第10話 父も英雄?

そんなこんなで月日は流れ、あっという間に入学試験の日を迎えた。事前手続きとかはいつの間にかエルヴィンがやっていた。ハイデベルクに俺が行くのはこれが初めてだ。因みに同行出来る保護者は1人までなのでエリナはお留守番。嫌がってたけど。


「リーゼ、どうする?パパと一緒にプテリクスに乗るか?1人で操縦してみるか?」


プテリクスと言うのは、鋭い歯が備わった強靭な顎、3本の鉤爪を持つ指と言った爬虫類の特徴を併せ持った鳥型の魔物だ。

ライド用として貸し出されているものはテイム済みだが、一定以上の実力を認めた相手以外に乗られる事を拒否する事が多い。


とりあえず俺は、1番デカくて強そうな奴を選んでみた。


「どう?私を乗せてくれる?」


「ギィ?ギアッ……ギュウ…」


反射的にこんなガキが?と言わんばかりに睨み付けて来たが、俺の顔を見るなり大人しくなった。寧ろ怖がられてる気がする。


「よぉし、それじゃ飛ばしてくぞ!」


正直搭乗用の固定ベルトがめちゃくちゃ頼りなかったが、乗り心地自体は悪くない。途中他の飛行系のモンスターや猛禽類なんかとすれ違っても向こうが避けていく。恐らくプテリクスは空の生態系の上位に君臨しているのだろう。


体感40分ちょいくらいの空の旅を終えると、俺達はハイデベルクの正門前に降り立った。他にもモンスターライドで通学する気の生徒は意外と多いらしく、正門前の通りはさながら様々な空飛ぶ魔物の万国博覧会と言った様相を呈していた。


「これがハイデベルク…でっか……」


「そりゃあ世界でも指折りの魔法学校だからな。相当施設は充実してる。特に書庫の規模は魔導書だけなら国立図書館を凌駕するとか言われてるな。」


初めて目にする魔法学院は学び舎と言うよりさながら貴族の屋敷のような外観だった。相当建築に力を入れたであろう事は想像に難くない。壮麗な御影石で出来た門をくぐり、俺達は集合場所に指定されているグラウンドへと歩みを進める。


…それにしても、何かやたら周りの保護者からの視線を感じるな…。俺、なんかやらかしたか?黒のブレザーと赤いチェックが入ったスカートの着こなしは問題ない筈だ。スカートの履き心地の悪さにも散々エリナが履かせてくるのでもう慣れた。伝統校なだけあって中々シックな制服だと思う。


「ちょっと見て、あそこに居るのシャーロット少将じゃない?」


「そんな訳…嘘!?あの『蒼い死神』に子供が居たなんて…。」


「是非お近づきになりたいわ…。」


ハハーン。そう言う事か。エルヴィンも相当な手練れだとは思っていたが、まさか上位の将校、それに大層な異名まで付けられていたとは…。本人がどこ吹く風って態度で歩いている所を見ると、注目を浴びるのも慣れっこらしいな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る