元日から断食をする男

朝月

元日から断食をする男

断食ってやったことありますか?

 たぶん、言葉としては知っていても実際にやったことのある人は少ないんじゃないかと思います。

 だって、人が生きる上で絶対に必要な「食」を「断つ」。そんなの危ないに決まっていますし、修行僧でも無いとやらないだろと。解脱するためにやるみたいな。

 ただまあ、最近だと断食の健康効果の部分に注目して「プチ断食」みたいなのが流行って来ていますね。1日の何時間だけ食べないみたいなやつです。「ファスティング」とも言われているやつです。

 余談なのですが「プチ断食」だと何か可愛い感じで終わるのに「ファスティング」とカタカナになるだけでなんだか最先端の健康法にみたいに聞こえますよね。僕だけですかね?オシャレでセレブの人たちがこぞってやっているようなイメージです。実際、セレブでやっている人もいると聞きますけど。

 個人的には「断食」という言葉の力強さが好きなので「プチ断食」を推していきたい。


 こっちの「プチ断食」ならやったことのある人はいるかも知れませんね。僕もよくやっています。というか、僕は基本的に1日に1食しか食べないので、毎日プチ断食している事になります。

 1日3食を食べない生活スタイルは、人によって合う合わないがあるので、簡単には真似をしないでいただきたいのですが、僕には合っていたようで、最高に身体の調子が良い日々を過ごさせてもらっています。食費もかからないし、身体つきも僕らの想像する原始人みたいに、少し筋肉のついたボディになっていますし。

 ああ、そうだ。先日、知り合いに「なんか最近ゴリラみたいですね!」と褒めていただきました。これも1日1食と筋トレの成果ですね。

 決められた時間に食べるという生活スタイルよりも、僕には身体が欲する時に身体が欲するものを食べるという生活スタイルの方があっているようです。それがたまたま1日1回だという。たまに、2回とか食べますけどね。3回は無いです。1日に3回食べると気持ち悪くて吐きそうになります。この1日に1食生活をするまでの20数年間、ひたすら世間が言うままに1日3食を食べて、常にゲロを吐きそうになるというハンデを背負いながらなんとか生きてきたのだと思うと、ちょっと誇らしくなります。

 これからの僕はハンデを外していくから覚悟するんだぞ、世間くん。


 ところで、断食の世界記録をご存じですか?

 スコットランドのアンガス・バルビエーリという人が1965年から1966年にかけて382日間続けて断食を行ったのが記録として残っています。


 382日間!!


 みなさん、1年以上もご飯を食べない生活が想像出来ますか?もはや人間ではありませんね。バルビエーリさんは超人です。僕らとは違う生命体のようです。


 ちなみに、バルビエーリさんは何も摂取しなかったわけではなく、水、茶、ブラックコーヒー、ビタミン、ミネラルは摂取していたようです。そうは言ってもこれだけで1年以上生きられるんですね。驚きです。


 バルビエーリさんが断食を始めたきっかけは健康のためでした。

 バルビエーリさんの断食前の体重が207キロだったそうで、早く痩せるために断食を行ったそうです。


 207キロ!!


 207キロなんて常人の3~4人分の体重です。もはや超人ですね。体重200キロ超えの生活がどんなものなのか気になるところです。

 そんな超人バルビエーリさんですが、断食終了後は体重が82キロになったそうです。その差125キロ。


 125キロ!!


 ベンチプレスで125キロを上げられたら近所の子供たちから「ムキムキゴリラ」という名誉あるあだ名をつけられることでしょう。125キロとはそれぐらいの重さなのです。

 まあ、382日も断食したのならそれぐらい減って当然かも知れませんけどね。

 もちろん、この記録はバルビエーリさんが特殊なだけなので、僕らが真似して良いものではありません。もしやるとしても「プチ断食」ぐらいでやめておきましょう。


 さて、前置きがすごく長くなってしまいましたが、ここからが本題です。

 僕は2021年の元日に断食をしました。水と茶とコーヒーしか摂取しないで1日過ごすというものです。

 コーヒーに少しカロリーが含まれていることを後で知りました。コーヒー1杯に8カロリー含まれていたようです。だから、0カロリーでは無いですが、成人男性の基礎代謝が1500カロリーと言われていることから考えると、8カロリーなんて誤差でしょう。誤差ということにしてください。


 次はちゃんと0カロリーの水だけの断食もやってみたいです。


 なぜ断食をしようと思ったのかというと、健康のためというよりも精神的な意味合いが強いです。簡単に言うと、今までの自分から変化するため。


 今年、僕は30歳になります。

 30歳といえば、収入も安定して、家庭も持って、人間としての基盤がだんだん出来てくる歳だと思います。

 ですが、僕はまだ何も持っていません。収入も安定も家族も何も。それでいて夢だけは持っています。他の人が現実を見て、着実に人生を設計していっているにも関わらず、僕は夢を見ていて現実的な人生設計をしていません。

 他人と比べることは良くないと聞きますが、それでも他人と比べてみると、同世代の人がはるか彼方にいるのに、僕だけスタート地点にいる感じです。スタート地点にいるだけならまだ良いのですが、同世代の人たちと全く違う方向に進んでいるような気もします。これじゃいつまで経っても同世代の背中は見えないでしょう。僕はこのまま「人間としての幸せな人生」から離れ、目的地の無い星間飛行を続けていくしかありません。


 しかも、夢に向かって進んでいるのなら良いのですが、僕はただその場で遠くの夢を見ているだけなのです。特に何か夢に向かって動いているわけではない。「いつか叶うと良いな」ぐらいなもんです。このままでは一生叶わないでしょう。そして、誰もいない宇宙の果てにたどり着いた時に僕はつぶやくのでしょう。「こんなはずじゃなかった」と。


 この状況を打破するためには、流れを変えなくてはいけません。同世代の人たちが向かっている方向ではなくても、せめて自分の夢に向かわなくては。

 進路を変える必要があるわけです。だから元日に断食をする事にしました。

 いつもの習慣をわざと壊して、変化を作った。

 そういう事です。


 29年間、僕はほぼ同じ正月を過ごしていたと思います。

 さすがに赤ちゃんの頃のことは分からないのですが、物心ついた時からいつも元日にお雑煮とおせち料理とお餅を食べ、20歳を超えてからはこれにお酒が加わって、食うては寝て食うては寝てで、毎年ぶくぶくと正月太りをしていました。まず手始めにこの流れをぶった切ります。

 今年の元日は断食をして、運動をしまくり体重を1日で1キロ落としました。バッティングセンターに行って元日特打をしました。今年はホームラン王です。気持ちの上ではドミニカ共和国にまで打球が飛んでいきました。


 そして決めた事。

 今年の正月はお餅を食べません。今年は好きなお酒も飲みません。後、ついでに今年は丑年なので牛肉を人との付き合いを除いて食べません。甘い物が大好きなのですが、パンやお菓子も極力食べないようにします。


 とにかく、29年間生きてきた流れと大きく違う事をやってみる。そうすれば、もしかしたら夢を見ているだけの自分が変わって、夢に向かって進める自分になれる日が来るかも知れません。


 まあ、断食が夢につながるのか分かりませんけどね。

 でも、何が夢につながるか分からないから、自分が「これは夢につながる」と思うものは何でもやっていこう。そう思います。とにかく行動するって事ですね。


 今回は、人が変わるためには思い切って今までと全然違う事をしてみると良い。すると人生が面白くなるかも知れないよ、というお話でした。


 ここまで読んでくださってありがとうございました。

 それでは良い一日を。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

元日から断食をする男 朝月 @asazukisan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ