第4話「チッチの嘘」ー1

第一印象が最悪だったぼくたちが、ひとつかごの下で暮らすようになってから、3年が過ぎた。


相変わらずチッチは生意気で、ぼくたちは毎日のようにケンカをしたけれども、少しずつチッチの良いところもわかってきた。


ゴハンの時間になると、必ず、チッチはぼくにおいしいところをくれるんだ。

お部屋の中でお散歩する時は、思いっきり追いかけっこをして、

寒い日は、止まり木でお互い寄り添って温め合う。


チッチがぼくのとなりにいる日々が当たり前になってしまったぼくは、鳥かごから飛び出して大空を自由に飛び回って旅をするという夢も、いつの間にか忘れてしまっていたんだ。


「ねえ、チッチ、最近、ママさんよく出掛けるようになったけど、どこに出掛けているか知ってる?」


「本当、アンタって鈍感ね。もうすぐママさん赤ちゃんが産まれるのよ。だから、病院に通っているのよ」


「そうだったんだ! だからママさんのお腹大きいんだね! ぼく、ママさんいっぱいゴハン食べて太ったんだと思ってたんだ」


「本当にアナタって、デリカシーのないオスよね」

そう言いながらも、チッチの頬は桜色に染まっていた。


(もしかしたら、チッチ、赤ちゃんが欲しいのかな? チッチがママさんでぼくがパパさん……可愛いひな鳥たちに囲まれた賑やかな暮らし……それも悪くないかな?)


ぼくが、チッチを意識し始めたある日、悲劇は突然に起きた。

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