二十三年 八月 廃遊園地

 今月のお題写真は、廃墟。それも遊園地の廃墟です。

 好き放題に茂ったススキやセイタカアワダチソウの背の高い藪の向こうに、観覧車の黒いシルエットが見えます。夕暮れが近いのでしょうか。鈍色の空は重たげな雲に覆われて、一筋の光芒が廃墟を照らしていました。さあ、どうしよう。



☆ てられた遊園地から昇る月


 廃墟というのは子供じみた冒険心をくすぐるものですが、誰もいない蔦草の絡みついた遊園地には悲哀のようなものを感じました。季語は「月」で秋です。明るい月影が錆びた観覧車やジェットコースターやメリーゴーラウンドに降りそそいでいます。

 「廃てられた」だけで具体的な描写が足りなかった。並選でした。


☆☆ 小鳥来る錆びたゲートの遊園地


 廃墟と言っても人間だけの問題。もともと野に暮らす生き物たちには関係ありません。廃業した元遊園地は人間が来ないので、野鳥には有り難い場所なのでしょう。風雨にさらされて錆びてしまったゲートが時折木枯らしに揺さぶられてキイキイと鳴ります。そんなゲートに守られて、シジュウカラやコガラの群れが降りてきて、草の実をついばむのでした。季語は「小鳥来る」で秋です。人選でした。


 廃遊園地宙に途切れしレールかな


 この句は後から拵えた無季の句です。カクヨムの短歌俳句コンテストに投稿しました。壊れたジェットコースターのレールが中途半端なところで宙づりになっているのを想像すると、銀河鉄道999のように空へ旅立つ列車の姿が見える気がしました。

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