第10話 恥ずかしい台詞禁止

日曜の朝がやって来た。


流石に日曜の朝まで、ユウキやリョクが俺の朝の生理現象ASADACHIを見にやってくることは無く、俺は自分のペースで生理現象が終わるのを待ってから起き上がることが出来た。

部屋の窓のカーテンを開けると、それはもう青空が広がっていてテンションも爆上がり。


「ふはははははは、この俺を倒すだとっ!?そんな事がお前ごときに出来るとでも思ったかっ!」


「そんな事はやってみなければ分からないっ!俺は必ずお前を倒して世界を救うんだっ!!!」


「面白い。ならば、やってみるがいい」


俺は自分の部屋で一人二役で演技をする。

独りぼっちだった老後の際に、俺が家族を持つ前の唯一の楽しみのとして身に着けたものだ。


「ふっ…なかなかやるではないか」


「では、その気概に応えて俺の最強にして最大の魔法を見せてやるとしよう」


「くっ!…まだ、そんなものを残していたというのかっ!」


「ふふふふ…切り札というものは最後まで取っておくものなのだよ、勇者…」


俺は手を天にかざし呪文を唱え始めた。


「深淵をつかさどりし閻王エンマベルよ、魔王たるわれディアブルが命ず。地獄の業火たる炎獄嵐雨フレイムヘルストームレインって勇者ソジーロを焼き尽くせ!」


すぐさま俺は勇者になりきり、それを受けた体にして絶叫の声を上げる。


「ぐっ………ぐあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


そして、すぐさま魔王に戻る。


「ふははははははははは、もっとだ!」


『塵も残さず焼き尽くしてくれるわっ!!!』


ん?あれ?それ俺、今言おうとしてたやつなんだけど。

俺は声のする方向、つまり、後ろを向いた。

すると、そこには小型生物合法ロリのユウキとその肩に乗ってユウキと同じポーズをとってドヤ顔をしているリョクが居た。


「………いつからいたんだ?」


蒼治良そうじろうが目を覚まして、お●ん●んが収まるのを待っているあたりには少なくとも存在していたと答えてみる」


起きて直ぐの時にはもういたらしい。


「そういえば、お前『迷彩カモフラージュ』のスキル持ってたっけ…」


「ちなみに、起きるまでずっと添い寝してたから、本当は深夜の1時以降この部屋に居た」


ユウキはふんすと鼻息を鳴らし、無表情ながらも明らかにドヤ顔で言う。


「…まぁ…それは聞かなかったことにしよう」


ともかく、完全に興が冷めた俺は着替えを終えると部屋を後にした。


て・て・て・て。


その日の午後、俺は出掛けることにした。

そう、次の週に食べるお菓子とか、その他色々のために。

まずは、学校の近くにある教会もどき。


「貴方はー髪をー信じますかー?」


シスター服を身にまとっているものの、そのエロい体までは隠せないデアボラはいつもの言葉のような言葉で出迎えてくれた。


「字が違ってますよデアボラさん。あと、髪は信じたいです」

「それはともかく、頼んでおいた物は出来上がってますか?」


「もちろん、それはイエースでーす。あ、古の預言者の事ではありませんよ?」

「これがその品物でーす」


デアボラは漆黒の小瓶を棚から取り出して、お店のカウンターテーブルにそれを置いた。


「まさか、本当に出来るとは…ありがとうございます」


「イエイエー。お金になるなら何でもしますよー。あ、でも、エロいことはしませんよー」


俺の目が彼女の胸にいつも熱く注がれているのを見透すかしているかのように言う。

何故だ、どうして分った!?


「蒼治良さん、蒼治良さん。それ誰もが知ってますよ?」


即座にリョクのツッコミが入る。


「えっ!?マジでっ!?」


「多分気付いてないのは、綾香さんと葉月さんくらいなもんですよ」


まぁ、そらそうだろう。

俺は彼女達に欲情の目を向けてないからな。

向けたら向けたら、違う所から殺気が来そうだし。


「ちなみに私はいつでもどこでもOK牧場さ~いぇ~」


とかなんか最後ラッパーの物まねみたいな事したユウキはスルーして、俺はそれを購入した。


て・て・て・て。


そして俺達一行は村に到着した。

立ち寄るのは、ボッタクル商店。


「アイヤー、蒼治良サン。ごきげんよう」


タイが曲がっていてよ的な『ごきげんよう』とは全く違う『ごきげんよう』で出迎えてくれたのは、相変わらず見た目だけは怪しい店主の爨欺さんぎ


「あれ?今日は蘊蘊ゆんゆんちゃん居ないんですね」


「あー、蘊蘊は今お昼休憩中ネ」


「そうなんですね。ところで、例の物のなんですが…」


店には俺達しかいないというのに、何故か店主の耳元でささやいた。


「もちろん出来てるアルヨ。ちょっと待つヨロシ」


そう言って店主は店の奥に消えて行ったが、程なく戻って来た。


「これアルヨ。どうかネ」


店のカウンターテーブルに置かれたのは漆黒の剣。


「イワノフサンに無理言って作ってもらたヨ」


そうだろう、そうだろう。

何しろこいつは…。


「帰りに立ち寄って、お礼を言わないといけないですね」

「ともかく、これ頂きます」


「ハイハイ。じゃあ、包むアルネ」


カウンターテーブルの裏で店主は丁寧に、それでいて迅速な手さばきで漆黒の剣をで包んでいく。

そして店主がレジを打ち始めた頃、どっさりと商品の入ったカゴがカウンターテーブルに置かれた。


「おぉ、お菓子を見繕ってくれていたのか。サンキュー」

「でも、こんなに食わないぞ?」


という俺に。


「この中の8割は私たちの分だから問題ない」


「ですです」


ユウキとリョクの二人はふんすと鼻息を鳴らしてドヤ顔で親指を立てる。


「…後で清算するからな」


という、俺の言葉に二人の非難の嵐が舞ったが、それをスルーしながら店の勘定を済ませた。

店を出た俺達は鍛冶屋に寄ってイワノフにお礼を言った後、まりも食堂でお茶をしたのち帰路に就いた。


て・て・て・て。


そして、現在部屋の中。


帰りの最中も二人はぶーぶー文句を垂れていた。

仕方が無かったので、今回は俺のおごりにしてやると言うと途端にほくほく顔へと変わり、二人は菓子類を持ってユウキの部屋へと入って行く。


「…ったく、とんだ散財になってしまった」


ぶつぶつ言いながら、俺は自分の部屋に入るべくドアの手前で立ち止まる。


ぴと。


二つの小さなマシュマロの感触が尻に広がった。

どうやら、単に菓子を置くためだけに部屋に入って行っただけのようだ。

そして、俺の部屋に入って早々ユウキは口を開く。


「その木剣・・何に使うの?」


バレていたのか。

仕方が無いので、ネタを明かすことにした。


「これはだな…まずここに漆黒の剣があります」


「うん」


「で、この剣の刃の腹に教会で買った液体を一滴垂らします」


すると、どうしたことでしょう。

剣の刃全体が禍々しい黒いオーラで包まれるではありませんか。


「どうだっ!」


俺はドヤ顔でそれを天に掲げる。


「これこそ魔剣………そう、魔剣ディアブルだっ!」

「ふっふっふっふっふ」


そして、不敵な笑みを浮かべる。

正直、引かれると思ったのだが意外にもユウキには好評だった。


「カッコイイっ!」


そう言って、目を輝かせながら彼女は俺の顔を見つめた。


いやん!止めてっ!そんな純粋な目で俺を見ないでぇっ!


ちなみに、リョクは俺の期待どおり『うわぁ…2万エルをこんな無駄な事に使ったんだ…』みたいに残念な人を見るような目で見ていたのであった。

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