第6話 黒い帽子、黒いマスク 

 お盆明け、一馬は印刷会社の製造部に赴いた。しかし、そこで予期せぬトラブルが発生し、機械の故障や混乱が広がっていた。一馬は製造部で恐ろしい目に遭い、どうやって問題を解決するかに悩まされた。

 

 一馬は冷静に状況を見つめ、印刷機の故障の原因を突き止めるべく努力した。同時に、周囲のスタッフと連携を図り、迅速な対応が求められる状況に立ち向かった。彼の指導と協力により、混乱が収束し、印刷プロセスが再び安定することとなった。


 8月20日 - 丸の内に建設中の丸の内ビルディング(新丸ビル)が竣工。


 一馬は夢の中で驚くべき出来事に遭遇した。彼は不死身になる夢を見、夢の中であらゆる試練や危険に対して無敵の存在となっていた。この夢は彼に勇気と自信をもたらし、現実の挑戦に対しても前向きな気持ちを抱かせた。

「やるなら今日しかない」

 鏡に映る自分の顔を見つめ一馬は言った。


 横浜警察署刑事課の朽木鈴花くつきすずかは怒りに震えていた。

 木下翔太って会社員が、8月20日仕事終了後、近くの山の竹林にカブトムシを採りに行ったまま消息不明となり、2日後の22日、昼風山ひるかぜやま山頂付近で遺体となって発見された。


 直接の死因は絞殺。木下のリュックには、空の弁当箱、採ったカブトムシ、財布が入ったままであった。検死の結果、死亡時刻は午後6時〜7時と判明。

 金を奪われた形跡はなかったが、木下の衣服のポケットから、

『黒い帽子、黒いマスク』と鉛筆で走り書きをしたスーパーのレシート(日付は事件当日より2日前)が発見されたが、衣服のポケットにはこの鉛筆がなかった。後日の捜索で、殺害現場から少し離れたところで芯の先端だけが見つかっているが、鉛筆そのものは見つからなかった。


 木下は全身30箇所以上も殴打され、肋骨が折れて、肝臓が破裂していた。鑑識課の鑑定結果によると、犯人の血液型はO型と判明している。


 犯行現場は、殺された木下たちのように、ピクニックがてら昆虫採りに地元の人が訪れているようなところだったが、犯行発生前から木や竹が生い茂り、昼間でも薄暗いところが多く、レイプ事件も発生していた。

 

 配属して2年目になるがこんな凄惨な事件ははじめてだ。

 

 8月27日 - ソニーが「ベータマックス」の生産終了を発表。


 一馬は自室でニュースを見ていた。

『警察の調べでは、木下さんを殺した犯人は黒い帽子や黒いマスクをしていたそうです』  

 横浜署の前に立つ女性リポーターが言った。

 俺は黒い帽子や黒いマスクなんてしていない。

 木下を殺そうとしていた奴が他にもいた!?

 木下は5歳の息子の為にカブトムシを取りに出かけたらしい。それが命取りになった。


 8月29日 - 原子力安全・保安院は、東京電力が管内の原子力発電所の自主点検においてトラブルを報告していない不正が行われていることを公表。


 横浜署の刑事が職場に来た。松田優作によく似た刑事だ。一馬も取り調べを受けた。「木下さんを恨んでいる人はいませんか?」

 一馬は何も答えなかった。血液を採取された。


 8月30日 - 小泉首相が9月17日に、北朝鮮を訪問することを表明。

  

 今日は早出だった。夏場の印刷工場では、暑い日差しと共に機械の音が響く。作業員は軽い制服に身を包み、機械の前で様々な印刷ジョブに取り組んでいる。大きな印刷機は連続的に紙を送り、インクの香りが漂う。工場内は活気に満ち、ファンや冷房が働きながらも、時折汗を拭う光景が見られる。

 

 千葉は昼休み、ニヤリと笑いながら言った。

「アイツが死んでよかった」

「アイツ?」

「決まってんだろ。木下だよ」

 意外だった。千葉は木下の取り巻きだと思っていた。

「そういうこと言うもんじゃありませんよ」

「浅井……」

 千葉は何かを言おうとして止めた。

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