第4話 家の力を信じよう

「出てきたはいいものの、なかなか酷いものですわね」


 地上へ出てきた香峯子は、地上の凄惨たる様子に眉根を寄せる。


 ちょくちょく香峯子の命を奪おうとする輩が大量破壊兵器とか持ち出してくるが、香峯子達が守っているというのもあるのだが、それでもここまではならない。


 散らばる瓦礫、人の燃えカスや撒き散らかされた贓物。貼り付けにされた重たそうな司祭服を着ているから、聖職者的な人物だろう。


 もうこの場には動物一匹すらいない。この場でどんなことが行われていたのか、想像した香峯子は肩を落とす。


「治安の悪い場所へ来てしまったみたいですわね……」


 死んだはずなのにこの場にいる。なぜか肉体を持っている。元いた世界の香峯子の肉体はどうなっているのか。


 元いた世界では大変な騒ぎになっていることは容易に想像できる。肉体ごとこの世界に来ているのなら、すぐに望杉家が香峯子の行方を捜査するだろう。


 しかし、肉体が残ったままで、香峯子の魂のみがこの世界にやって来たとなると、さすがの望杉家でも香峯子を探すのに時間がかかるだろう。


「まあどちらにせよ、助けを待つしかありませんわね。それまでどこから安全な場所を探すさないといけませんわ」


 逆にこの場は安全だろうが、身を隠す場所が無い。かと言ってこのありさまだ、人がいる場所に向かったとして、もしまたこの場所と同じことが起きてしまうかもしれない。


 慎重に動きことが必要だ。


「その前に、水辺に行きたいですわね」


 まずは血で汚れた縦ロールを洗いたい。香峯子は縦ロール駆使して水の感じる方向へ駆けていくのだった。

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