第21話 あの時と全然雰囲気が違ってた
さて、帰って早々に女風呂に入っていた
「このド変態鬼畜男がっ!」
などと俺は罵声を浴びせられていた。
まぁ、浴びせていたのは今回全くこれっぽっちもカスリすらしていないジャンヌだけなのだが。
そもそも、俺何も悪くないぞ?
だって、向こうのキャンプ地にある風呂に入ろうとして風呂の扉を開けただけなんだぜ?
「夫が不貞行為を働くなんて由々しき事態」
「これは妻として不徳の致すところ」
「つまり、私が侃三郎と珪に裸を見せる必要がある」
「それでお
そんな意味不明な事を言ってユウキは皆の前で脱ぎ出そうとしたが、当たり前の如く近くにいた
というか、俺はこいつとは結婚どころか‥以下略。
「まぁまぁ、そのくらいで…」
関係者の葉月はそう言ってジャンヌとユウキを落ち着かせようとしてくれていた。
顔は少し引きつっていたが。
「そうですわね。私達はちょうど湯舟に浸かっておりましたし、見られたと言っても肩から上だけですし…」
「むしろ、蒼治良さんの方が………」
そう言った直後、綾香は赤面して黙ってしまった。
きっと、俺の息子の事を思い出してしまったのだろう。
あぁ、息子と言ってもだな‥以下略。
「まぁ、良いではないか。蒼治良殿も悪意を持ってやったわけでは無いのだしのぅ」
「ですねぇ。当の二人が許している以上、僕達がどうこう言う必要はないかと思います」
「まぁ、それはそれとして、後でじっくりと話をさせて欲しいのだが」
「ですねぇ。じっくりと」
俺の左右でそれぞれ肩をポンと叩きながら耳元で
ちなみに、体育館の裏に後で来いや、的な展開では無く、俺の見た内容を細かく知りたかっただけで他には何もなかったぞ。
というか、二人とも意外と純なんだな。
ムッツリとも言えるが。
そんなわけで、当事者が全く問題にしていないということで、俺は無罪放免釈放された。
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西暦2002年6月某日 日本
小雨の降る中、それは行われた。
会場は
俺が何故呼ばれているのかと言えば、百合小路家が創立した会社の孫会社に俺が勤めているからだ。
勿論、勤めているという理由だけで呼ばれたわけでは無い。
ハッキリした理由は知らされていないが、どうも俺の事を上の人が気に入ったかららしい。
正直、全く乗り気がしなかったのだが、上の人の意向であれば断るわけにもいかない。
そんなわけで対面したのは、年はまだ17だという少女だった。
おいおい、正気なのか?
俺は今年41で、魔法使いになってからでも久しい男だぜ?
しかも、施設出の両親の素性すら分からない奴なんだぜ?
そういや顔写真やプロフィールを見せられたような気もするが、元々乗り気でなかった俺は『はい、承知いたしました』とろくに見もしないままやって来ていたのだった。
まぁ、ともかく対面した彼女は非常に美しかった。
17とは思えない程の落ち着きがあるし、仕草の一つ一つとっても非の打ち所がない。
流石は上級国民様だ。
だからこそ、尚の事、何故俺が選ばれたのか分からなかった。
そりゃ、仕事でかなりの成績を上げてはいたと自分でも自負するが、それだけのことだ。
そのうちに、後は二人でどうのこうのって事になって、庭で彼女と二人っきりになった。
つか、広い邸宅だな。
「あの…どうして私が選ばれたのかご存じでしょうか」
俺は素直に彼女に聞いてみた。
彼女は目を見開いて心底驚いていた。
そして、そっぽを向くとぷるぷると何やら震えていた。
それもほんの少しの間のことで、程なく俺に振り向いて口を開いた。
「申し訳ございません。それは、私も存じ上げておりません」
「ただ…今回の一件は、私が原因で急遽セッティングされたのだと思います」
どうやら、彼女には想い人が居るらしいのだがその人物は彼女の家とはライバル関係にある家で、二人が結ばれることを両家とも快く思っておらず、特に彼女の現当主がその事に激怒したらしい。
つまりは、引き離す目的で今回のお見合いとあいなったようだ。
それなら他にも色々居そうなもんだが、急遽ってところがミソなのか?
だから、俺みたいなのでとりあえずお茶を濁しておくことにしたのか。
「それだけが理由では無いと思います」
「おばあ様は、そのような安直なものの考え方で人は選ばない方ですので、本当に貴方のことが気に入っておられるはずです」
「そうでなければ、此処にお招きするわけが御座いません」
「なぜなら、今では別邸となっておりますが、おばあ様が生まれ育った場所ですので…」
どうやら、俺も年貢の納め時なのかも知れない。
いや、ぶっちゃけ左うちわだし、断る理由なんて皆無だ。
だが‥‥。
「
と言って俺に見せた彼女の笑顔に、俺は酷く胸が突き刺される思いがした。
結局、この縁談は俺の方から断った‥‥そして、同時に俺は仕事を失う事になったのだった。
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聖暦2042年12月18日 サイショの村
「夢か…」
窓から入り込む朝日に目が覚めた俺は、夢の内容を思い出していた。
「…道理で、最初から俺に対する好感度が高かったわけだな」
流石にみんな気付いているだろうが、俺がお見合いした相手は綾香だぞ?
気付いていたよね?
まぁ、気付いていようが気付いていなかろうが話は進めるぜ。
毎日の日課である朝立ちが終るのを待ってから、俺は立ち上がる。
そして、ユウキの小動物の如き動きで持ってくる服を着ると、部屋の扉を開けて廊下へと足を進める。
「今回、私たち完全にスルーされてますねぇ」
「陰から夫を支えるのが妻の役目」
そんな二人の台詞を背に、部屋の扉を閉めた。
廊下を少しばかり歩くと、ちょうど綾香が部屋から出て来た。
「あら、蒼治良さん。おはようございます」
「おはようございます。綾香さん」
こうして、二人で並んで食堂まで歩いていく。
「いきなりで
その台詞を聞いた綾香は少し苦笑いをしながらため息を吐いた。
「やっぱり覚えて居られなかったんですのね」
「すみません。でも、あの頃はまだ髪もそんなに長くなかったですし、美しかったとはいえ少女、という感じがしましたもので」
俺は頭を掻きながら、腰を曲げて肩をすくめた。
「美し……こほん。まぁ、私もあの頃は若かったですものね」
「今も十分若いじゃないですか」
「あら、そうでしたわね」
「でも、蒼治良さんも随分とお若くなられたようで」
綾香は、少しばかり小悪魔的な笑みを浮かべながら言う。
「そうですね。まさか、また人生をやり直すことになるとは思ってもみなかったですよ」
しかも、異世界で。
そりゃあ、ずっと異世界で生活していたいと思ってたから、現実のものになって嬉しいが。
まぁ、思っていたのと随分違ってはいるのだが。
「それはそうと、俺が元の会社に戻れたのって綾香さんのおかげですよね?」
「どうして、そう思われるのかしら」
「何となくです」
「でも、本当に助かりましたよ。あれから3年もの間ぷーでしたからね」
「…まぁ、私のせいですのでお気になさらずとも結構ですわ」
「それよりも…」
「それよりも?」
「先ほどから、後ろでユウキさんが見ておりますわよ」
「あぁ…」
背後を振り返ると『家政婦は見た』みたいな感じで、ユウキが壁から顔をのぞかせていた。
「では、私は先に参りますね」
そう言うと、綾香は一人去って行く。
そして、俺の手招きでパタパタと足音を立てながらやって来たユウキと一緒に食堂へ向かったのだった。
「あれ?リョクは?」
「おっぱい風呂に入りに行った」
相変わらず締まらない終わり方だな。
「つづく」 by ユウキ
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