第3話 くーちゃんとの決別
くーちゃんのクラスからは、3人バスケ部に入っていた。
そのうちの一人が、とても性格が悪いらしい。
私は、くーちゃんや他の子からその話を散々聞かされていた。
しかし、私は
自分が実際に目にしたことだけを信じるようにしているからだ。
その子は芹沢さんといい、みんなにはザワさんと呼ばれていた。
ショートカットで色黒でバスケ部にしては私と同じで小柄な方だった。
ザワさんは、クラスでは強気な発言をしたり、場の空気を読まない嫌味のようなことを平気で言うことがあるらしい。
だから、中学に入って早々に『感じが悪い子』と嫌われてしまった。
ただ、私はクラスも違うし、バスケ部中はそう無駄な話もしないのでよく分からなかった。
だから、挨拶もするし、順番がまわってくればパス練習もする。
それは、くーちゃんや他の子の話を信じないという意味ではなかったが、目の前で同じような不快なことをされたのでなければ、私としては避ける理由にはならないため普通に接していた。
ただ、くーちゃんには変化があった。
くーちゃんは、部活中はいつも私と組んでパス練習をしてくれていたのに、気がつけばいつの間にか私ではない子とするようになっていた。
くーちゃんはくーちゃんのクラスメイトのフナちゃんとパス練習をするようになった。
私には声をかけてくれない。
練習に来ると、真っ先にクラスメイトである舟木さんことフナちゃんに声をかけるのだ。
そして、同じクラスにバスケ部員がいない私は、あぶれているザワさんとパス練習をするようになる。
それが、気付けば毎回になっていた。
くーちゃんと、バスケがしたいがために入ったバスケ部で、くーちゃんが嫌いだと言っていたザワさんと組まされる。
いくら私がザワさんのことが嫌いではないにしても、くーちゃんがさっぱりパス練習に誘ってくれなくなったことはショックだった。
くーちゃんは、今やフナちゃんが一番の親友と言わんばかりに、楽しそうにパス練習をしている。
一方で私はザワさんとのパス練習は、さほど嫌ではなかった。
意地悪なところにパスを出すような子ではなかったからだ。
しかし、くーちゃんとフナちゃんが無視しているザワさんと気がつけば組むようにされていることは、何か大きな意味があるような気がして気がめいった。
そして、くーちゃんとパス練習をするフナちゃんを見る度に『そこは私の場所だったのに』と恨みがましく思ってしまう自分も嫌だった。
(くーちゃんの言葉を信じなかったわけじゃない。けど、なにもされてない私がザワさんを無視したらおかしいじゃない。そんなことできない子だって、親友なら分かってくれてもいいじゃない?)
私は、ただただ悲しくなった。
(くーちゃんもいないし、走れないし、試合もないし、顧問の先生も怖いし、楽しいことがひとつもないのに、もうバスケをがんばれないよ……)
私は、部活の帰り道にしゃくりあげながら泣いた。
体力も気持ちも限界だった。
私は、入部後2か月でバスケ部を退部した。
それは、くーちゃんとの決別を意味していた。
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