第21話 だいたい物語の主人公は初陣で大きな事件が起きるよね。
風紀委員として生活することになった信長、結衣、イリスは早速仕事をするために、風紀委員の活動部屋に集められていた。
「さてと。君たちに集まってもらったのは他でもない。」
招集される時に、仕事が来たぞ! と言っていた。
さて、どんな仕事なのだろうか。
「仕事が来たからだ。」
「先輩! それさっき聞きました!」
結衣が片手を上げてそう言った。
「ありゃ? 言ったっけ?」
ミラン先輩はそう言うと、委員長と書かれた立札が置かれている高価そうな机に向かった。
その机の上には多数の紙が乱雑に置かれている。
ミラン先輩はどこだっけ、と呟きながら1つの紙を取りだした。
「これだ!」
そして、信長たちにその紙を見せた。
その紙には風紀委員への依頼が書かれていた。
「えっと、部室の鍵をなくしたので探してください......。」
と、結衣が依頼の内容を読み上げた。
「その通り!」
「いや、そのくらい自分たちで探してくださいって言っといてくださいよ。」
「だが、このくらいの難易度のクエストが初陣の君たちには丁度いいだろう?」
「クエストって......。」
結衣はイリスと信長の顔を見た。
イリスは少し面倒くさそうな顔をしていて、信長は最初から聞いてない。
結衣はもう一度紙を見た。
「先輩、これ私たち全員で行く必要ないですよね?」
「まぁ、そうかもな。」
「じゃあ、先輩と私と信長で行きましょう。」
するとイリスが結衣に近づいてきた。
「私はどうしたらいいのォ?」
「帰ってきた時に、みんなで食べるお菓子でも作っててよ。」
「おーけェ。」
よし! とミラン先輩が言うと、支度をして活動部屋から出ていった。
「さぁ、着いてきたまえ!」
結衣はその言葉を聞くと、最初から最後まで話を聞いていない信長の腕を掴んで活動部屋を出て行く。
「え!? どこに行くんだ!! 頼む、どこに行くの!? 説明してぇぇぇぇ!!」
――――――――――
「さてと。この依頼主の部活は野球部らしい。今はサブキーで鍵をなくしたことを誤魔化してるらしいから大丈夫らしいが、それがバレるのも時間の問題だろう。なので、今すぐに見つけようと思う!」
「はいっ!」
信長に依頼の説明をすると、なぜか張り切って探し始めた。
「我は宝探しが好きなのだ!」
信長はそう言うと、無造作に辺りを探し始めた。
「さぁ、ボクたちも探すよ!」
「はーい。」
結衣もミラン先輩に続くように探し始めた。
〜3時間後〜
「信長ー、見つかったー?」
「......、」
へんじがない。ただの しかばねのようだ。
「おーい、信長ー?」
結衣は探すためにしゃがんでいたが、体を起こした。
「あれ。信長がどこにもいない。」
信長からの返事がないことに気が付いたミラン先輩も、体を起こして辺りを見渡した。
「信長くん、どこに行ったんだろうね。」
ということで、結衣たちの信長探しが始まった。
アイツ、飽きて逃げたわけじゃないよな、と思いながら探す結衣。
そして、15分ほど探したとき、聞いたことのある叫び声が結衣の耳に入ってきた。
「ギャァァァァァァァァ、誰か! 誰か! 助けてくれぇぇぇぇゑぇぇゑ!」
「......!?」
結衣は声のするほうへと走った。
しばらく走ると、ミラン先輩が結衣の肩を掴み、行動を止めた。
「何するんですか!!」
「この先は崖だから危ないよ!」
「でも、コッチから信長の声が......」
結衣は話しながら何かに気がつく。
同時に、ミラン先輩も気づいた。
「「信長、崖から落ちたんじゃ!?」」
結衣たちは走り出した。
そして、崖にギリギリなところで立ち止まり、そこから下を見た。
「あっ! 結衣! ミラン! 助けてくれぇぇぇぇ!!」
そこには木の枝に掴み、なんとか落下を回避している信長がいた。
そして、信長の左手には鍵が握られている。
「......今すぐに助けるから待ってて!」
そう叫ぶと、結衣は背負っていたリュックをミラン先輩に渡した。
すると、結衣は魔力を一気に放出させる。
そして、一気に崖を飛び降りた。
「【
放出された魔力が、結衣の足元に集まっていく。
そして、サッカーボールくらいの大きさの【
「信長! 掴まって!」
結衣がそう叫ぶと、手を信長に伸ばした。
信長はその手を掴む。
「よし、これでオッケーだね。【
結衣の詠唱とともに、結衣の足元の【
その風に乗り、結衣は真っ直ぐ飛び上がり、地面に着地した。
「あぁ、怖かったぞ。」
信長は地面に倒れ込みながら、カギをミラン先輩に渡した。
「信長くん、君が無事でよかったよ!」
「我も、我が無事でよかったぞ。」
これにて無事に依頼を達成することができたのだった。
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