第6話 戦闘シーンって難しいんですよね。

「あれェ、結衣もあの人形壊しちゃったのォ?」


「あ、イリス!」


 結衣が案内された部屋は、闘技場のような場所。

 そこにはイリスもいた。

 どうやら、あの人形を壊した人が集められているようだ。

 と言っても2人だけだが。

 そして、結衣がイリスに近づいた時、先生らしき人が2人の前に歩いてきた。


「はーい、君たちが人形壊しちゃった人かなー?」


「そ、そうです。」


「君たちー、実はねー、最後にあの人形を壊したのは私なんだー。」


「そ、そうなんですか!?」


 結衣とイリスは目を合わせる。


「「この人、強いのでは!?」」


 そんな2人を無視して、先生は話を続ける。


「私の名前はバージン。これから2人には特別実技試験を行ってもらうよー。」


「特別実技試験? なんですかそれ?」


「私が作り出したモンスターと戦ってもらうー。それだけー。簡単でしょー?」


「は、はぁ。」


「まー、君たちの魔力が測定できないってことだからー、未知数なんだよねー。だからー、君たちの戦闘の様子を見てー、強さを測るよー。」


「は、はい。」


「じゃー、早速いってみよー!」


 どこかフワフワした雰囲気を持ちながらも、喋る言葉は何故か棒読みだったバージン先生は、いきなりどこかへ消えてしまった。

 だが、どこからか声は聞こえる。


「じゃあ早速召喚してみるねー。頑張ってねー!」


「え? 嘘、もう!?」


 心の準備が整う前に、2人の目の前に何かが落ちてきた。

 それは、およそ10体ほどのスケルトン。


「さてとォ、頑張りますかねェ。結衣さん。」


「そうだね!」


 イリスの体が電撃で帯びる。


「ビリビリするね。」


「そういう魔法だからねェ。」


 結衣も魔力を放出し蓄積させる。


「【蓄積チャージ】」


 そして【雷球サンダーボール】を作る。


「あれェ、結衣さんも雷を使うのォ?」


「いや、私は全ての属性の初級魔法ボールを作れるよ。」


「へェ、じゃあ結衣は初級魔法ボールを極めたってわけなんだァ。」


「まぁね。最初は【水球ウォーターボール】だけだったんだけど、いつの間にか全ての属性で使えるようになったんだ。」


「無敵だねェ。」


「うん!」


 スケルトン達が一斉に襲いかかる。

 イリスは持っていた剣を抜き、襲い掛かってきたスケルトンを切り落とした。


「【発射ショット】!」


 イリスが倒しきれなかったスケルトンを結衣が撃ち抜いた。


「おー、まずはレベル1クリアー。じゃあ次にいってみよー。」


 次に現れたのは彼女達の2倍ほどの大きさのあるゴブリン。


「でっかいィ。」


「でも、私たちなら余裕よね!」


「当たり前ェ。」


 イリスの体にもう一度、電撃が帯びた。

 そしてイリスの持つ剣にも電撃が帯びた。


「はァ!」


 その剣はゴブリンの腹部を斬る。

 だがその攻撃で倒しきることはできず、ゴブリンの攻撃がイリスを襲おうとした。


「【発射ショット】!!」


 しかし、結衣の詠唱と共に【氷球アイスボール】がゴブリンの腕へ放たれる。

 そしてゴブリンの攻撃を遅れさせた。

 その間にもう一度イリスの電撃の剣が腹部を斬った。

 この攻撃により、ゴブリンは倒れていった。


「ふーん、余裕そうだねー。じゃあ、一気にレベルを上げてみよっかー。」


 次に上から落ちてきたのは見たことのないモンスター。

 いや、正確には見たことはある。

 だが、頭は蜘蛛、体は蛇、背中には蝶の羽根ようなものが生えている。


「なにこの気持ち悪い生き物!」


 と、結衣は叫んだ。

 まるで色々な虫が合わさったような感じだ。

 

 これはバージンの魔法の効果の1つだ。

 バージンの魔法は自身が収集したモンスターなどを自由に召喚する魔法であり、さらには収集したモンスター同士を自由に掛け合わせることができる。


 そんな複数の虫型モンスターが掛け合わさったモンスターの見た目はとても気持ち悪いものである。

 その見た目だけでダメージを食らい、戦闘不能になった人がいた。


「私、虫無理ィィ!」


「え、そうなの!?」


 イリスの体に帯びていた電撃が消えていく。


「【蓄積チャージ】!」


 結衣は急いで【火球ファイヤーボール】を作る。


「【発射ショット】!!」


 そして虫の目の前で爆発させた。

 しかし虫の動きは止められたものの、傷は1つもついていない。


「あの虫、硬すぎる!!」


 虫の動きが止まっている間に、結衣はイリスに近づき急いで闘技場の端へ移動させた。


「しょうがない。私が戦ってくるから。」


「いやァ......でもォ......盾くらいにならァ。」


「え、ホントに!? じゃあ、身代わりになってよ!!」


「は、はァ!? ホントにしなくちゃいけないのォ!!」


「いや、実は私の弱点が1つだけあって。魔法を発動させるのに、毎回【蓄積チャージ】の詠唱をしないといけないんだよね。だから、魔法を発動させるのに少し時間がかかるんだ。その間に近づかれてやられたら意味がない。だから私が一撃必殺の魔法を打ち出すまでの時間を稼いで欲しい。」


「そォ、そこまで言われたらやるしかないじゃないィ。」


 イリスは恐る恐る立ち上がり、虫の方を向いた。


「ハァハァハァハァ。」


「よし! 行って! イリス!!」


「こ、こっちよォ!!」


 イリスは虫の注意をひきつけて、闘技場を走り回り出した。

 その間に、結衣は魔力を放出させる。


「【蓄積:極微チャージ-ミクロ】」


 結衣の指先に肉眼では視認できないほどの大きさかつ、無数の【火球ファイヤーボール】が作り出される。

 そして、もう1つ。


「【蓄積チャージ】」


 普通の大きさの【土球アースボール】が【火球ファイヤーボール】の後ろに出来上がる。


「【蓄積チャージ-柔軟フレキシブル】」


 最後にもう1つ。

 とても柔らかい【水球ウォーターボール】を【土球アースボール】の後ろに。


「今、終わらせる。」


 全ての準備が整った。

 さぁ、始めよう。


「【発射ショット】!」


 まず最初に大量の【火球ファイヤーボール】が爆発する。

 爆発に爆発を重ね、【土球アースボール】に威力と速度を上乗せさせる。

 そして最後の【火球ファイヤーボール】が爆発した時、物凄い速さの【|土球アースボール】が柔軟性のある【水球ウォーターボール】へぶつかる。

 勢いを増した【土球アースボール】を全て受け止め、更に勢いを上乗せさせ、跳ね返す。

 跳ね返された【土球アースボール】は、凄まじい速度で虫へと向かう。

 その速度は音よりも速いッッッ!!

 刹那、結衣の放った【土球アースボール】は虫の心臓を貫いた。


「す、凄いィ。」


「これが、私の全力かなぁ。」


 そんな時、2人の目の前に先生が現れた。


「いやー、戦闘スキルもバッチリ。凄いねー。」


「ありがとうございます。」


「てことで、2人は合格かなー。」


「あれ、筆記試験は?」


「いやー、人形壊した時点でこの学園に入学は決定だよー。」


「そ、そうなんですね。」


「じゃー、2人には後日ー、合格証明書とか色々送るから確認してねー。」


 こうして2人はターボン学園に合格したのだった。

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