第13話 そろそろ『学園生活』篇を帰着させにいきたい。

「さて、今日は人間とモンスターが歩んできた歴史についての授業を行う。」


「…………。」


 とある日の授業中。

 結衣は鋭い眼差しで信長を見つめていた。

 そんな信長はというと、じっと教科書を見つめていた。

 よって、信長も結衣も授業の内容が全く理解できていない。


「人間とモンスターは魔王との戦争の前から共存をしていた。」


「…………。」


 結局、授業が終わるまで結衣は信長を見つめていた。


「これで授業を終わりにする。みんな、おつかれ。」


「…………。」


 結衣は授業が終わるとすぐに、信長の席へ向かった。


「あー、なるほど。つまり、ここをこうすれば......。」


 信長は何かを呟きながら作業を行っていた。

 どうやら机の下に何かがあるらしい。

 信長はその作業に集中しているので、結衣が近づいていることに気がついていない。

 そこで、結衣は信長の見つめている教科書を取り上げてみた。

 すると、ようやく信長は結衣の存在に気がついた。


「何するんだ!」


「信長! 授業中は授業に集中しなさい!」


「いや! 我はとても授業に集中していたじゃないか! その教科書も見てみろ!」


 結衣は取り上げた教科書を見た。

 そこには『裁縫入門』と書かれていた。


「裁縫?」


「そうさ。我は今、裁縫を極めようとしているのだ!」


「まず、あなたがターボン学園に来た理由は異世界についての知識を身に着けるためでしょ!」


「いや、我はすでに異世界の知識を身に着けている。だから我は授業を受ける必要がない!」


「この世界に来て間もない信長が完全に理解できてるわけないでしょ!」


 結衣は本を持ったまま信長から離れた。


「この教科書を返してほしければ、この私を捕まえてみるといい!」


「は、はぁ!? それ、アリなのか!!」


 信長は結衣を追いかけた。


「ま、待て。お主、早すぎないか!」


「まぁ、私は身軽だからね!!」


「特に胸元の辺りとかなー!」


 と信長が言った次の瞬間、結衣の足が信長の顔面を襲った。


「いってええええええええええええええええええええええええええええええええ!」


「これでも人並みにはあるんですけど……。」


「ゑ、人並み......?」


 さらに結衣の蹴りが信長を襲った。


「あたたたた!! 悪い! 悪い! 我が悪かった!! と、見せかけて!!」


 信長は足で踏み潰されながらも手を伸ばし、結衣に奪われた教科書を奪い返そうとした。

 だが、信長の手は届かなかった。


「危な!」


 結衣は信長から離れる。


「くっそ!!」


「じゃあ、これは没収だから!」


 と、結衣が言うと教室から出ていこうとした。


「逃がすかよぉ……」


 遠ざかる結衣の後ろ姿を目で追いながら、信長は左足を大きく後ろに振りかざした。

 そして、素早く左足を前に振り抜いた。

 すると、信長の足から履いていたサンダルが抜ける。

 抜けたサンダルは真っ直ぐ結衣の持つ教科書の方へと……。


「!!」


 結衣の持つ教科書に信長のサンダルが届くことはなかった。


「あ。」


「ゑ。」


 信長のサンダルは別の方向へと飛んでいき、その方向にたまたまいた男子生徒へ飛んでいった。

 それだけではない。

 飛んだサンダルは男子生徒の股間、つまり、男子生徒の超大事な部分へと直撃してしまった。


 ――チーン

 という音が、自然に聞こえてきた。

 恐らく、この場面の裏でディレクターが付け足したのだろう。

 そして、サンダルが直撃してしまった男子生徒はその場に倒れ込んでしまった。


「……。」


「……。」


 信長と結衣の2人はその一部始終を、ただ黙って見ていることしかできなかった。

 そして、男が完全に行動不能になったことを確認する。

 2人は絶望フェイスをしながら、お互いを睨みつけた。


「ちょっと、何やってるのよ! 信長!!」


「え! 我!? 我のせいなの!?」


「あったりまえでしょ! 信長が直接ぶつけたんだから!」


「でも、きっかけを作ったのは結衣だっただろ!!」


「知らないわよ、そんなの!!」


「そもそも、結衣が我の教科書を盗らなければ始まらなくてだな、」


「だから、そうやって私のせいにしないで!! それを言うなら、信長が授業を真面目に聞かずに変なことしてるからでしょ!!」


 2人の言い合いは続く。

 そんな2人のすぐ横で、1人の男子生徒は今も動けずにいた。

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