第47話 パーティも盛り上がるけどパーティの準備も盛り上がるよね。

「さぁ、みんな! 今日はとても大事な日だよ!!」


 ある日の風紀委員活動室。

 今日は、いつもより盛り上がっていた。


「そうですね! 先輩!!」


「お、結衣くんは分かっているみたいだね。信長くんは?」


 今日も今日とてフライを読んでいた信長は、突然のフリに固まる。


「え? 今日? あー、フライの発売日とか?」


「ちっがーう! 今日はイリスくんが退院してくる日でしょ!!」


「あー、そうだった気がするぞ!!」


 もう、と言いながらミラン先輩は、しばらく使っていないであろうホワイトボードを取り出してきた。


「さぁ、みんな。今日はイリスくんにサプライズをしようと考えているんだよ。」


「いいですね!」


「てことで、今日の仕事は退院おめでとうパーティだ!」


 ミラン先輩は、ホワイトボードに字を書出す。


「じゃあ、まずは……、イリスくんの好きな食べ物でも用意しようか。誰かイリスくんの好きな食べ物を知ってる人!」


 シーン。


「知ってる人!?」


 シーン。


「おーい、誰も知らないの!?」


「我、分かるかもしれないぞ!」


「お、なんだい!?」


「金平糖だ!」


 いや、それは信長でしょ!

 というツッコミが隣に座っている結衣から入った。


「まぁ、じゃあ煎餅を用意しておこう!」


 と、ミラン先輩が言った。


「やった!」


 と、信長が言った。

 え、やったって言ってたよね。君が食べたいだけだよね!!??


「ここは、妥当にピザとかでいいんじゃないですか? なんか、パーティっぽい。」


 と、結衣が言う。


「それ、名案だね結衣くん。」


「ありがとうございます。」


 ミラン先輩は、次々とホワイトボードに書き込んでいく。

 そんな様子で、イリスの退院パーティの準備がされていった。




――――――――――




 そして、イリスが退院する時間になった。


「お世話になりましたァ。」


 イリスは、病院の人達に挨拶をして病院を出た。

 きっと、みんなお迎えに来てくれてるんだろうなァ、と思いながら。


 だが、病院を出たイリスは驚く。


「だ、誰もいないィ!?」


 そんな馬鹿なァ。

 普通、退院するって分かってるなら迎えとか来てくれるものじゃないのォ?


 イリスの迎えに誰も来ていない理由。

 それは、みんなパーティの準備で忘れていたからだ。


「みんな酷いなァ。それとも仕事でも入っちゃったのかなァ。」


 などと思いながら、イリスは自分の寮を目指した。


「てか、もう夜なんだァ。」


 夕方に病院を出発したイリス。

 松葉杖を使いながらゆっくりと寮に向かっていたので気がつけば、辺りは暗くなっていた。


「意外と寮って遠いのねェ。」


 やっぱ、ミラン先輩だけでも迎えに来て欲しかったァ、と心の中で思いつつもゆっくりと歩くイリス。

 そんなイリスの前に1つの男の人影があった。


「ターボン学園のイリスであっているか?」


「えェ、あってるわァ。」


「そうか。ならば。」


 男はそう言うと、腰から刀を抜いた。


「お手合わせ願おう。」


「ごめんなさいねェ、今怪我してて出来ないのォ。また今度にしてくれるゥ?」


「好都合だ。」


 嫌な予感がしたイリスは、松葉杖をその場に捨て利き手とは逆の手である左手で刀を抜いた。


「先日はお世話になったな、風紀委員。」


 月の光のおかげで男の顔が見えた。


「あなたはァ、キブカ村にいた事件の犯人じゃないィ!」


「その通りだ!」


 その瞬間、暗かったはずの周りの景色が一瞬で花畑のように明るくなった。


「前みたいな攻撃ィ?」


 たしか月の反射を利用した攻撃だったようなァ。

 と、思いながら警戒する。


 だが、男は予想外の攻撃を始めた。


「全然違うよ。」


 男は刀をイリスへ向けた。

 その刀は、蒼く輝いていた。


 そう思った時、空に浮かんでいた月が蒼くなった。


「何が起きてるのォ。」


 刹那、イリスはその場に倒れた。


「フフ、ありがとな風紀委員。」


 男は、地面に倒れたイリスに刀を向けた。


「この『蒼月華そうげつか』の餌となってくれて。」


 次の瞬間、蒼月華と呼ばれた男の持つ刀の影がモンスターのような影へと変わった。

 その影から花のツルのような物が延び、イリスの身体に突き刺さった。

 そして、イリスの血を吸っていった。


「さぁ、次はあの結衣という奴かミランとかいう奴のどちらかだな。」


 ある程度の血を吸い取り終えると、男は蒼月華を鞘に戻した。


「織田信長、貴様は最後のお楽しみだ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る