第22話 人の話はちゃんと聞け。
「さてと、本日もボクたちに依頼がやって来た。」
「はぁ、またですか? そんなに需要ありますかね。」
「需要があるのだから、こうやって仕事が来るのだろ?」
「まぁ、そうですけどね。」
何らや結衣とミランが言い争いをしてるぞと、どこか他人事のように聞いている信長。
「あ!」
だが、信長はあることを思い出した。
「どうしたの? 信長。」
「忘れ物をした。」
「は?」
「じゃっ!」
信長はそう言うと、活動部屋から出て行ってしまった。
「信長くんって、気分屋な人だよね。」
と、ミラン先輩が呟く。
どうやら、ミラン先輩は早くも信長の本性に気がついてきたたようだ。
「それで、先輩。依頼ってなんですか?」
「それは、これだ!」
ミラン先輩は結衣に紙を見せた。
「えーっと、研究中のモンスターが脱走した。殺さずに連れてきて欲しい。モンスターはかなり凶暴なので気をつけてください。」
「どうだ? 少し手応えのありそうなクエストだろ?」
「いや、私たちって何でも屋か何かですか?」
「おっ、風紀委員の核心に早くも気がついたみたいだね。」
「......。」
ということで、結衣たちはターボン学園の研究棟の目の前にいた。
今回はイリスも一緒だ。
「凶暴なモンスターって何でしょうねェ?」
イリスがミラン先輩に質問した。
「ガーゴイルとかその辺じゃないか? 最近、ガーゴイルからゴーレムに進化させる実験をしているとかしてないとか、そんな噂を聞いたことがあるぞ。」
「そうなんですねェ。」
ガーゴイルとは石でできたコウモリのようなモンスター。
ゴーレムよりは弱いが、今回はかなり凶暴な様子。
油断をしていると危ないかもしれない。
「まぁ、研究棟の近くにいる気配はなさそうだね。」
「そもそも、ガーゴイルは空を飛べるので、足跡のような分かりやすい目印がないですからね。」
と、ミラン先輩と結衣が話した。
その時、イリスが研究棟の3階部分の窓ガラスに指を向けた。
「ねェ、あの割れてるガラスってェ?」
「多分、あそこから出ていったんじゃないかな?」
「じゃあァ、あの5階の窓ガラスが割れてるのはァ?」
「あれ、本当だ。2箇所割れてる。てことは、1度外に出て、もう一度中に入ったのか。」
結衣はそれを聞くと研究棟の入口に向かおうとした。
「待ちたまえ結衣くん。」
「なんでですか?中にいるってことは、被害が出るかもしれませんよ。早く行かないと!」
「落ち着きたまえ。このターボン学園はしっかりとしたセキュリティがある。ただの生徒は中に入れないんだ。」
「じゃあ、どうすれば!!」
「結衣くん、君は空を飛ぶことができるね。」
「え。あー【
崖から落ちそうになった信長を助けた時や学園まで行くために使った技だ。
本来、【
というのも、加減を間違えれば自分の足がなくなってしまうからだ。
それを躊躇なく使ってる結衣は、恐らく頭のネジが数本外れているのだろう。
「それを使って、君が5階まで飛んで割れた窓ガラスの所から中に入るんだ。」
「わ、分かりました。」
結衣は魔力を放出させた。
「【
そして、結衣の詠唱とともに足元に【
「【
次の瞬間、結衣の体は大きな風の影響を受け、一気に上空へ飛ばされる。
その勢いで、結衣は5階の窓から中へ侵入した。
「さぁ、暴れまくる悪い子ちゃんはどこかしら!」
結衣はそう叫んだ。
そんな結衣の目の前に、1匹のモンスターないた。
それも、ミラン先輩が予想していた通りのガーゴイルだ。
「油断は禁物だから慎重に行こう。」
結衣がそう呟く。その時だった。
「あっ! 結衣! 結衣! 助けてくれ!」
聞き覚えのある声が結衣の耳に入ってきた。
「のぶ......なが?」
ガーゴイルがいる場所よりも奥に、信長がいた。
そして、その信長は新たなガーゴイルに襲われそうになっていた。
「嘘でしょ、2体もいるの!?」
迷う暇はなかった。
結衣は慎重にいくということを忘れ、床に着地した瞬間、一気にガーゴイルへと突撃する。
「【
結衣がそのように詠唱すると、指先にテニスボールほどの【
結衣はその指を、目の前にいる1体目のガーゴイルへ向けた。
「【
結衣がそう言うと、【
そして、その【
まるで散弾銃のように。
【
「あと、もう1体。いける!!」
結衣はもう1歩踏み込む。
「【
結衣の指先には【
「【
結衣の指先から放たれた【
「あぁぁぁぁぁぁぁ! 結衣よ、お前なら必ず助けてくれると信じていたぞー!」
「無事でよかったよ、信長。あ、てか信長の忘れ物って何だったの?」
「我の忘れ物とは今週の週間少年フライだ。」
「......あ、そうなんだ。ちなみに、研究棟には売ってないと思うよ。」
「えっ!?」
これにて、事件は解決した。
.....はずだった。
「結衣くーん! ボクは君に説教をしないといけないようだね!」
「え? なにか悪いことでもしました?」
「あのさー、あの依頼殺さないようにって書いてあったでしょ。君、なんの迷いもなしに殺したでしょ!」
「あっ......」
その日、ミラン先輩による長い説教が風紀委員の活動部屋に響いていたそうだ。
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