第17話 最近、時間が無くなってきてましてね……。
トイレの奥に広がっていた場所。
それは、既に使われていないビルのような場所だった。
建物の壁が崩壊しているところもある。
また、建物の窓ガラスはほとんどが割られていた。
そんな廃ビルとなっているその建物で、"尾張の大うつけ"織田信長は、トイレを探していた。
トイレに駆け込んだと思ってから、もう1時間が経過した。
信長のケツは限界を突破しようとしていた。
「トイレは、どこに、どこにあるのだ。」
信長は腹を抱え、体を引きずるように歩いていた。
そんな信長のいる廃ビルは歩いても歩いても同じ景色が続く。
「誰か、誰かいないのかよぉ......。」
――――――――――
「さぁて、そろそろ話してもらおうかな。」
ビシッ! という音が鳴り響く。
ここは廃ビルの奥。
普通の人がたどり着くことはできないような場所だ。
そんな場所で、男は目の前で弱っている少年をムチで叩いた。
「……ッ!?」
少年は声を出すこともなく、その痛みを耐えていた。
「はぁ。」
その様子を眺めながら男はため息をつく。
「あのさ、僕が男に興味がないってことは知ってるんだよね?」
ムチの持っている男がいる空間。
その空間を周りをよく見てみると、そこには鎖で繋がれて身動きが取れない女の子がたくさんいた。
「それでも、俺は言わない。」
「あっそ、素晴らしい愛だね。」
「俺は絶対に、彼女を守る。」
「それもいつまで耐えれるか、だけどね。」
男はそう言うと、腰から短剣を取り出した。
「これで、君の肌を削ぎ落としていく。」
「……!?」
少年の顔が一気に青ざめていくのがわかった。
「怖いか? 怖いだろ。だったら早く言え。お前の彼女、タチワの居場所を。」
「い、言わないって……言わないって言ってるだろ。」
それでも少年は震えるような声でそう言った。
「まぁ、それなら実際に削ぎ落とすまで。」
男は短剣を強く握る。
そして、ゆっくりと少年に近づき、その短剣の刃を突きつけた。
「それじゃぁ、はじめまーす。」
だんだんと刃が近づく。
少年の顔が恐怖に支配された。
その時だった。
男と少年の背後から足音が聞こえた。
ゆっくりと、地を噛み締めながら近づいてくる足音が。
「だ、誰だ。」
男は問いかけた。
すると、
「我の名は織田信長だ。」
とても低い声が返ってきた。
しかも、声だけで失神してしまいそうなくらいに、覇気を感じる。
「なぜ、ここにいる。」
「1つお願いがあるんだ。」
「なんだ?」
男は警戒しながら信長の返答を待つ。
信長の返答次第では真っ先に殺すことも考えている。
「トイレを貸してほしい。」
男の体がカクッ! と、傾いた。
「は? それだけかよ!」
「それだけで悪いか? 我はお腹が痛いし、漏れそうだし!! だから、早く貸してくれ!! やっと人を見つけられたんだよ!!」
「わかった、わかったから。トイレはここをまっすぐ行って右に曲がるとあるから。」
「分かった、感謝するぞ! お主!!」
信長はそれを聞くと早足で行ってしまった。
それと同時に、一瞬だけ少年に訪れた安堵が消え去る。
――あの男は助けに来たわけではない。
この現実は少年をさらに絶望に陥れる。
一刻も早くこの時間が過ぎてほしいと願いながら。
「さぁて、続きを始めようか。」
男はそう呟いた。
それと同時に男は何かに気がついたようだった。
「おや? 君、朗報だ。いや、君にとっては悲報かな?」
「……?」
「君の彼女がこの廃ビルに足を踏み入れたらしい。」
「……ッ!」
「俺は学生のカップルを狙って捕まえていた。NTRが好きだからな。そんで、お前の彼女を狙ってると知ったお前は俺に立ち向かった。彼女を守るために。だが、実に滑稽だな。守ろうとした彼女が来てしまうんだからな! お前の苦労は水の泡というわけだ!」
男はそう言うと、少年にスマホの画面を見せた。
そこにはゴブリンに囲まれている結衣たち、つまりタチワがいた。
その画面を見た少年は膝から崩れ落ちていく。
「なん……で、来ちゃうんだよ……。」
少年の目から涙が溢れる。
「俺……は……俺は、弱かった。魔法が使えない
少年の目から涙がこぼれた。
「――俺は弱すぎたみたいだ。」
少年はその場で泣き崩れる。
ゴメン、本当にゴメン、と繰り返し言いながら。
しかし次の瞬間、少年の耳元で何かが囁かれた。
「なんだ。お主、充分強いじゃないか。」
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