第10話 G登場

「これでひとまず安心ね」

 カレンは、そう言うと胸をなでおろした。そして、渡辺を見て、

「おじちゃん、ワープ装置ってすぐできる?」

 と尋ねた。

「倉庫に部品は置いてあるから、あとは組み立てるだけだな。二、三日もありゃできるよ。で、何に使うんだい?」

「あと一人、時空の狭間に送り込んでやろうと思ってるの。こいつは永遠に出られないようにしてやるわ」

 カレンの青い目が不気味に輝いた。小学校六年生の少女の目ではない。

「もしかして・・・そいつはGじゃないだろうな」

「ピンポーン」

 渡辺の背筋に悪寒が走った。

 怖い、恐ろしい、恐怖だ。Gから逃げるどころか、反撃を試みるつもりらしい。しかも、Gを死よりも過酷な状況に追い込もうとしている。この少女は何者だ。スーパーモンスターだ。逆らってはいけない。

「渡辺のおじちゃん、ワープ装置の組み立てお願いね」

「はい、畏まりました。すぐに取り掛かります。ちなみに、ワタナベと呼び捨てていただいて結構です」


 Gは、なかなか襲って来なかった。SPが前後左右を歩き回るので、600メートルの距離での射撃は困難になり、標的に近いアジトを探す必要に迫られたのだ。

 Gが新たなアジトを探している間にワープ装置は完成した。二日ほどかかったが、スイッチを入れると何の不具合もなくスムーズに稼働した。

「ワープ装置、完成しましたので、御検分をお願いします」

 渡辺とポールが、ワープ装置を研究室に運び込んできた。

「おじちゃん、ありがとう。そこに置いといて」

「はい、畏まりました」

 渡辺は、ワープ装置を設置すると、

「一応、使用方法をお教えします」

 とカレンに言ったが、

「分ってるからいいわ。それより、そのワープ装置を使って駅裏の白猫ベーカリーの金時クリームパン三つ買ってきてよ。お腹すいちゃった」

「畏まりました。しかし、駅裏だったら五分も歩けば着きますので、ワープをするほどのことも……」

 渡辺は、稼働はしたものの試運転はしていないので、正直のところワープはしたくはない。とりあえずは、なにか物を移動させておいてでないと心配なのだ。

「何言ってんのよ。Gは注意深くこちらを観察しているのよ。同じ処から同じ人間が二人出てきちゃまずいでしょ。アンドロイドのことがばれちゃうじゃない」

 カレン様のお言葉、もっともでございます。

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