第3話「チッチ」ー1
ハヤトと出会ってからというもの、ぼくはお外ばかりを眺めるようになった。
ぼくが知らないお外の世界のことをいろいろと想像し、いつかあの広い大空を自由に旅したいという思いが強くなっていった。
ぼくが、ゴハンを食べることもお水を飲むことも忘れて、一日中ぼーっとしていたら、パパさんとママさんがぼくのことを心配するようになった。
「ねえ、あなた、ピースケったら、この頃ちっともゴハンを食べないの。お水もほとんど飲んでないみたいだし、どこか具合が悪いのかしら?」
(ちがうよママさん、ぼくは、とっても大きな夢を持ってしまったんだ。いつかはパパさんやママさんともお別れしなければならないんだ。これは男のロマンなんだ。ママさんにはわからないだろうなあ……)
「うーん。動物病院に連れて行った方がいいかなあ」
病気になったと勘違いされたぼくは動物病院に連れて行かれた。
「特に異常はありませんね。もしかしたら、ピースケくんは、独りぼっちで寂しいのかもしれませんね。もう一羽お友達を飼ってみたらどうでしょうか?」
お医者さんは、トンチンカンなことを言った。
(違うってば! ぼくには大きな夢があるんだ! 友達なんて必要ないんだ!)
お医者さんの言うことを信じてしまったパパさんとママさんは、早速ペットショップに行って、メスのセキセイインコを連れて来てしまったんだ。
「さあ、ピースケ、新しいお友達ですよ。この子の名前は“チッチ”。とっても可愛い女の子よ。仲良くするんですよー」
チッチは、お顔が白くて羽は鮮やかなスカイブルーのメスだった。
ぼくはとりあえずご挨拶をした。
「やあ! ぼくはピースケ! よろしくね!」
「あたしはチッチよ。あたし疲れているの。あまり馴れ馴れしく話しかけないで頂戴!」
そう言うと、チッチは、ぼくから離れて眠ってしまった。
(愛想のないメスだなあ)
ぼくは、これからコイツとひとつかごの下で暮らさなければならないと思ったら、とっても憂うつな気持ちになった。
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