第4話ー3
翼を目一杯広げたチッチがぼくの前に立ちはだかったのだ。
チッチは、そのまま力なくふわりふわりと落ちていった。
病院から帰って来たママさんの悲鳴が、部屋の中に響き渡った。
猫は、その声に反応して、物凄い速さで窓から逃げて行った。
ママさんが泣き叫ぶ声、床の上で動かなくなったチッチ……
ことの重大さに気づいたぼくは、チッチの側に駆け寄った。
「どうして……どうして、ぼくなんかを庇ったのさ?」
ぼくの目からは涙が絶え間なく流れ落ちた。
「どうしてかしらね? もしかしたら、あたし、アンタのこと好きだったのかも……
ねえ、もうあたしは助からないわ。時間がないの。あたしの話きいてくれる?」
ぼくは、何度もうなずいた。
「あたしね、アンタに嘘ついてたの。アンタが鳥かごを飛び出して、大空を旅したいって言ったじゃない? ほんとはね、あたしの夢もアンタと同じだったのよ……あの時は大笑いしちゃってごめんね……あたし、アンタに……死んでほしくなかったの……ああでも言わないと……アンタ、今にも鳥かごから飛び出して行っちゃいそうだったから……
ああ、こんなところで死んじゃうんだったら、アンタと一緒に大空を旅したかったな……
もっと素直になれば良かったな……ごめんね……今まで……ありが…と……」
そう言って、チッチは天国へと旅立って行った。
チッチは幸せそうな顔をして眠るように息を引き取った。
ぼくは、ずっと、ずっと、チッチの側を離れることができなかった。
「チッチ、チッチ、ねえ、起きてよ! ぼくを独りぼっちにしないでよ!」
ぼくは、ずっとずっと泣き続けた。
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