第9話 まだまだ子供心を無くしたくないなぁ。

「結衣ィ! 起きてよォ! 結衣ィ!」


「まだ、少し、だけ」


「ダメだよォ、入学式が始まっちゃうよォ」


「!?」


 ターボン学園の入学式を迎えた結衣たち。

 そんな大事な日に、結衣は寝坊をしてしまっていた。


「なんで早く起こしてくれなかったの!!」


「私は何度も声をかけてたよォ。」


「マジで!?」


 てか早く行かないと。

 そう思った結衣は急いで制服へ腕を通し、朝食を取らずに学園へ向かった。


「はぁ、間に合った〜。」


「全くゥ、結衣が寝坊するからだよォ。」


「ホントにごめん!」


 入学式が始まる前に学園の入り口でクラスの発表が行われる。

 結衣とイリスは自分たちが何組なのかを確認した。


「私、D組だって。」


「私もD組ィ。」


「お、同じだ。やった!!」


 結衣たちはそのまま仲良くD組の教室へ向かった。

 D組の教室に行く途中、信長とも会った。

 どうやら、信長もD組らしく3人で教室へ入っていった。

 しばらくすると、そのD組に1人の先生が入室した。


「はいー、皆さん静かにー。今日からこのクラスの担任になりましたー、バージンですー。みんなよろしくー。」


 信長たちの担任となったバージン先生とは、結衣とイリスの受験の時に個別試験を担当していた先生だ。


「今年はスゴい子が多いらしいからー、みんながんばろうねー。」


 という言葉を、結衣とイリスを見ながら話した。

 え、そのスゴい子って私たちのこと? ちょっと嬉しい。

 と、結衣とイリスは顔を合わせながらお互いに同じことを考えた。


 自己紹介を終えたバージンは生徒の反応をひととおり確認すると、水晶玉を取り出して、バージンの背後の黒板に水晶玉の映像を映し出した。


「入学式は、リモートで行うわよー。」


 黒板に映し出された人。それはこの学園の校長、アネーゼだ。

 アネーゼとは、この世界に15人しかいないとされる魔法を極限まで極めた者が扱える魔法『終極魔法』が使える者の1人である。

 その『終極魔法』を使える者は"極点"と呼ばれる。


「皆さん初めまして。私の名前はアネーゼ。この学園の校長を務めている。私がこの学園に入学してくれた優秀な生徒たちに届けたい言葉はただ1つ。」


 アネーゼは腕を組み、じっと画面を見つめた。

 そして、いきなりその画面に指を向けると、このように叫ぶ。


「友情! 努力! 勝利!」


 って、ちょっと待ってぇぇぇ!? それはダメだろォォォォォォ!!

 と、心の中で叫ぶ結衣。

 声に出して叫ばなかったのを褒めたい。


 校長はギリギリセーフよりのアウトな発言をすると、すぐに消えていった。

 その後も入学式は続いていった。

 そして、1時間ほどが経過した。


「はいー、これで入学式は終わりー。」


 入学式が終了した。


「長かったなぁ。」


「そうだねェ。」


 と、結衣とイリスは会話をした。


「この後は学校の中を案内するから、私に着いてきてねー。」


 と、担任のバージンが言った。




――――――――――




 世界一の学園、ターボン学園。

 ここには世界中から実力のある生徒が毎年受験をする。

 そのため学園全体のレベルはかなり高い。


 そんなターボン学園には授業を行う授業棟の他に、研究を行う研究棟というものが存在する。

 本来、生徒たちがこの研究棟へ入ることはない。

 この研究棟は世界中の研究者たちが、日々研究するための場所だ。

 世界一の学園には、世界一の技術がある。

 ターボン学園の研究は世界に誇れるレベルで高い。

 そんなターボン学園の研究棟に、信長たちは特別に入ることが許された。


「恐らくだけどー、もう一生ここには入れないからねー。しっかりとその目に焼き付けておきなー。」


 と、バージンは言う。

 今回、信長たちが入ることが許されたのは動物を研究している場所だ。


「こんな感じで、ターボン学園の動物研究は、環境の変化に対応できるようにする研究を進めているんですよ。」


 と、研究員は解説していた。

 付け加えて、


「あと、注意して欲しいのはこの辺りには動物の糞なども落ちてるので、足元には注意してくださいね。」


 と、注意喚起。

 だが、研究員のその言葉はどうやら遅かったらしい。


 ベチャッ! 

 という感覚が足元にあった人が1人。


「あっ、」


「あれェ?」


 結衣が動物の糞を踏んだのだった。


「あ、えっと、その。」


 テンパる結衣に信長が近づいてきた。

 そして、


「結衣、ウ○コになってしまったな!」


「は、ハァ!? 何その言い方!! 私がウ○コみたいな言い方やめてくれない!?」


「だが、実際にお主はウ○コを踏んだせいで、ウ○コ臭いぞ。だから、お主はウ○コなのだ!」


「だから、かわいげなレディーにウ○コウ○コ言うのはおかしくないって話! デリカシーのない男はモテないよ!」


「我は、モテるかモテないかの話をしているのではなく、結衣がウ○コかウ○コじゃないかを話しているのだ!」


「この場に及んで、まだウ○コの話をするか!」


 と、口喧嘩になってしまった2人の間に1つの氷の塊が飛んできた。


「はいー、少しうるさいですよー。」


 バージンの召喚したモンスターが氷の塊を2人の間に放ったのだった。

 その氷の塊に信長は驚き、そのまま体制を崩して背中から倒れていった。

 そして、そんな信長の下敷きなったのは、ベチャッ! という感覚。


「あれあれあれ? 信長もウ○コじゃん〜。」


「これは、我のせいではい! 自分からウ○コを踏んでいったお主とは違うしー!!」


 2人の喧嘩はまた始まった。

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