第8話
その後私たちは別れの挨拶をして屋敷を後にしたのだった……
宿に帰った後私は早速データをまとめ始めることにしたのだ。しかしなかなか思うように進まず苦戦していたのだが、そんな時にシュヴァリエ様が声をかけてくれたのである。彼女は私を手伝うためにわざわざ来てくれたようだったのだが、そのおかげで作業効率が上がったのでとても助かったのだ。そうして無事に全てをまとめることができた後は、それをゴーフェルの元に提出したのだ。
達成感があったので嬉しかったのだ……! 次の日になり私たちは朝早くから出かけることになったのである。行き先は魔女たちがいるであろう森の奥地にある屋敷だ。そこには全ての魔女たちが住んでいると言われており、彼女たちはそこで世界の異変について調査を行っているのだという話を聞いたことがあったのだ……私たちはその情報を頼りにその場所へと向かうことにしたのである。
そしてしばらく歩いているうちに森の入り口へと辿り着いたのだが、そこは薄暗く不気味な雰囲気が漂っていたので少し不安になったが勇気を出して中に入ることにしたのだった……森の中に入ると木々の間から差し込む光がとても神秘的だったがそれと同時に不気味さも感じられたのだった……それでもなんとか進んでいくうちに開けた場所に出たのでそこに建っていた一軒の古い洋館を発見したのだ。私たちは迷わずその中に入ることにしたのだった……
屋敷の中はとても広かったが人の気配は全く感じられなかったのだ。そのため少し不気味だったが、覚悟を決めて進んでいくことにしたのである……そうして歩いているうちに奥の部屋まで辿り着いたので恐る恐る扉を開けてみるとそこには一人の女性がいたのだ!魔女だろうか?彼女はこちらを見て微笑んでいたようだったのだが、その表情からは何を考えているのかを読み取ることはできなかったのである……そしてしばらく沈黙が続いた後でようやく口を開いたかと思うとこう言ってきたのだ...........!「よく来たわね。歓迎するわ」と言った後さらに続けて言ったのである。「早速だけれど本題に入りましょうか。あなたたちが集めたデータを見せてちょうだい」と言われたので、私は自分の鞄から資料を取り出し彼女に見せたのである……すると彼女はそれらをじっくりと読んでいった後にこう呟いたのだった……!「なるほどね..........」どうやら納得してくれたようだと思ってホッとした気持ちになった。
「どうやらあなたたちがゴーフェル様が言っていた人間で間違いないようね。待ってて、今お呼びしてくるから」
そう言って部屋から出て行った後、数分後に戻って来た彼女の隣には、ゴーフェルがいた。「あら、来たのね。」そう言ってゴーフェルは微笑んだのだった..........私たちは緊張しながらも挨拶を済ませた後早速本題に入ることにしたのである。
「それで魔女方様には、この異変の原因を突き止めることはできるのでしょうか?」私が尋ねるとゴーフェルはゆっくりと頷きながら答えてくれたのだ……それは驚くべき内容だったのである!なんと彼女たちも私たちと同じ結論に至っていたというのだ...........!そしてさらに続けてこう語ったのである。
「でも残念ながらまだ確証を得るまでには至らなかったの」と悲しげな表情を浮かべながら言うのだった。そんな彼女に同情しつつも、私はある提案をしてみることにしたのである……それは私たちと一緒に行動することで異変の原因を突き止める手助けをしてもらえないかという提案だったのだが果たしてどうだろうか...........?ゴーフェルはしばらく考えた後こう言ってくれたのだ!「分かったわ」こうして私たちは共に行動することが決まったのである……! そしてその後は詳しい話をする前にまずは休憩を取ることになり、お茶を飲んでくつろいだ後で、私とシュヴァリエ様は、一旦自国へと戻ることにした。
「皆、心配していますよね」
馬車に揺られながら、私はシュヴァリエ様に話しかけた。すると彼は微笑みながら答えてくれたのだ。
「そうかもしれないですね.........でも大丈夫だです。私たちなら、きっと何とかなります!」
その言葉を聞き、私も不思議と元気が出てきたような気がしたのだった。
それから私たちは急いで自国に戻るとすぐに国王に報告することにしたのである...........! 早速謁見の間に向かうとそこには既に大臣たちが揃っており、私たちの帰りを待っていたようだった。そして中に入るなり一斉に頭を下げてきたものだから驚いてしまったが、同時に嬉しさも感じたのだった……大臣たちの心配そうな顔を見た途端胸が締め付けられるような気持ちになったからである……だからこそ一刻も早く安心させてあげる必要があると思ったのだ……
「ただいま戻りました。ご心配をおかけして申し訳ありませんでした..........」私が頭を下げるとそれに続くように他の2人も頭を下げたのだった……すると国王はホッとした表情をされつつも少し複雑な表情も浮かべているように見えたのだ……それは一体何故なのだろうか……?などと疑問に思っていると大臣の一人が声をかけてきたのである。
「ローザ嬢、それにシュヴァリエ殿下も本当に無事でよかったですぞ!しかしこうして帰ってきたということは、世界の異変の原因を突き止められたということでしょうか?」と言ったので私は頷きつつ答えたのだ。
「はい。明日から元凶の元に向かう予定です。」
すると大臣たちは安堵したような表情を浮かべつつも不安そうな様子だったのである..........しかしそれも当然の反応だろうと思う……何せ相手は未知の存在なのだから、何が起こるか分からないのだから心配になるのは当然である……そこで私はある提案をすることにしたのだ。「皆さんも私たちと一緒に来ませんか?きっと役に立つと思います!」と言うと彼らは驚いた様子を見せたがすぐに考え込んでしまったようだったのでしばらく待っていると結論が出たのか顔を上げたのだった............そしてこう言われたのである。「分かりました。では我々も同行させていただきます」こうして私たちは共に行動することが決まったのだった!その後、私たちは一旦部屋に戻ることにしたのだった。
「これで皆きっと喜んでくれたに違いないですね」
シュヴァリエ様が嬉しそうに言い、私も同じように感じていたところだった。
「ええ!きっとそうですわ」
そんな会話をしながら廊下を歩いていると目の前に誰かが立っているのが見えたのである。
淡い絹のようなブロンドの輝く髪に、青く透き通った瞳を持つ美しい少女だった。彼女は私たちの姿を認めるとにっこりと微笑んで話しかけてきたのである……
「あら、あなたはもしかしてローザさんかしら?」と言われてしまったので私は戸惑いつつも返事をすることにしたのだ...........すると彼女は微笑みながら続けたのである。
「私のことはご存知かしら?まあ、嫌でも有名になってしまったのだけれど」
そう自嘲気味に笑う彼女に戸惑っていたのだが、彼女は自己紹介をしてくれた。
「私の名前はアリスよ。よろしくね?ローザさん?」
そう握手を求められたのだが、彼女の手を握った瞬間、とてもひんやりして華奢で、まるで人形のように綺麗な手をしていることが分かったのだった。
アリス…どこかで聞いたことのある名前のような?
そんなことを考えつつ、私も応えた。
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」と私が元気よく答えると、アリスさんは嬉しそうに微笑んでくれたのだ……その笑顔はとても可愛らしくて思わず見惚れてしまったほどだった。しかし、シュヴァリエ様の顔色はみるみる悪くなっていくばかりだ。
「シュヴァリエ様..........どうされましたか?」
私が尋ねると彼は震える声で答えたのだ。「..........いえ、なんでもありません。それよりも早く部屋に戻りましょう。」そう言って歩き出した彼を不思議に思いながらもついていくことにしたのだが、アリスさんが声を高らかにした。
「シュヴァリエ様、私はあなたの持つ誤解を解くという任務がありますわ。」
「誤解……?」と私が首を傾げる中、シュヴァリエ様は真っ青な顔で答えたのだ……。
「彼女は私の元婚約者である、アリスです。変な噂が流れていたでしょう?」
「えっ...........?」と私が驚く中、彼女は続けた。
「ええそうです。私は婚約者なのですけれど、今は違うの。」そう言って微笑む彼女の目はどこか冷たく感じたのだった……そしてアリスさんは、シュヴァリエ様に声をかけた。
「今日こそはお話を聞いてもらいますよ。大臣たちにはずっと門前払いされて、中々シュヴァリエ様とお話できなかったのだから」
「アリス……私には、今は大切な方がいるので。」そう言ってシュヴァリエ様は俯いてしまったが、それでも彼女は諦めようとしなかったようだ……そして私の方を見て言ったのだ。
「ローザさんも一緒で構わないわ。それでは参りましょう?シュヴァリエ様?」
こうして私たちは三人で庭園へと向かうことになったのである……
庭園に着くと早速話が始まったのだった...........まずは私から自己紹介をする事にしたのだが、そこでもやはり驚かれたようだった。
確かに私は地位も名声もないが、それでも一応それなりの教育は受けてきたつもりだったのだが、やはり一般人である私では、シュヴァリエ様の隣に並ぶ資格はないのだろうか……?と少し悲しく思っているうちに話は進んでいたようだ..........
「そうですか……ふぅん、すごいわね」そう言って笑うアリスさんはとても美しく見えたのだったが…正直彼女が何を考えているかわからない。
そんな彼女を見ていると、いつの間にか話は進んでおり、シュヴァリエ様は彼女にこう言っていたのだ。
「アリス、もう帰ってくれないか?私は今忙しいんだ」しかし彼女は首を横に振った後で言ったのだ。
「いいえ、そういうわけにはいきませんわ」と……それからしばらく沈黙が続いた後、彼女は再び口を開いたのだった。
そして私はその言葉の意味を理解することになるのだが……それはあまりにも衝撃的なものだった。
「シュヴァリエ様、あなたは私を愛しているのですよね?」と言ったのだ……その言葉にはどこか確信めいたものがあったように思う……しかしそれでも彼は否定しようとしたようだ。
「言ったはずです。私には大切な人がいます」と冷静に訴えかけるように言ったのだが、それでも彼女の表情が変わることはなかったのである……それどころか、ますます笑みを深めていったように見えたほどだった。
そんな彼女の様子に戸惑いながらも、彼は必死に説得しようとしていたのだが結局無駄に終わったようだった……それからも二人は話し合いを続けていたようだが、やがてアリスさんが先に折れる形で終わったようだ……その時の彼女の顔はとても満足げだったが、その間だけ席を外して遠くから見ていた私は、一体何を話していたのだろうか?と疑問に思ったが聞くことは躊躇われたのだった……しかし一つだけ分かったことがあるとすれば、シュヴァリエ様はやはり彼女のことが嫌いではないのではないか?ということだったのだ。
「ローザさん、ごめんなさいね」そう言って謝るアリスさんは、まるで勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「いえ、大丈夫ですよ」と焦らず答えつつ私は考えていたのだ。
アリスさんは一体何を考えているのだろう?シュヴァリエ様に対しての執着心は異常とも思えるほどだったが……それでも彼女はまだ何か隠しているような気がしてならなかったのである……そしてそれが何なのかは私には分からないけれど、きっと彼女にとってとても大切なことなのだろうと思ったのだった……だから私はそれ以上深く追及しないことにしたのだった。
それから私たちは部屋に戻ることになったのだが、その間もずっとアリスさんの視線が気になっていたのだ……まるで監視されているかのような気分になったのだが、きっと気のせいだろうと思い込むことにしたのだった。
部屋に戻るとシュヴァリエ様が突然私を抱きしめてきたのだが、私は驚きつつもそれを受け入れることにしたのである……何故なら彼がこんなにも甘えてくることなど滅多にないことだったからだ……きっと不安だったんだろうと思った私は優しく頭を撫でつつ背中をぽんぽんっと軽く叩いてあげたのだ。すると彼は落ち着いたのかゆっくりと身体を離し、恥ずかしそうにしながらも微笑んでくれたので私も微笑み返したのだった。
「ありがとうローザ、そしてあなたも不安なのに..........」
とシュヴァリエ様は申し訳なさそうに言ってくれたのだった。私はそんな彼を愛おしく思いながらも、首を横に振った後で言ったのである。
「いえ……気にしないでください」と言った後に続けて言ったのだ。
「それより、これからどうされるのですか?アリスさんはまだ諦めていないようでしたけれど.........」と言うと彼は少し考え込んだ後で答えたのだった。
「そうですね……まずは明日に備えて休みましょう」と言うので私たちはそのまま眠りについたのだった……そして翌日になり朝食を食べ終えると早速出発することとなったのだが、その前に一つだけ気になったことがあったため聞いてみることにしたのだ。
「あの……シュヴァリエ様、一つ聞いてもよろしいでしょうか?」と言うと彼は不思議そうな顔をしつつも頷いてくれたので私は思い切って聞いてみたのである。
「どうして私を好きになったのですか?他にも綺麗な女性はたくさんいると思うのですが……」と尋ねると彼はしばらく黙り込んだ後で答えてくれたのだが、その内容はとても意外なものだったため驚いてしまったのだった……
「実は前に一度お会いしたことがあるのです」と言った後に続けて言った言葉は衝撃的なものだった……それはつまり、私たちが学園で話す前に既に会っていたということだろうか……?
「それは一体いつのことなのですか……?」と私が恐る恐る尋ねると彼は答えたのだった。
「ええ、あれはまだ私たちが幼い頃のことですが……」と言って話し始めた話は驚くべきものだった……なんとシュヴァリエ様は昔、ある少女と出会ったことがあるというのだ。その少女は貴族ではなく一般の家庭で育った平民の娘だったらしいのだが、とても優しく美しい人だったそうだ。しかしある時を境に姿を消してしまったらしく、それ以来一度も会うことはなかったらしいのだ...........
そしてそれが私とそっくりだというのである……
つまり彼女は私であり、突然いなくなった理由は引越しのためにシュヴァリエ様と離れ離れになったということだ。
「あの時は突然、お別れのご挨拶もできず申し訳ありませんでした。まさか、彼がシュヴァリエ様だったなんて…」
私は深々と頭を下げた。
そんな私を見たシュヴァリエ様が慌てて腕を振る。
「いえ、気にしないでください!あのとき学園で声をかけてくださった時、運命だと思いましたから。」
そう言って微笑む彼を見て胸が高鳴るのを感じた。
「これからもよろしくお願いしますね、ローザ。何があっても私はあなたのそばにいますよ。」そう言って手を差し出すシュヴァリエ様に対して、私も迷わずその手を取ったのだった……そして私たちは再び歩き出すのだった。
それから数日後のこと、私たちは再び皆が待つあの街へ向かうことにした。馬車に乗って移動する間、シュヴァリエ様はずっと手を握っていてくれたため安心することができた。しかし一方で、大臣や騎士たちも無事についてこられているだろうかと少し心配になったりもしたのだが、すぐにそんな考えを振り払ったのだった。そしてついに目的地に着いたので馬車から降りるとそこには大勢の人が集まっていたのである!皆口々に祝福の言葉をかけてくれたためとても嬉しかったのだけれど、その中には涙を流して喜ぶ姿も見られたため私も思わず泣いてしまったほどだった……
「皆さん、素晴らしい歓迎を本当にありがとうございます!!」と言って頭を下げると拍手が起こったのだった。
その後、私たちは街の中心にある広場まで移動し、皆を待つことにした。
その間もシュヴァリエ様と手を繋ぎ続けていたのだが、彼はずっと笑顔でいてくれていたので私も自然と笑顔になれたのだった。
しばらくすると仲間たちが集まり始めたので私は手を振って合図を送った。すると皆一斉に駆け寄ってきてくれたためとても驚いたのだけれど、中でも一番喜んでいたのはメアリーさんだったかもしれない..........彼女は泣きながら抱きついてきたほどだったのだから……そんな様子を見ていた、グレッグさんとテオフラトゥス様からも優しいお言葉をかけてもらったことで、更に感動してしまい思わず泣いてしまったほどだったけれど。
「さて、行きましょう.........と言いたいところですが、グレッグさんはいらっしゃらないのですか?」
シュヴァリエ様が尋ねると、皆は首を横に振った後で答えた。
「それが、どこにいるかわからなくて.........。あちこち探してみたのですが、中々見つからないんです。一体どこにいるのかしら..........。」
不安で仕方ない顔をしたメアリーさんがが言うと、シュヴァリエ様も困った顔をされた後で言ったのだ。
「そうですか……では私たちだけで行きましょうか?」と言った後に私の手を取り歩き始めると、他の皆もそれに続いてくれたのだった。そして街の中を進んでいく中で、ふと気になったことがあったため尋ねてみることにしたのである。
「あの.........シュヴァリエ様、一つお聞きしたいことがあるのですがよろしいでしょうか........?」と言うと彼は不思議そうな顔をした後で首を傾げたので私は思い切って聞いてみたのだ……それは、魔法の勉強は順調なのかということだった。「はい、おかげで上級魔法を使えるようになりましたし、順調ですよ。王宮内でも、テオフラトゥス様とやりとりを欠かさずに毎日練習していましたから。」
彼は笑顔で答えてくれたので私は安心したのだが、それでも不安は完全に拭えなかった……というのも勉強が忙しくなったため体調を心配していたのだけれど、今の様子だと特に問題は無さそうだった。
それからしばらく歩いているうちに目的地に到着したようだ。そこは大きな研究所で、なんだか禍々しい雰囲気を醸し出していた。中に入ると研究者たちが出迎えてくれたのだが、皆なんだか笑っていないような感じがした。
そして私たちは案内されるままに奥の部屋へと進んでいったのだが、そこには巨大な装置が置かれていたのだ...........不気味さを感じずにはいられなかったのだが、同時に興味も湧いてきたのだった。そこで私はシュヴァリエ様や仲間たちに聞いてみたところ皆も同じ気持ちだったようだ。
「これは一体なんなのですか?」
私が尋ねると研究者の一人が答えてくれたのである。
「この装置はね、魔法の研究をするために作られたものなんだ。」と説明してくれたのでさらに詳しく聞いてみることにしたのである。
「魔法の研究ですか...........?」
私が聞き返すと彼は頷いてくれた後で説明してくれた。
「うん、そうなんだ。実は最近になって新たな発見があったんだよ。それはね……マナクリスタルというものについてなんだけれどね……」と言うと研究者たちは一斉に歓声を上げ始めたのだ!一体どういうことなんだろうと思っているうちに一人の研究者が近づいてきて私たちに話しかけてきたのである。「皆さんもご存じの通り、この世界にはマナと呼ばれるエネルギーが存在していますよね?その源となっているのがこのマナクリスタルなのです!」と言いながら見せてくれたものは、透明な結晶体のようなものだった。
「これがですか..........?」私が尋ねると彼は笑顔で頷いてくれたので驚いたのだが、さらに驚くべきことが起こったのである……なんと突然その結晶体が光り出したかと思うと宙に浮き上がったのだ!そしてそのまま天井をすり抜けて飛んでいってしまったのだった。その光景を見た私たちは呆然としていたが、やがて我に返った。
「あのマナクリスタルを壊すと、世界中の魔法使いを統括できるんだ。そう、俺らが世界になるんだ!」
そう言って研究者達は狂ったように笑っていて怖かったので、私は冷や汗を流した。
「…そんなことをしたら、世界が滅びに近づくが?」
テオフラトゥス様が冷静に言うと彼らは急に真顔になった後で言ったのだった。
「その通りでございます........だからこそ、私たちはこうして研究を続けているのですよ!」
彼らの言葉には強い信念が込められているように感じられたため、私は何も言えなかったのだが代わりにシュヴァリエ様が口を開いたのだ。
「それならなぜこんなことをしているのですか?」という質問に対して答えたのは別の研究者だった。「ふふ、王子様は面白いことを質問するのですね。.............戦闘用意!」という掛け声とともに一斉に武器を構える研究者たちに対して私たちは身構える……だがその時だった。突然部屋の扉が開かれて兵士たちがなだれ込んできたのである!どうやら街の方からも増援がやってきたようだ。
「もう逃げられんぞ!」と大臣が叫んだ後でシュヴァリエ様が前に出る。
「皆さん、ここは私に任せてください!」と言った後に魔法を唱えると辺り一面が光に包まれると同時に、私たちのまわりを温かい光が包んでくれたのである。
この魔法は一体...........?と思っているうちに光が収まる頃には、研究者達は怯んでいたが、こちらに近づいてくる様子がなかった。それどころか後退りする者もいて、どうやら戦意を失ってくれたようだったのだ……そしてその後でシュヴァリエ様が私たちに向かって言ったのである。
「皆さん、早くここから脱出しましょう!」と言われたので私たちは急いで建物から出たのだが、そこには大勢の兵士たちが集まっていたのだ……! このままでは捕まってしまうと思ったその時だった……突然地面が揺れ動き始めたかと思うと、巨大な怪物が現れたのである!それはまるでゴーレムのような姿をしていたが全身が岩で覆われていた。
そして兵士たちに向かって襲いかかると次々に薙ぎ倒していったのである。その光景を見ていた私たちは呆然としていたのだが、やがて我に返るとすぐに逃げ出したのだ。
そして何とか逃げ切った先で目にした光景は恐ろしいものだった……街や家が破壊され尽くしており、多くの人々が傷ついている姿を目にしたからだからである。その中にはグレッグさんの姿もあったので私は思わず駆け寄っていったのだが、彼の意識は朦朧としており危険な状態だったためすぐに治療を行うことにしたのだった..........
幸いにも一命を取り留めることができたもののまだ油断はできない状況だったため、私たちはすぐに王宮に戻ることにしたのだった。
その後シュヴァリエ様は国王様たちに説明をしてくれたらしいのだが、彼らもまた驚きを隠せなかったようだ。そして今回の件については、彼らに一任されることとなったのである........。
「グレッグさん...........」私は彼の寝顔を見ながら呟いていた……早く目を覚ましてほしいという思いを込めていたのだが、その願いは叶わなかったようで彼はまだ眠り続けているようだった。
「ローザ、大丈夫?」とメアリーさんが心配そうな顔で声をかけてくれたので私は微笑んで答えたのだ。「ええ、大丈夫ですよ」
「本当に?無理してない?」と言われてしまったので、私は素直に認めることにした。
「はい、確かに辛いですけど..........でも、私がしっかりしないといけませんからね」
そう答えると彼女はホッとしたような表情を浮かべた後で言ったのである。
「..........ありがとうね、ローザ。あなたがいなかったら今頃どうなっていたかわからなかったもの」と言う彼女の目には涙が浮かんでいたので驚いたのだが、同時に嬉しくもあったのだ。
あの一度の冒険から、こんなにも仲良くなれた仲間がいることが何よりも嬉しかったからかもしれない。
「ふふ、どういたしまして」と言って私は彼女に抱きついたのだった...........そしてしばらくの間抱き合っていたのだが、やがて落ち着いたところでお互いに離れた後で笑いあったのである……それからというもの、私たちは毎日のようにグレッグさんのお見舞いに行くようになったのだが、未だに目を覚まさない状態が続いていたため不安は募るばかりだったのだ……
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