少年のパジャマ代わりのスウェットに手をかけると、彼は焦ったように、更に抵抗を強めた。

 嫌か、と、今度はシュンは訊かなかった。こんなふうに、ほぼほぼ初対面の、しかも同性相手に組み敷かれ、嫌がらない人間のほうが少ないことくらい百も承知だ。

捲くり上げたグレーのスウェットから手を突っ込んで、少年の薄い腹に触れる。

 暴れまくってるせいか、少年の腹は、温かいと言うより熱かった。

 熱い。

 シュンがぽつりと呟くと、健少年は、一瞬抵抗を弱めた。

 「寒かったですか、ずっと。」

 健少年は、確かにそう言った。シュンの凍えきった過去を、あの冷たい妹たちの身体を、知りもしないくせに。

 腹立たしかった。知りもしないくせにと。心の真ん中に冷たい空洞があいて、そこがどうしても塞がらない。そんな寒さを知りもしないくせに、と。

 苛立ちに任せて、シュンは強引に少年の着衣を脱がせた。あらわになった身体は痩せていて白く、そんなところさえ美沙子に似ていた。

 痛い、と、少年が呻いた。無理にスウェットから引っこ抜かれた右手が変な方向に曲がって痛むらしかった。

 シュンはそれを無視し、少年の唇を塞いだ。どうかもう喋らないでくれ、と、念じるみたいに。

 男の身体は抱き慣れている。子供みたいにシュンを縛った男に始まり、これまで宿を調達するために何人もの男を抱いてきた。

 だからシュンは、手際よく少年の身体を蹂躙することができた。

 少年は必死でもがいていたが、シュンが彼の体内に手早く指を挿入したあたりで抵抗をやめた。

 諦めたのだろうか。

 シュンが健少年の顔に目をやると、彼は両腕をクロスするようにして自分の顔を隠していた。

 隠さないでよ、と、言いかけてやめた。

 どうせたかがセックスだ。顔が見えようと見えまいと関係はない。とくに、この少年を性的に喜ばせる必要はないのだから。

 少年の身体は、当然のことながら硬かった。熟れるずっと前に収穫されてしまった、哀れな果実を思わせた。

 それでもシュンは、容赦なく少年を抱いた。自分の中に、どうしてここまでの熱量が湧いてくるのかも分からないまま、がくがくと痙攣じみて震える少年の身体を組み敷いて犯した。

 やめて、とか、だめだ、とか、そんな台詞を少年は吐かなかった。腕の隙間から見える唇は、固く閉ざされて色を失っていた。


 

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