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抑え込んだ痩せた身体は、手負いの獣のように必死で抵抗してきた。
ここまで抵抗する相手を抱きしめ続けるなんて、そんなことをこれまでシュンは、したことがなかった。
いや、ある、あれは、もうずっと昔。シュンがヒモとしてのノウハウをまだ獲得できていなかった頃の話だ。
子供みたいな男の部屋に、シュンはその時住み着いていた。
その男は、愛してくれと、時々泣いた。泣く男を抱き寄せると、こんなふうに腕の中で暴れた。
もう、10年以上前の話だ。シュンは、その男から離れられずに一年ほどを過ごし、最終的に腹を刺された。
そう、あのとき以来だ。抵抗する身体を抱きしめるなんて。
シュンにとって抱擁は、一種のツールでしかなかった。拒まれたら、大人しく腕を離すだけの。だって、それがヒモだ。飼い主の望む通りのことを、ただするだけ。
それなのに今、シュンは、腕の中の少年をきつく抱きしめている。
「なんで、こんなこと、」
健少年が、ぜいぜいと息を切らしながら言葉を吐き出した。
なんでだろうね。
シュンはそんないい加減な返事だけした。
なんでだか、自分でも分かっていないのは確かだった。
子供みたいな男や女を相手しないのは、自分の中のルールとしてずっと決めていることだ。それが、子供みたい、どころか、本物の子供をこんなふうに抑え込んでいるなんて。
シュンは身体を捻じ曲げるようにして、再び少年の唇を塞ごうとした。
もう、なにも言ってほしくなかった。
しかし少年は、首を無理やり捻ってシュンから逃れた。多分この少年は、まだ言葉でシュンとわかり合えると思っている。
「そんなに嫌?」
シュンが問いかけると、少年はじたばたともがきながら半ば叫ぶように返した。
「嫌とかじゃなくて、意味がわからないんですけど。」
意味。
そんなもの、シュンにだって分からない。
分からないまま、もっとめちゃくちゃになってしまいたいと、体の奥が猛っていた。
いっそ、抱いてしまおうか。
この身体を。細く小さな体を、力ずくで蹂躙することは、多分可能だ。力はシュンのほうがあるし、良心の呵責なんてものに邪魔をされるとも思えない。
美沙子の顔が、脳裏によぎった。
いつも不機嫌そうだったあの白い横顔。
もう健を抱いたのか、と、あの問いは、問というよりは、唆しだったのかもしれない。
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