第4話
知っていながら知ることのない森はいつも照らす月明かりを遮っていつもよりも暗くさせます。
ガサガサと声が聞こえれば、同じニンフでも宿るものを別としたドライアドがナイアードを見下ろしていました。
人を知りませんか?太陽のような髪をした顔に火傷を負った人。
ナイアードが問い掛けるとドライアドはついと森の奥を指差しました。
『女神様から聞きました。もうすぐ太陽の馬車が現れるから小川に隠れなさい。』
この日、ナイアードは森の小川に隠れました。
太陽の馬車が空裾に隠れ、勇敢なる女神の光が現れるとナイアードは小川から上がってきました。
そうして昨晩ドライアドが教えてくれた先へと小川に沿うように歩いて行きます。
慣れぬ人の足で人の通らぬ草道を踏み分けながら歩きます。
夜に鳴く鳥たちが物寂しく声を響かせていました。
ナイアードはそれでもひたすら歩いて行きました。
月が空の真上から光を射し、やがて幕を引くように傾きだします。
夜の鳥が巣に帰り、朝を告げる鳥が小さな吐息を零す時になりました。
ナイアードは小川へと帰りました。
また太陽の馬車が通り過ぎた時にナイアードは現れました。
今宵も歩いていると草が倒されている場所を見つけました。
鳥たちもナイアードがいた泉ほどに穏やかな吐息ではなくなってきました。
人の歩く森へといつの間にか入ってこれたのです。
ナイアードは少しだけ喜びつつ歩いていきました。
すると木々がざわめき小さな風のニンフ、シルフィードが現れました。
『風が教えてくれました。この先に人里に流れる小川があります。二つに分かれているから気を付けて』
シルフィードにお礼を言ってナイアードは小川へと帰りました。
新たな夜を迎えてナイアードはシルフィードが教えてくれた二つに分かれた場所までやってきました。
木々を抜けた今ではドライアドもシルフィードもいません。
どちらに行ったのだろうと考えていると小川にちゃぽんと水の跳ねる音がしました。
探してみると年を取った蛙がいました。
『お困りですか?』
蛙が問い掛けてきたのでナイアードは事情を説明しました。
すると蛙は答えました。
『それならば一度見ました。その男はこの右手の道を進みました。しかし、もう美しき日の神の刻限になりますよ』
ナイアードは蛙の言葉を聞き休みました。
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