第7話 天翔る幼女
「仕方ない、飛ぶか。」
俺には1つ切り札が残されていた。飛行魔法だ。中々に習得難易度は高いが、使えれば爆発的に移動効率が上がる。前世で冒険者に成り立ての頃にかなり苦労しながらも会得した、昔取った杵柄ってヤツだ。
「エアリアル・フライト…っと。オーケー。これで街にヤツらが到着しちまう前に先回りだ。せっかく節約しながら進んでたマナを移動で消費したのは痛いが、時間稼ぎくらいなら出来るはずだ。」
まだウルフが街の玄関口、草原に続く街道門に辿り着くまでは時間があるな。そうだ、俺がこんな能力を持ってる事がバレると色々面倒な事になる。ここは
こうして黒髪を靡かせる俺は、パルヴスウルフの群れの前に降り立った。
「はーぁ、まさか4歳にして命を賭ける時が来るとはな。ずっと山の頂上に篭ってれば俺だけは助かったかも知れないが、エリナを見捨てて明日食うメシが美味いかよ。たった4年、されど4年。もう充分に、自分で思っていたより、俺は今の両親に情と愛着が沸いちまったらしい。______行くぜ。」
まずはコイツらの動きを止めろ。
「パラライズ・ガトリング!よぉし、そのまま一生痺れてくれても良いんだぜ?」
「グルァ!?グォォォォォォォォ!!」
迫り来るウルフの第一波を麻痺させたが、すぐに第二陣が牙を剥く。
「エアカッター!フラッシュフラッド!チッ、単体はカスだがキリがねぇ…」
俺のマナも無尽蔵にある訳ではない、何とかウルフの動きを封じながらも応戦するが、もう四方を囲まれてかけている。
「仕方ねぇ。俺の見通しが甘かった。戦力の逐次投入はいつの時代も御法度だ。…一撃に賭けるぞ。」
「水属性魔法・王級 タイダルウェーブ!」
俺の撃ち出したした水の壁がウルフを飲み込んで行く。タイダルウェーブの攻撃範囲は大体50m程度。隊列を組んで襲い来るウルフを全て射程に捉えた筈だが…?
波が蒸発した。まだ立っている狼が数匹。万全の火力に及ばない高波では仕留め切れなかったものが居たらしい。
「ハッ、ハァ、クソ。もうこれ以上は限界だ。この程度なら、街の自警団でも対処出来るだろ。…撤退だ撤退!」
残ったマナを振り絞り、空を飛んで避難場所となっていた高台まで上手く逃げ込んだ俺。あーあ、最後までカッコつけ通したかったんだけどな。締まらない話だぜ。
結局の所、手負いのウルフは街に侵入したが住民の避難が進んでおり、犠牲者が出ないまま駆けつけた軍の兵士によって仕留められたらしい。既に倒された大量のウルフを前に、間に合わなかった兵士達は首を捻るばかりだったと言う。また、この日街を魔物から救った幼女の姿をした魔術師の英雄伝説が生まれたとかなんとか。……、ハハ、見られてたのか…。
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