第11話 だいぶ狭き門

その後、俺達はグラウンドに大まかに並ばされると、魔法学院校長の挨拶が始まった。集合時間の朝9時ぴったりのスタートだ。


「皆さん、初めまして。私は当学院校長のハインリヒ・フォン・キッテルと申します。以後お見知りおきを。今回お集まり頂いた皆さんには、ハイデベルク魔法学院幼年コース入学試験を受験して頂きます。用意されたイスは100、今年の受験生は5524名となっております。」


倍率55倍か。世界中の上流階級や魔術師の子が集まると言うなら驚くような数字でもない。つか、このグラウンドに保護者も入れて今1万1000人以上も集まってんのか…。全く狭いとは感じさせないな、流石に広い。


「早速ですが、9時半から一次試験を開始します。校庭の各所に試験担当官を配置しておりますので、一ヶ所に集まり過ぎないようにお並び下さい。」


結局校長の口から試験の内容が語られる事はなかった。校長からの口頭説明が終わると、エルヴィンは俺の手を取り一直線に、青いロングヘアの試験官の元へ歩いて行った。


「ちょっとパパ、どうしたのそんなに急いで」


「いやー実はさっき知った顔を見かけてな。おーい、久しぶりだなフランツィスカ。」


「あ、やっぱりシャーロット先輩でしたか。やたら目立ってる人が居るなと思ってたんです。」


「パパの知り合いなの?」


「ああ、士官学校時代の後輩のフランツィスカ・ガードナーだ。退役したとは聞いたが、まさかここで教員になってるとはな。」


「私も驚きですよ。お子さんが居るとは聞いていましたが、ここを受けさせると言う事は娘さんも先輩に似て優秀なんですね。」


「まぁな。リーゼならまず落ちやしないさ。な、リーゼ?」


そんなドヤ顔で見て来るのはやめてくれ。プレッシャーで押し潰される。


「へえ、それは楽しみですけど、早く列に並んで下さい。もう試験始まっちゃいますよ?」


結局フランツィスカ班の列に並んだ頃には多分100番目くらいにはなっていた。学院側も教員を総動員したんだろうが、1日で5000人捌くのは無理があるんじゃないか?


「えー、予定時刻になりましたので、これより試験の説明を開始します。」


遂に始まったか。周りの空気もピリつき始めたぞ。そう言えば、いくらエリート家庭と言えど6歳児が集まればそれなりに騒がしくなると思ってたが、どいつも落ち着いている。寧ろ親の方が浮き足立っているかも知れない。


「一次試験では魔法を使い、3分以内に右手に見える的を2度、破壊して頂きます。」


そう言ってフランツィスカが指差した先、大体20mくらい離れているだろうか?半径50cmは無さそうな丸い的が置かれている。その後ろには大量の的のストックと恐らく壊された的を入れ替える為の係員。意外とアナログなやり方らしい。


「試験突破の為には的を2つ破壊して頂く必要がありますが、条件が3つだけ。1つはこの半径2mの白線の円の中で魔法を行使する事。2つ目は、的の破壊には最低でも中級以上の魔法を使用する事。3つ目は、2つの的の破壊に同じ魔法を用いない事。2種類以上の中級魔法を習得されていない方は、ここでお帰り下さい。」

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