あいつ頭埋まりながら走ってる……!
「あいつ頭埋まりながら走ってる……!」
学生のひとりがそんなことを言う。そう、この学校でそんなことを考えつくのは奴しかいない。
ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒ。
100m走。他の選手はその姿に怯え走るのをやめたりしている。ので100m走を走り切った――というにも疑問がわくフォームだが走り切ったのはミハエル1人。100mのフォームで地面に頭を突きさしたまま走るなんて見たことも聞いた事もない。当然両足は本来の走り方の頭の位置にある。
「ていうか息どーしてるの、あれ」
窓にもたれかかって頬杖ついている呆れ顔の水鏡冬華。
「学生って妖怪じみた技学ぶんだね。アレはさすがにわたしも無理かな……学生ってみんなアレできるんでしょ!!」
感心した様子でサリサ。
「いやいや、学生を勘違いしないでください……あんなの見たことない」
オロオロとした様子で陽夏。
――と。いきなり呪いの音楽のようなものが流れた。当然放送部がそんな事するわけない。
「えっえっ何?」
陽夏は普通に驚く。
「なに? セーブ消えたような音楽」
水鏡冬華。また馬鹿が始まるのか~といった顔をしている。
音に気を取られていたが、注意をグラウンドに戻す。
「ちょっ………。
気持ちわる……! 何あれ!」
冬華がそんな言葉を漏らす。
「ひぃぃぃぃぃいいいぃ!」
陽夏はミニスカでしりもちをつき悲鳴をあげる。
サリサは――
「霊気見れば分かるじゃん本人命に別状なし。あれ本人が楽しんでそう」
グラウンドに無数の桜雪さゆの生首とミハエル=シュピーゲルの生首が並んでいた。
そして当の本人がおもちゃのハンマーで自分の生首を潰していってる。
本物というわけではないようだ材質はゴムっぽい。
ミハエルがお尻を冬華たちに向けてクラウチングスタートを姿勢をとった。
そして、体を起こす! ミハエルは普通走るべき前方向じゃなく、お尻を向けた方向に――つまり冬華たちの方向に4秒5くらいで到着した。ちなみに冬華たちは3階の教室で話している。
水鏡冬華は教室の地上からの距離とグラウンドの距離とで空中の直線距離を計算したくもなったが、一直線の距離出した所でミハエルが妖怪じみた事をしているというのを再確認しているだけなのでやめておく。
「よう!」
「…………よう」
もう突っ込み所多すぎて突っ込めないのか普通に返す冬華。
「さゆも来るよ」
それを聞いて水鏡冬華はグラウンドを探す。
見つけた。
「あいつ、十二単で走り高飛びする気か。
いやミハエルさんのさっき動きから推測するに」
「おっ結構飛ぶねえ」
サリサは普通に感心している。
陽夏は目を白黒させている。
桜雪さゆは、走り高跳びで棒の前でジャンプで1,000,000kmはジャンプした。つまり地球で言うなら月まで往復の距離を余裕で超えている。
「うぅぅ、金髪貴族と桃色十二単、仮想世界から出ていって欲しい……世界が壊れるよ……」
そんな嘆きが空から聞こえてきたりしたが。
「そんなこと言われてもルシファーの仮想世界に引きずり込んだのそっちじゃないか。
じゃあ、ありえないと普通の人が思う事ばっかり起こして、一寸法師よろしく内側から世界を、お前が決めた物理法則を崩壊破壊するに決まってんじゃん」
ミハエルが呆れた口調で返す。
彼女が地上に戻ってくるまでしばし時間がかかる。ていうか仮想世界の外まで飛んで管理人の姿まで拝んで帰還している。
屋上でどか~~~~~~~~~~~ん。という音がしたのち、
「10.0~~~~~!」
屋上からそんな声が聞こえる。
「妖怪じみてるから-10ね」
――と、頬杖をやめた水鏡冬華。
「なんでよ半竜~! 十二単の女の子がここまでふわりと浮いてくるのメルヘンでしょ!」
屋上から妖力で浮遊して外ルートで教室の窓際までまわってそういうさゆ。
「ていうかあんたらあと何日クレイジースクールライフ送るつもりよ
忘れたんじゃないでしょうね」
と、そこでミハエルが口を挟む
「忘れてないぞ。今回はわたしとさゆがするので君たちは好きに暴れていろ自然に暴れるのがルシファーに大ダメージになる。
ただ、わたしからの注文――行儀良くなるな! 大人しくなるな!
先生が何言ってこようが自分を失くすな!
悪魔と相対する時にそれらはいらん要素さ」
「じゃああんたに爆弾落としてもいいのよねえ……うふふふふ」
「あ……逃げよ!」
「逃げられると思ってるの……」
「アーーーイ!!!」
「くっ、あの壁抜け走りがあったか」
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