第8話 カレンの作戦
結局、G対策は、カレンに任されることになった。カレンは、CIAのGに関するデータをすべてダウンロードし、保存した。
「分析に三時間ほどかかるかもしれないけど、その間はこの部屋を出ないでね。もう狙ってるかもしれないから」
研究室の窓にはすべてカーテンが閉められ、ドアには鍵が掛けられた。Gを相手には、こんなことは気休めにもならないのだが。
カレンは、しばらくの間パソコンを叩いていたが、やがて、
「終了」
と言うと、明るい笑顔を見せた。
「三時間はかかると思ってたけど、Gって男、意外と単純ね。分かり易くていいわね。昔かたぎって言うか、今の日本では絶滅危惧種だよ。でもね、そこが欠点ね。それに数年前から仕事に演出が絡んでるわね」
ほんの30分程で結論は出たようだ。
人類史上最高峰の頭脳、知能指数300ブラスαの少女と、せいぜい180程度のGとでは、人間と猿くらいの違いがあるようだ。
「ママ、とりあえずは念のため、別の世界に行ってもらうわよ。渡辺、あなたは、スバルサンバーを点検しておいてね。ジュリーa、あなたは、そのままママになっておいて頂戴」
カレンは、てきぱきと命令を下し始めた。
「ワタナベだと……… おい、こら、子供が大人を呼び捨てにするな!」
渡辺は、小学校六年生に呼び捨てにされて、心中穏やかではない。
「文句は後で聞くから、今は言われたことをやりなさい」
「くくくく………、クソー」
それにしても、母子でこんなに似るものか。性格、態度、口のきき方まで……、そっくりじゃないか。初めて会った時、「初めましてカレンです」なんて可愛く挨拶してぺコンと頭を下げた幼い姿が思い出された。『ゆとり教育』なんてやつが、こういうガキを育てたんだ。これからの日本は教育を第一に考えんといかん、特に道徳教育を復活させんとな、などと思っている暇もなく、渡辺はカレンに急き立てられるようにスバルサンバーが停まっているガレージに追い立てられた。
カレンの計画は、まず、ジュリーをこの世界から隠すことだった。この世界に存在しなくなれば、いかにGだといっても殺すことはできない。存在しない人間を殺すことは不可能だ。
スバルサンバーのワープシステムを使ってワープをさせる。だが、出口をふさいでおい
て別の空間に出られなくしておくというものだ。つまり、時空の狭間の中にスバルサンバーごとジュリーを閉じ込めるのだ。
「そんなことできるのかよ?」
渡辺が訊く。
「理論的には十分可能ですね」
ポールは、うなづく。
「待ってよ。私、そんなとこに閉じ込められるの嫌よ。出てこれなくなったらどうするのよ」
ジュリーは半泣き状態だ。
「大丈夫よ、ママ。出口開けたらすんなり出てこられるわよ」
カレンはあっけらかんと言う。
「この子、いったい何者?」
ジュリーは、初めてわが子カレンが自分を抜いて人類の頂点の頭脳を持っていることを認識した。
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