二十三年 九月 水澄む

「水澄む」は秋の季語です。秋はものみな澄みわたる季節であり、水もまた美しく澄む。水底まで見えるような湖沼や川の美しさをいう。水溜まりや汲み置きの水には使わない(「俳句歳時記・秋」角川書店編より抜粋)

 秋の水の美しさを讃えて「秋の水」「水の秋」「秋水」という季語もあります。これらの季語と「水澄む」との違いは何かといえば、水が澄む秋が来たぞ、という季節の到来を感じさせるところでしょうか。



 水澄みて川の底にも魚の影


 最初「魚」を「岩魚」にして、危うく季重なりのトラップに掛かるところでした。

 川の水も透明に澄んで、魚も影を川底に落として泳ぐのだ、という句です。没句。

「水澄めりけはひのごとき魚の影」という鷹羽狩行さんの名句があります。……知らなかった。


 水澄むや滝の畔のレストラン


 学生時代の夏休みに、友だちと伊豆の河津かわず七滝ななだる巡りをしたことがありました。遊歩道の整ったハイキングコースがありまして、真夏でも涼しい木陰の道をたどって七つの滝を巡ったのは楽しい思い出です。そんなハイキングの途中で見つけたレストランは窓が大きくて明るい日差しの入る爽やかな外観でした。お腹の空いたわたしたちは、勿論ここでランチタイムを取りました。没句。


☆☆ 水澄むや音楽室のアルペジオ 


 アルペジオはギターなどでコード(和音)を弾くときに、弦の音を一音ずつ鳴らす演奏方法のことです。放課後の音楽室からアルペジオでギターを弾くのが聞こえてくる。いいなあ、秋だなあ。ギターの哀しげな調べに水澄む秋が来たのことに改めて気づいたよ、という句です。人選でした。

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