第2話 どちらでもない生徒


 多くの生徒は、いじめられる側でも、いじめる側でもない。


 大半は、どちら側でもない生徒だ。

 

 私もそうだ。


 人をいじめたこともなければ、いじめられたこともない。



   *



 中学生なって2か月の私には、悩みが二つあった。


 ひとつは、バスケ部でのいじめ問題。

 ふたつめは、クラスでのいじめ問題だ。


 どちらも、私は当事者ではない。


 私は、小学校でがんばっていたバスケを中学でも続けようと入部した。

 しかし、とても練習が厳しく2か月でもう体が限界に達していた。

 放課後、週に3回2時間程度の部活動があった。

 その2時間の間に、新入生がすることのほとんどは走り込みだ。

 基礎のパス練習が終わると、あとはひたすら体育館の中や外を走り続ける。


 しかも、休憩も水も飲んではいけない。


 練習試合も2か月間一回もなかったことは、私に大きなダメージを与えた。

 公式試合ではなくとも、練習試合くらいはあると思っていたからだ。

 楽しみの試合がなければ残るのは苦痛だけだ。

 部活の男性顧問は、若い体育教師で走れないなら辞めろと言わんばかりに、険しい顔で睨んでくる。


 いつもバテている私は、睨まれるたびに体がすくんで泣きたくなった。

 休みたい、水が飲みたいときは仕方なく、お手洗いに行くと言って、トイレの手洗い場で水を飲んだ。

 情けなく、最悪の気分だ。

 それでも、試合に出るためには走らなければいけない。


(小学校でもチームメイトだったくーちゃんもがんばってるんだから。私もがんばろう!)


 くーちゃんは、私が転校してきたときにはじめて友達になってくれた子だ。

 中学校では別のクラスになってしまった。

 とても、残念なことだったが部活で一緒なら友情は続くと思っていた。


 だから、バスケ部をやめたくなかった。

 けれど、中学校の部活動は楽しんだり、友達と仲良くするためのものではなかった。

 とにかく勝つための練習だった。


 私は、次第についていけなくなった。


 そこに追い打ちをかけるように、いじめ問題が浮上した。


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