第7話 逃避行

 9月2日 - 日本の軽自動車の字光式ナンバーの払い出しが一部地域で始まる。


 脇坂が、自宅駐車場において柳刃包丁で左胸を刺され死亡した。逃亡先の銚子のホテルのロビーで知った。無断欠勤したら怪しまれるから『こころの風邪』と木下の後任である風間豊かざまゆたかには伝えた。40代のオッサンだ。

 朝ご飯の鮭が塩辛くて嫌になった。 

 銚子市は夏涼しく冬暖かい快適な気候であり、国定公園に指定されている犬吠埼や屏風ヶ浦といった全国屈指の景勝地のほか、国内最大の漁港である銚子漁港、海洋リゾート拠点である銚子マリーナ等を有する観光都市である。江戸時代に東廻り海運と利根川水運の中継港として繁栄し、歴史文化遺産が多数存在する古都でもある。

 

 いろんなところを散策し、ホテルに戻り夕食をとり一馬はホテルを再び出て、静かな銚子の町を歩いた。街灯の明かりが街を照らし、風が海から心地よく吹いてくる。彼は古い商店街を訪れ、地元の居酒屋や小さなカフェで地元の味を楽しんだ。

 銚子の静かなホテルでは、一馬が夜遅くに廊下を歩いていると、怪物の気配が漂った。部屋の明かりが微かに揺れ、一馬は不安な足取りで進む。廊下には不気味な影が広がり、怪物の低い唸りが聞こえる。一馬は慎重に部屋に戻り、窓の外に広がる暗闇と怪物の存在に戸惑う。

 

 9月10日 - H-IIAロケット3号機が打ち上げられる。

 

 早朝、夕凪市内の公園で清掃活動をしていた男性が人の足首や頭部が入った一斗缶を発見。一斗缶は植え込みに立てかけるように置かれ、ビニールテープでふたが固定されていた。同日午後に近くの路上で手首などが入った第二の一斗缶が見つかった。


 一斗缶には、バラバラにされた女性の遺体が入っており、DNA鑑定したところ成海遥香と判明する。その後の調べで遥香は2002年6月頃から行方不明になって失踪届けが出されていた。


 9月17日 - 小泉首相が、日本の首相として史上初めて、朝鮮民主主義人民共和国を訪問。日朝首脳会談で、北朝鮮の金正日総書記が、日本人拉致問題を公式に認める。


 一馬は遥香の葬式に出かけた。いつまでも逃げてるわけにもいかず、会社には電話で辞めると伝えた。喪服に身を包んだ一馬は、悲しみと共に穏やかな思い出に胸を包まれている。


「遥香、君のことを思い出すと、まだ信じられないよ」

 参列者たちが黙とうを捧げ、花が遥香の棺にそっと敷かれる。司式者が挨拶する。遥香は両親を早くに亡くし、叔母さんが司式者を務めていた。

「遥香は優しく、温かな存在でした。彼女の思い出は皆さんの心に永遠に残ることでしょう」

 一馬は遥香との思い出を胸にしまい、参列者たちと共に感謝と哀悼の気持ちを込めて葬儀を迎えた。

 

 葬儀が終わり、遥香の遺体は火葬場へと移された。一馬は悲しみに沈んだ表情で、静かにその場に立った。火葬場では遺体が慎重に準備され、儀式が進行する。一馬は黙って遥香の最期を見送った。焚かれた炎が次第に高く立ち上り、遥香の棺が徐々に灰となっていった。


 焚かれる炎が遥香の姿を包み込み、一馬は心の中で彼女との思い出を振り返った。参列者たちは黙とうを捧げ、遥香への最後の別れの時を迎えた。

 

 

 

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