第11話 サムスギ

季節は秋も過ぎ去り、とうとう冬になった。


「おぉ…すんげー寒いっ!」


朝起きて布団から出た直後の開口一番の俺の言葉である。


「ここに手を入れると良い。あったかい」

「おお、すまんな。サンキュって!そんなこと出来るか!!!」


危うく、ユウキの『ちっぱい』の中に手を入れるところだったじゃないか。


「あぁ!惜しいっ!もうちょっとだったんですがねぇ」


チッという舌打ちと共にそう発言したのはリョク。


「うん、凄く惜しかった。ナチュラルに出来たのに」


ねぇ?ってな感じでユウキとリョクは首をかしげつつも、何かに勝った感を漂わせていた。

まぁ、そんないつもの朝の寝起きの出来事はともかくとして、この地域は冬になると雪もそれなりに降るため今日は…というより今日雪かきから一日は始まった。


「おいっ!貴様っ!何をグズグズしている!もっとキリキリと働けっ!!!」


キリキリ働けとはどういう意味なんだって?

あぁ、そうか。

この言葉は通用しない地域もあるのか。


それはだな、ほんの少しだろうが休もうとするんじゃねー手を動かせ手をっ!的な意味合いだ。


とまぁ、そんなパワハラをジャンヌから受けつつ俺は学校の屋根の上から雪を落としていっていた。

その雪を下にいる百合小路綾香ゆりがこうじあやか、同葉月、宇佐千里うさせんりたち女性陣が一輪車のネコに積み込み、そのいっぱいになったネコを豪渓寺侃三郎ごうけいじかんざぶろう熊猫ぱんだ燒梅しゅうまいが運動場まで運び、その雪を最後は豪渓寺珪ごうけいじけいの火炎魔法で蒸発させるのである。


ん?一輪車のネコって何だって?それはだな、工事現場とかで一輪車で積み荷とかを運んでいるのを見るだろ?アレの事だよ。

とまぁ、それぞれの担当がそれぞれの仕事をしている。


ちなみに、屋根から雪を落とす作業は俺とジャンヌの他にユウキと赫連拇拇かくれんももも担当しているのだが、あの二人は技能スキルでトーフのようにストーンと綺麗に屋根から落としていっていた。


『その技能スキル、俺にも教えてくれよ』とユウキと拇拇に頼んだところ『わかった』『いいにゃよ』と快い返事をくれたのだが『ここをこうしてスパッとやる』だとか『ここにわずかな切れ目があるのが見えるにゃ?そこをフッと力を入れるとストーンと落ちるにゃ』という、感覚でこうする的な事ばかり言うので結局得られるものは何も無かった。


ちなみに、俺に対してキリキリ働けとか言っていたジャンヌだが、俺の近くでぜぃぜぃ言いながら雪を落としている。

なお、落としている量的にはユウキ=拇拇>>越えられない壁>>俺>ジャンヌである。

つまりなんだ、偉そうに言っておきながら俺より仕事量は少ないのである。

そりゃあ、あれだけの巨大なマシュマロを身に着けていれば邪魔にしかならんわなぁ。


「貴様!また…はぁはぁ…いやらしい…はぁはぁ…事を考えて…はぁはぁ…いたなっ!!!」


5mも離れているというのに、なんで分かったんだろう。


「気のせいだ」


「嘘を吐け!貴様のおぞましい視線を感じた。間違いない!」


うーん、どれだけ感度の良いんだろうか。

今度、何メートルまでいけるか実験したいところではある。


「ともかく、疲れてるんなら休んだらどうだ」


と、親切心で言ってやっても『うるさい、黙れ。お前の指図など受けん!』と引き続きぜぃぜぃ言いながら雪を落としていっていた。


そんなこんな1時間ほどすると、学校の屋根は綺麗さっぱりと雪が無くなった。

この地域は日が昇っている間は殆ど雪は降らず、夜から朝にかけて盛大に降ってくれる特殊な地域らしく、つまりは次の日の朝までは何もしなくていいという事である。


あぁ、ちなみにリョクはこの間ずっと千里の『おっぱい風呂』の中でヌクヌクしていたのは言うまでもない。


「皆さん、お風呂が沸きましたぞ」


そんな中、薪割り兼風呂沸かし担当の先生セヴァスティアンがちょうど俺達の前に現れた。


「やったにゃ。それじゃあ風呂場まで競争にゃ」


言うが早いか拇拇が駆け始めた。

そんな彼女に続いて、ユウキ、燒梅、千里も走り始め『ちょっとお待ちになって下さいまし』と言いながら綾香も走り出し葉月と珪もそれに続いた。

いつもはお嬢様感を前面に押し出している綾香だが、こういった競争は好きらしく本気で駆けて行った。


「ほれ、女性をエスコートじゃ」


こういう競争にはあまり興味のない侃三郎だったが、それだけ言うと俺の背中をかなり力を押さえて叩いた後、ドスドスと駆けて行った。

そんなこと言われてもなぁ…絶対に拒絶するのは目に見えているんだが。


「うるさい!貴様の施しなど受けん!」


ほらな。

壁にもたれ掛かってグロッキー状態のジャンヌであったが、俺の差し出した手を跳ね返す力はまだあったようだ。


「まぁまぁ、そう言わずにジャンヌ殿」


ほっほっほ、といつもの笑みを浮かべながら先生はジャンヌの右側で肩を貸した。

俺は、再び拒絶されない事を祈りつつジャンヌの左側で肩を貸した。

どうやら、先生に言われると素直になるらしく拒絶はされなかった。

本当に分かりやすいやつだ。

そんな事を思いながら風呂場の入口まで彼女を運び終え、後を女性陣に託し終えると二人で男風呂ののれんをくぐった。


「ちなみに、先生一人でお姫様抱っこ出来ますよね?その方が彼女も喜んだのでは?」


との俺の問いに『ほっほっほ、何の事やら分かりかねます』とはぐらかされてしまった。

ちなみに、この学校において一番強いのは先生で俺達が束になっても敵わないくらい強い。


とまぁ、そんなこんなで風呂で体を綺麗にしてほかほかになった後、調理を担当していた丸毛小春まるもこはるお手製のカレーを大いに頬張ったのであった。


え?お風呂シーンはって?おいおい、何度もやるもんじゃないだろ?

だから、後は各自想像して楽しんでくれ。

あ、それはそうと。

ジャンヌを運んでいる最中、俺の乳首にすんげー柔らかいものがぽよんぽよんって当たって来てさ、めっちゃ良かったぜ。


そして、午後と相成った。

ちゃらららちゃっちゃっちゃ~。

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