試みた。母の休んだら?の言葉に逆らって。学校についてしまえば、安全が保証されている保健室でゆっくり休める。殴られずに済む。

 しかし、身体は思うように動かず、母に電話した。

「ママ、むり…父さんはいない」

 父親が不在なのを伝える。それは同時にゆかりが一人でいることを伝えたことになる。

「わかった、すぐ帰る」

 ゆかりの母は上の人に早退する旨を伝え、急いで市電に乗った。それから二日間は娘の看病に徹した。


 再び降瑞小校内。給食の時間。

 今日はバケツの水汲みと床拭きの担当だった瑠永は水汲み場で志弦と会った。

「今日もやってるの?」

「あぁ」

 降瑞は三年生と五年生でクラス替えがある。その度に担任とクラスメイトが変わるのだが、残念なことに学年メンバーに大差はない。ゆえに、昨年度以前から続く事態に大きな変化は望めない。

「だから近づくなと言ったろ…」

「ん?」

 瑠永はその言葉を聞き逃し、バケツに水を汲んで教室に戻った。

 自分の机から本を取ろうとするとクシャッとボツにした原稿用紙みたいな紙が出てきた。全く身に覚えがない。広げてみると『ウザい』『死ね』『キモい』『のろま』『生ごみ』『役立たず』……。そんな言葉が複数の筆跡で書かれていた。

(なんて低級な…)

 瑠永は気にせず本を読んだ。給食を食べて掃除して迎えた昼休み。図書室に読んでいた本を返して次巻を借りる。

(少し早いけど、五時間目確か…)

 五時間目の算数の教科書とノートを出して借りてきた本を開いた。

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