第3話 いざ、大地の底へ
リューに蹴り飛ばされて頭がアカン感じになってしまったヒューゴであったが、幸いしばらくすると正気を取り戻す事が出来た。
3人は打ち合わせのために管理局を出て近くの食堂のテラス席に移動する。
「いやぁ、すまんかったなオイ! すっかり舞い上がっちまってよ! 悪気はねえんだ勘弁してくれよオイ……だっはっはっは!!」
高笑いしているヒューゴであるが、今だ何だか……全身がよれた感じになっているというか、軸がぐにゃぐにゃになってしまっているかのような不安定さのフォルムになってしまったまま戻っていない。
「だ、大丈夫なんでしょうか……? 何と言うか、その、利き手じゃない方の手で描いたイラストみたいなお姿になっちゃってますけど……」
不安げなクリスティン。
彼の身を案じてというのも勿論あるにはあるのだが、なんと言ってもこれから彼を案内に危険な探索に赴かねばならないのである。
彼がポンコツか否かというのは自分の身の安全に直結する深刻な問題なのであった。
尚、彼を蹴っ飛ばしたリューは無言でお茶を飲んでいる。
「なぁに、心配はいらねえよ。伊達に冷たい世間の荒波に揉まれて生きてきたわけじゃねえ。オジさんのタフさは折り紙つきだぜ」
ニヤリと笑ったヒューゴは話しながらガツガツとサンドイッチを猛烈な勢いで食べている。
ちなみに払いはクリスティンだ。
蹴った詫びでもないのだが、何しろ彼は今ほぼ無一文だというので……。
「それで、私たちただ探索するっていうのではなくてですね……」
「ああ、その辺もバッチリだ。こいつにあれこれ書いてあったぜ。そのナントカさんを探してくりゃいいんだろ?」
ヒューゴは持ち上げた書類をヒラヒラと振る。
「『当許可証は捜索活動参加のため特例として発行するものであります』ってな。その代わり仕事をちゃんとこなせば引き換えに無期限無条件の許可証を改めて発行してくれるそうだ。俺としちゃ渡りに船だぜ」
「本当に役に立つんだろうな?」
懐疑的なリューが硬質な視線をヒューゴに注いでいる。
蹴っ飛ばしてからのトゲトゲしさが今も解消された様子はない。
「任せときなって! オジさんには世界中の数多くの遺跡を探索してきた知識と経験がある」
「その優秀な男がなんで40年も許可が下りずに門前払いを食わされている」
辛らつな物言いのリュー。
「そんなのオジさんが知りたいぜ、まったく。アイツら学会費滞納して学会追い出された事を掘り返してネチネチやってくるわ、申請費をツケてくれっつってもダメだっつってくるしよぉ」
「……んん?」
しかめっ面でボヤくヒューゴに怪訝そうな顔で首を傾げたクリスティン。
「……それは……ダメなのでは?」
「おっ、そうか? まあ今となっちゃどうでもいい話だわな。だっはっはっは!」
何が楽しいのかヒューゴは大笑いしている。
反対にクリスは不安な気持ちの増大を感じずにはいられないのであった。
────────────────────────
準備や打ち合わせに1日を費やしてその翌日。
3人は遺跡探索に出発する為に集合していた。
比較的軽装なヒューゴとリューの2人に対して異様な大荷物を背負っているクリスティン。
「何か……悪ィなあ女の子に大荷物持たせちまってよ」
「そこはお気になさらず。適材適所ですから」
クリスは軽く微笑んで首を横に振る。
実際彼、背負う荷物は100kg近くにも及ぶ重量であったが怪力の彼女にとっては動作に制限は受けるものの重さによる負担はそれほどでもない。
リューとヒューゴの2人は露払いである。ある程度は身軽に動けなければいけないのだ。
「ところで……」
クリスティンが目の前の建物を見上げる。
体育館か大型倉庫のような大型の建造物が聳え立っている。
そして明らかにそれは近代のものだ。
「ここが遺跡なんですか?」
「ああ、ここは蓋みてえなもんよ。遺跡の入り口に被せて建てた管理局の建物だ。入り口をむき出しにしとくと管理も警備も面倒だからな」
入り口で職員に手続きをして内部に入る。
手続きは職員が許可証をチェックし必要な書類に記名するというものだ。
書類は……有り体に言えば「内部でどんな目に遭おうが全部自己責任です」という内容を承諾するものである。
「うわ……」
それを見て絶句するクリスティン。
建物内部の足元は土の地面がむき出しであり、そこに途方も無く巨大な穴が空いている、
それはまるで何もかもを飲み込もうとしている巨大な生物の口のようであった。
「ここが入り口だ。つってもまあ見りゃわかるだろうが正式なもんじゃねえ。工事で穴掘ってたらたまたま遺跡上部にぶち当たったってのがそもそもの始まりよ。正規の入り口はどこも埋まっててもう使い物にならないそうだ」
流石研究者らしく解説するヒューゴ。
既に光景に圧倒されているクリスはカクカク肯くことしかできない。
「さぁーって行くとしようぜ! 記念すべき第一歩ってやつだな。オジさんにしっかり付いてこいよ! だっはっは!!」
穴の壁面に沿って階段が設置されている。
足取りも軽く下っていくヒューゴの後に2人が続く。
低く、微かな唸り声に似た音を立てて地下からの風がクリスティンの頬を撫でていく。
「この遺跡はカプール王朝期のもんだ。大雑把に言って今から1300年前から900年前まで、400年の間に建造されて利用されていたもんだな。この時期、地上はあれこれあって人が暮らすには過酷な環境になっててな……世界中にこの時代の地下施設が存在してる」
「ほほ~……」
聞き入っているクリス。
歴史に詳しくない彼女にとっては未知の領域の話であり新鮮だ。
「『魔物の時代』っていうんでしたっけ?」
「そうだ。『魔王』が地上の大部分を支配して魔物が溢れかえってた闇の時代だな。後に英雄王、妖精王、武神王、魔道王の四王と呼ばれる4人の英雄が魔王を倒してこの時代を終わらせるまで800年近く人類にとっては厳冬の時代だったわけだ」
何となく視線を交し合うクリスとリュー。
……その内の1人は……知っている。
両者の脳裏に過ぎった姿は同じだった。
『今日はキャラメルのババロアを作りましたよ。皆で頂きましょう』
クリスたちの認識ではとてもそんな伝説上の大人物とは思えぬ、何だかスイーツばっかり作っている愉快なエルフのお兄さんなのだが……。
────────────────────────
……そして、クリスティンたちは地下1層に到着した。
所々にコケやキノコの生えた石造りの通路だ。
「……明かりがあるんですね?」
周囲を見回すクリス。
ランプが一定の間隔で設置されていて内部はそこそこに明るい。
「ああ、この辺は肩肘張らなくて大丈夫だ。1層はもう探索され尽くしてるからな。1層までなら立ち入りに許可証も必要ない。ただ高額の料金を払って管理局の職員を同行させるのが条件だがな。半分観光施設みたいなもんだ」
内部構造を記したMAPを確認しながら言うヒューゴ。
言われて周囲を見回してみればあちこち真新しい補修の後があったり、壁に順路の看板が掛けられていたりするのがわかる。
「じゃあ本格的な探索は2層から?」
「そうだ。そこからは駆除し切れてないヤバい生き物とかも出る。そういう時は悪いけどよろしく頼むぞ。なんつってもオジさんはバトルの方はからっきしだからな……」
頼りない事を言いつつグッとガッツポーズするヒューゴ。
……その腕は、というか全身は華奢で確かにお世辞にも荒事向きとは言い難い。
「まあ、頑張ります……」
苦笑するクリスティン。
そういう彼女は今回愛用の竜の牙を磨いで作った大剣は置いてきている。
荷物になるし迷宮内で戦うのに大型の武器は扱いにくいだろうと判断しての事だ。
代わりに持ってきているのは片手持ちのメイスと盾。共に以前聖堂騎士団に所属していた時の武装であり狭い場所の戦闘においては大剣より適している。
そんな彼女を見た後、ふとヒューゴは遠い目をした。
「今から数年前の話だ。3層への入り口が発見されたって噂が出回った」
「……え?」
クリスティンが見返すと無精ひげのエルフは複雑そうな表情をしている。
「界隈は一気に盛り上がったよ。なーんせ2層の捜索が本格的に始まってもう20年以上だ。業界には閉塞感つーか、行き詰まりを感じる空気が漂ってたからなあ」
腕を組んでフーッと長い息を吐くヒューゴ。
「……ところが、だ」
芝居がかった仕草でヒューゴは肩を竦めた。
「その噂の出所がわからねえ。誰に聞いても噂は聞いてるが実際3層にいったって奴はわからんときた。行った奴が隠してるとか、管理局が間に入って情報を遮断しただとか、当時はあれこれ言われたもんだ」
「結局、どうだったんです……?」
クリスの問いに両手を広げたままヒューゴは首を横に振った。
「わからん。オジさんが知ってんのはそこまでだ。その後何人か3層へいったって奴が出てきたらしいが結局全部騙り……デマだったらしい」
「あらまあ……」
肩を落としたクリスティン。
「ま、けどな……界隈の盛り上がりは相変わらずだったぜ。隠すんなら自分で行ってやろうってんでな。その行方知れずっつーお偉いさんの、なんつったっけ? ハインツ? そいつもそういう熱に当てられて地下を目指したんじゃないのかね」
「生きていればいいがな」
それまで黙っていたリューがそこで言葉を差し挟む。
場を一瞬沈黙が支配した。
「………………………………」
クリスティンは……黙っている。
その疑念はこの依頼を受けてからずっと彼女の胸にもあったものだった。
帰還の予定を10日以上過ぎても戻っていないというハインツ・ミューラー。
彼は……もう迷宮の中で命を落としているのではないだろうか……。
その不安に目を背けるようにしてこれまで口には出さないようにしてきたのだ。
「勿論その可能性もゼロじゃねえだろ。けどな? 現時点ではそこまで悲観したもんでもねえとオジさんは思ってるぜ」
「そうなんですか……?」
幾分かの希望を見出したクリスは目を輝かせた。
「ああ。なんせここに潜ってる連中はそこそこの数いるんだ。仮に死んでたとしたら遺体の回収は無理でも遺品の1つも持ち帰って知らせてやるのが探索者たちの暗黙のマナーだからな。それがねえっつー事はだ。少なくともまだ他のパーティーが誰も死んでる所を見てないって事だからよ」
「じゃ、じゃあ生きてるって事ですよね!!??」
詰め寄ってくるクリスの勢いに押されて若干仰け反るヒューゴ。
「い、いや……勿論誰にもわからん場所で死んでる可能性もあるから100%じゃねえけどよ。その兄ちゃんは初探索だったんだろ? そんなビギナーがベテランたちが誰もわからんような場所まで行けるもんかね?」
「よーっし!! 俄然やる気が出てきました!! さあ行きましょう!!」
鼻息荒くズンズン進んでいくクリスティンを呆気に取られたヒューゴが見送る。
「ああいう女だ」
その彼にリューが声を掛けた。
その赤い髪の男の言う通り、クリスティン・イクサ・マギウスとは自分のことより他人の事で必死になる女性であった。
「ああ。ま、変わりモンだが……いい子だわな。お前さんの彼女はよ」
「彼女……」
無表情のまま目を閉じて反復したリュー。
かと思えば再び開眼して傍らのエルフを見る。
「ラーメン食うか?」
「ここで!!??」
驚いて目を剥くヒューゴであった。
────────────────────────
道中、数度の休憩を挟みつつ歩くこと4時間半。
その間ヒューゴはずっと喋り倒している。
自分で言うだけあって中々のタフさだ。
内容はためになる考古学の話だったり下世話な話だったりもうごちゃごちゃの滅茶苦茶であり、聞いているクリスティンは話題ごとの落差に少々混乱気味である。
「お、もうちょいで2層への入り口だぜ」
順路の看板を見てヒューゴが背後の2人を振り返る。
「え、もうですか?」
1層で一夜を明かすようなつもりでいたクリスが驚く。
「オジさんたちがこうして最短距離で2層入り口まで来れるのも先人たちの苦労の賜物ってヤツよ。先達がここに辿り着くまで数年かかったんだぞ。感謝しながら先進むとしようぜ」
そう言いながらヒューゴは、これも近年の後付けのものと思われる鉄の枠で囲われた分厚い木製の扉を開いた。
ギギギ、と軋みながら扉が開いていく。
遠慮なくずかずかと中へ足を踏み入れるヒューゴに続いてクリスとリューの2人も扉を潜った。
「……へ?」
目の前の光景に呆気にとられるクリスティン。
そこは……言うなれば町の酒場のような空間であった。
広いフロアにはカウンターがあり、バーテンダーのような男がグラスを磨いている。
カウンター席のほかにテーブル席もありそこでは複数の集団が談笑しながら食事をしていた。
「お酒を飲むお店……?」
「だっはっはっは、まあ中継基地だからなここは。飯やら酒やら他にも色々揃ってる」
ヒューゴが視線で示した先にはいくつもの木製のベッドが並んでおり、そこで眠っている者もいた。
売店もあり携帯用の食料や燃料、探索のためのツールのあれこれや薬などが売っている。
「よう、ヒューゴじゃねえか」
「お前もとうとうロンダン遺跡デビューかよ。諦めないでよかったな」
顔馴染みなのかテーブル席の数人の男がヒューゴに手を振っている。
いずれも冒険家兼学者の精悍ながらも知的な雰囲気の男たちだ。
「おおよ、ついに来たぜぇ。ヨロシクな先輩方よお、だっはっは」
笑っているエルフはどこか照れ臭そうであった。
「軽く休憩していよいよ2層へ行くとするか」
「休憩は必要ない」
ヒューゴの提案を言下に否定するリュー。
「でもよお、この先ちゃんと休めるかどうかわからんぜ?」
「さっき休んだばっかりですからね。大丈夫です」
リューの言葉にクリスティンも同意する。
焦っても仕方がないのだが悠長にはしていられない事情がある。
「……そうか、そういう事ならもう出発するとすっか。あっちだ」
そう言ってヒューゴが指さした先には……。
「牢屋?」
頑丈な鉄格子でフロアが区切られている。
そしてその向こう側に下層への階段があった。
「あの鉄格子はな、防衛用だ。下から
ヒューゴが言葉を途中で止める。
俄かに階下が騒がしくなった。
慌ただしく数人が階段を駆け上がってきた。
冒険家と、おそらくはその護衛であろう戦士の2人の男。
両名ともに傷だらけである。歩くたびに床にぽつぽつと血の雫が落ちる。
局員が鉄格子の錠前を外すと2人は転がるように飛び込み床に身を投げ出した。
「……いっ、インセクトベアだ!! すぐ下にいる!! すまない、奥で遭遇したんだが逃げてここまで連れてきてしまった……っ!!」
冒険家らしき男のほうが手当てを受けながら喘ぐように叫んだ。
「
「厄介だな。こりゃ数日は潜れんか?」
冒険家たちが眉をひそめて囁き合っている。
インセクトベア……蟲熊とも呼ばれるこの大型の魔物は主に山野にいるのだが穴を掘って巣を作る習性があり地下で遭遇することもある。
その名の通り虫と熊を合成したような外見をしており、熊に似た剛毛に覆われた胴体に頑強なアゴを持つ虫そのものの頭部を持ち、6本の手首足首から先も虫そのものだ。尾にあたる部分に大きな虫の腹部が付いている。
実際のところは完全な蟲の魔物であり、胴体が剛毛で熊に見えるというだけで獣との合成生物などではない。
非常に大型であり体長は2,5mから大きなもので3m以上にもなる。
肉食で獰猛であり恐れることなく人も襲う。
力が強く鎧の上から殴打されても深刻なダメージを受ける。
また爪に毒がありこれが回ると麻痺してしまう。
手練れの戦士でも討伐隊を組んで相手にするような難敵である。
「……護衛が1人、途中でやられてしまった」
床に座り込んだままの冒険家は項垂れている。
「いきなり蟲熊かよ。幸先悪いなんてもんじゃねえぜ……」
ヒューゴの表情も沈痛であった。
するとリューが荷物を降ろすとスタスタと鉄格子に歩み寄る。
「開けてくれ。倒してくる」
「ええ!? オイ、待て待て待てって!!!」
慌てて駆け寄るヒューゴ。
「知らねえのかよ、蟲熊ってのはな……」
そのセリフを片手を上げて制する赤い髪の男。
「知っているし、問題はない。可能だから倒すと言っている」
「私も行きますね。鍵を開けてもらえますか?」
荷物を下してメイスと盾だけを持ったクリスティン。
局員とヒューゴは不安げに視線を交わした。
「あなた方が入ったらここは閉めます。そうなったらもう安全が確認されるまでは開けてあげられませんよ」
「それでいい」
局員の言葉にリューがうなずいた。
局員は諦めたように嘆息すると鍵束を取り出す。
そうして一同が不安そうに見守る中、鉄格子の戸は開錠されリューとクリスティンの2人が2層への階段を下っていった。
「……2匹いるな」
階段を下りながらリューが静かに言った。
彼の感知のオーラが視界に収める前から既に階下の魔物の存在を捉えている。
「じゃあ1匹は私が相手をしますね」
「頼む。無理そうなら耐えていろ。1匹目を片付けたらやる」
2層に降り立った2人。
この付近にはまだ明かりがあるが1層に比べるとかなり薄暗い。
その通路の暗がりの向こう側に大きな何かが潜んでいる。
しゅるるる……。
うすら寒い風に乗って魔物の立てたものか、紙か薄い布を床に擦るような音が聞こえてくる。
そしてそれは巨体に見合わぬ速度で飛び出してきた。
ギギィィッッッ!!!
金属が軋む音にも似た不快な鳴き声を放ちつつ蟲熊がその剛腕の鋭い爪を振るう。
臆せずに前に出たリューが紙一重でその一撃を回避すると胴体に数発の拳打を叩き込んだ。
グラグラと揺れる蟲熊。
しかしその後に魔物は体勢を立て直すと再びリューに襲い掛かってきた。
蟲熊の厄介さの1つがこの痛みに対する鈍感さである。
腹に穴を穿たれようが四肢を失おうが怯まないのだ。
そしてその1匹目の脇を駆け抜けて2匹目がクリスティンに肉薄する。
1匹目同様に前足を振りかぶってクリスに襲い掛かった魔物。
「うわわわわ!」
言葉ほどには動揺していないクリスティン。
彼女は真正面から爪を盾で受け止める。
ずん、と重たい衝撃がきて全身に軽い痺れが走った。
並の戦士ならばガードの上から腕の骨を折られている所だ。
「いった~……力が強いですね……」
顔をしかめて呟いたクリス。
その前方ではリューが跳躍し虚空で体を半回転させると天井に両足を当てた。
眼下には魔物の巨躯……その無防備な首筋が見えている。
胴体へのダメージに強いのならば……。
リューの瞳が鋭く光った。
「……えいやっと!」
爪を受け止めたままの盾を力任せに横に払ったクリスティン。
大きく前足を開いた体勢で魔物の上体が泳いだ。
そこを振りかぶったメイスで撃つ。
上空からの奇襲の蹴りでリューが魔物の首を落とすのと、クリスティンがメイスで魔物の頭部を打ち砕いたのはほぼ同時であった。
仰向けに倒れた2体はしばらくの間じたばたともがいていたがやがて動かなくなる。
顔を見合わせた2人。
クリスティンがほほ笑むとリューは表情を変えずに無言でうなずいたのだった。
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