第3話
シュヴァリエ様は、わたくしを庇うように立ち塞がると、剣を構えると叫んだ。
「ローザ!下がってください!」
その言葉を聞いてもわたくしは動くことができなかった。目の前には恐ろしい魔物がいるというのに、足がすくんで動けないのだ。
シュヴァリエ様が剣を振るって攻撃を仕掛けるが、全く効いていないようだ。それどころか逆に攻撃を受けて弾き飛ばされてしまう。「シュヴァリエ様!」わたくしが叫ぶと彼は立ち上がりながら答えた。「ローザ!逃げてください!」
しかしわたくしは逃げることができなかった。恐怖で足が動かないのだ。その間にもシュヴァリエ様は魔物に追い詰められていく。
このままでは彼が倒されてしまうかもしれないと思った瞬間、わたくしは覚悟を決めた。
「わたくしも戦います!」と叫びながら剣を構える。恐怖心はあったが、それ以上にシュヴァリエ様を助けたかったのだ。
すると突然声が響いた気がした。
「危ない!俺に任せて!」
そう言いながら見知らぬ男性が剣を持ってこちらに走ってくる。「あなたは……?」と尋ねると彼は笑顔で答えた。
「俺は戦士だ、安心してくれ!」と言う彼の言葉を信じて、わたくしは後ろに下がった。
すると彼は剣を振りかざして魔物に向かって行った。そして目にも止まらぬ速さで攻撃を始めると、あっという間に倒してしまったのである。
「すごい……」わたくしが呟くと彼は照れ臭そうに笑った。「いや……それほどでもないよ」と言いながら手を差し伸べてきたので、わたくしはその手を掴んで立ち上がることができた。
それから彼は自己紹介をしてくれた。
名をグレッグと言うそうで、なんとも好青年だった。
「先程はありがとうございました」
と礼を言うと彼は首を横に振った。「お礼なんていいよ!それよりも無事で良かった」
そしてシュヴァリエ様の方を振り向くと、彼は優しく微笑みかけた。「怪我はないかい?」
シュヴァリエ様は驚いた表情を浮かべていたが、やがて微笑みながら言った。「えぇ……大丈夫です」
それから三人で街に戻ると、グレッグが口を開いた。「実は俺……この街に来たばっかりなんだ!」と言う彼の言葉に驚くが、同時に嬉しくもあった。どうやら仲間ができたようだ。
その後、グレッグとシュヴァリエ様と一緒にギルドに向かうことになった。
ギルドに到着すると受付嬢の女性が出迎えてくれたのだが、わたくしたちの姿を見て驚いていた。「あれ?シュヴァリエ様……それにグレッグさん!?お帰りなさい!」
「ただいま戻りました」と言うと、グレッグが微笑みながら言った。「ちょっと色々あってね」それから彼はわたくしの方を見ると言った。「この人は俺の仲間さ!」その言葉に受付嬢の女性も嬉しそうにしているようだった。
そしてわたくしも自己紹介をしたのだが、彼女が不思議そうな顔をしていることに気が付いた。「あの……どうかしましたか?」と言った後、彼女はすぐに満面の笑みを浮かべた。
「だって、やっと勇者様がお戻りになられたんですよ!グレッグさん、一体どこにいらっしゃったのですか!」
「え!?」
私たちは驚いてグレッグを見ると、彼は照れくさそうに頭を掻いた。
「いやー参ったよ……実は迷子になっててね」と彼は言った。
「でも良かったです!これでまた街が救われますね!」と彼女は嬉しそうに言ったが、わたくしは複雑で驚きの気持ちだった。
(勇者は、このグレッグという人だったの?)
しかし今はそれを考えている場合ではないと思い直すことにした。まずはグレッグにお礼を言わなければならないからだ。
その後、グレッグと一緒にギルドから出ることになったのだが、そこでシュヴァリエ様が口を開いた。「あの……グレッグさん、お願いがあります」
彼は真剣な表情を浮かべていたが、グレッグは不思議そうに首を傾げた。「どうかしましたか?」と尋ねると彼は続けた。
「私は魔王を倒すために旅を続けています……それで一緒に冒険をしていただけませんか?」
シュヴァリエ様がそう尋ねると、グレッグは笑顔で答えた。「もちろんです!」彼の言葉を聞いたわたくしは安心したが、それと同時に不安も感じた。果たして彼について行っても良いのだろうか? そんなことを考えていたのだが、シュヴァリエ様は嬉しそうに笑っていた。どうやら彼のことを気に入ったようだ。
それからわたくしたちは冒険者ギルドを出ると、グレッグと一緒に行動することに決めた。これから先の旅がどうなるのか分からないが、きっと素晴らしい冒険になるに違いないとわたくしは思った。
(サーシャ様、どうかわたくしたちをお守りください)
心の中でそう願いながら、わたくしは新たな仲間と共に旅を続けるのだった……。
その日の夜、私は夢を見ていた。それは遠い昔の出来事であり、今となってはもう存在しない世界の光景だった。
私はその世界では聖女と呼ばれていた。しかし、それは私ではなく別の人物の名前だったはずだ。それなのになぜ私がそのような夢を見ているのか分からなかったが、不思議と不快感はなかった。
夢の中の私は魔王を倒すための旅を続けていたようだ。仲間と共に旅をするうちに様々な困難に立ち向かいながらも成長していく姿が映し出されていく中で、私はある女性と出会った。彼女は美しく聡明な女性だったが、同時にどこか影のある雰囲気を漂わせていた。
彼女が何者なのかは私には分からなかったが、彼女の存在に私は強く惹かれた。彼女が夢の中でどのような役割を果たしているのかは分からないが、私は彼女を救うための旅を続けたいと考えていたのだ。
そして夢の中で更に数日が過ぎていくと、ついに私たちは魔王城へと辿り着いたのだった。しかしそこには強大な力が待ち構えており、我々の力だけでは到底敵いそうになかった。それでも諦めるわけにはいかなかったのだ。
そこで私たちは最後の賭けに出ることにした。力を解放して魔王を封印することに成功したのだが、その代償として彼女は命を落とすことになる。
最後に彼女は私に別れを告げた。「必ずまた会いましょう……それまで待っていてください」と……。
そして夢から覚めると、私は涙を流していた。なぜ自分が泣いているのか分からなかったが、きっと大切な思い出だったのだろうと思った。
それから私は涙を拭い、ベッドから起き上がると身支度を整えた。今日は大事な日なのだ。役目を果たすためにも頑張らなければならないのだ。そう決意しながら私は部屋を出て行ったのだった……。
「うーん……今日こそは!」と私は気合いを入れて家を出た。昨日と同じように朝早くに目が覚めてしまったのだが、今日は不思議と眠気がなかった。きっと夢に出てきた女性が私を励ましてくれたのだろうと思っていると、自然と元気が出てきたのだった。
私は装備を整えた後、街の外へ出た。するとそこにはグレッグさんが待っていた。彼は私を見つけると手を振ってくれたので、私も手を振り返した。「おはようございます!ローザさん」と言う彼の言葉を聞いた瞬間、ほっと安心したような気がした。
「ええ、おはようございます。あら?シュヴァリエ様は…」
と尋ねると、彼は「まだ来ていませんよ」と答えてくれた。私は心配になって辺りを見回してみたが、シュヴァリエ様の姿は見当たらなかった。
それからしばらく二人で待っていたのだが、結局シュヴァリエ様は来なかった。
「どうしたのかしら?何かあったのかしら……」と私が言うと、グレッグさんは少し考え込んでから口を開いた。「もしかしたら……寝坊しているのかもしれませんね」と言うと彼は笑っていた。私もつられて笑った後、私たちは街に戻ることにした。
(まあ……シュヴァリエ様ならきっと大丈夫ですよね)と私は思った。シュヴァリエ様はとても強い方ですし、それにいざとなったらグレッグさんもいますし……。
そう思いながら歩いていると、いつの間にか街の門まで来ていた。「じゃあここで待っていてください」と言ってグレッグさんは走っていったが、私は言われた通りに待っていることにした。
それからしばらくしてグレッグさんと一緒にシュヴァリエ様もやって来たのだが、なぜか彼は浮かない表情をしていた。何かあったのだろうか?心配になったが、とりあえず街に入ることにしたのだった。
街に戻ると私たちは冒険者ギルドに向かった。そこで情報を聞くためだ。まずはグレッグさんが受付の女性に話しかけた。「こんにちは!何か変わったことはありませんか?」と尋ねると、彼女は少し困った顔をした後で言った。
「実は……最近魔王軍の活動が活発化しているみたいなんです」
「え!?」私たちは驚いて顔を見合わせた。まさかそんなことになっているとは思いもしなかったからだ。
すると女性は続けて言った。「それに、最近魔物たちの様子がおかしくて……まるで何かに怯えているような……」
「なるほど……」とグレッグさんは呟いた後、考え込んでしまった。
「どうしますか?」と私はグレッグさんに声をかけたが、彼はまだ考え込んでいるようだった。
「うーん……とりあえずは様子を見た方がいいかもしれませんね」と言うと、彼はシュヴァリエ様の方を見た。シュヴァリエ様も頷いた後、口を開いた。「そうですね……まずは情報を集めることから始めましょう」と彼は言った。
それから私たちは街に出て情報収集を始めたのだが、やはり魔王軍の活動が活発化していることや魔物たちの異変について話題になっているようだった。また、魔王城から強力な魔力を感じるということも囁かれているらしく、人々は不安を抱えているようだった。
私たちは手分けをして情報を集めることにしたのだが、なかなか有力な情報は得られなかった。結局その日は諦めて帰ることにしたのだが、帰り道にグレッグさんが口を開いた。「シュヴァリエさん……もう少し詳しく調べてみませんか?」と言うと彼は真剣な表情を浮かべたのだった。
「どういうことですか?」とシュヴァリエ様が尋ねると、彼は答えた。「実は……魔王城から感じる魔力が、以前に比べて強くなっている気がするんです。俺は気を感じられますから」と彼は言った後、続けた。「もしかすると……何か起こっているのかもしれません」
「なるほど……」とシュヴァリエ様は考え込んだ後で言った。「確かにそれは気になりますが、しかしこれ以上の調査は難しいと思います。私たちだけでは危険ですし……」
「そうですね……」とグレッグさんも同意した。
そして私たちは街に戻ると、それぞれの家に戻ったのだった。私はベッドに入った後も、魔王城から感じる魔力について考えていたのだが、結局答えは見つからなかった。
(一体どういうことなのかしら?)
そう思いながら眠りに就いたのだった……。
翌日、私は目を覚ますとすぐに身支度を整えた。今日はシュヴァリエ様とグレッグさんと一緒に、以前お話した大魔道士の元に向かうことにしたのだ。
彼なら何か知っているかもしれないと思い、早速街を散策することにした。
大魔道士は街の外れにある古びた屋敷に住んでいるらしいのだが、私はその場所を知らないため困り果てていた。するとそこにエマおばさまが通りかかり、声をかけてくれた。「おはよう、ローザちゃん!」と言う彼女の声を聞いてホッと安心すると、私は事情を説明した上で一緒に大魔道士の元に向かうことにしたのだった。
街を出てしばらく歩くと、やがて森が見えてきた。その森の中に古びた屋敷があるのだという。私たちはその屋敷を目指して進んで行ったのだが……そこで突然シュヴァリエ様が立ち止まったかと思うと、険しい表情を浮かべた。
「シュヴァリエ様?どうされましたか?」と私は尋ねたが、彼は無言のままだった。私は心配になって声をかけようとしたのだが、その前にエマおばさまが口を開いた。「どうやら、彼の方からお出ましのようね」
すると、森の奥から一人の男性が姿を現した。それは大魔道士と思われる人物だった。彼は私たちの姿を見つけるなり笑みを浮かべて話しかけてきた。「やあ!皆さんお揃いで!」
私たちは彼の元まで歩いて行くと、挨拶を交わした後で事情を説明した。
大魔道士は少し考え込んだ後で言った。「なるほど……そういうことだったか」と彼は言うと、少し間を置いてから話し始めた。
「実は最近、魔王城で何かが起こっているようなのだ」
「えっ!?それは本当ですか?」私は驚いて聞き返した。まさかそんなことが起こっているとは思っていなかったからだ。
大魔道士は頷きながら続けた。「……実は数日前からわたしも嫌な気を感じていてね。これはただ事ではないような」
「一体どうして……」私が呟くと、彼は言った。「分からない……だが何かが起こっていることは間違いないようだ」
「そうですか……」と私が言うと、シュヴァリエ様も考え込んでいる様子だった。
「まあ、とりあえず行ってみるしかなさそうだな」と大魔道士は言った。
そして私たちは魔王城へと向かうことにしたのだが……そこで突然グレッグさんが声を上げたのだった。「待ってください!」
彼は真剣な表情で大魔道士を見つめていたが、やがて口を開いた。「……あなたは何者ですか?」と言った瞬間、私はハッとした。確かに言われてみればおかしいと思ったのだ。大魔道士が魔王城で起こっていることを察知して私たちに知らせに来ただけなら、わざわざこんな所まで来る必要はなかったはずだ。つまり……この人は何か目的があってここに来たのではないか?私はそう思ったのだ。
すると大魔道士はにこりと笑った後で言った。「さすがは勇者だ……よく見破ったな」
「え!?」と私は驚いて声を上げたが、シュヴァリエ様とエマおばさまは落ち着いていた。
大魔道士は続けて言った。
「そんなことはともかく、早く行かねばまずいぞ。世界が侵食される前に」
「世界……!?」私はますます混乱してしまった。一体何が起こっているというのだろうか? シュヴァリエ様とグレッグさんは真剣な表情で考え込んでいたが、やがて決心したように言った。「行きましょう!魔王城へ!」
そして私たちは大魔道士と一緒に魔王城へと向かったのだった……。
魔王城に着くまで、たくさんの困難が待ち受けていた。魔物たちは以前にも増して強くなっている上に、罠も仕掛けられていた。それでも私たちは少しずつ進んで行くことにしたのだった。
「それにしても、なんだか気温が高いような気がします。」
と私が言うと、大魔道士は頷きながら言った。「ああ、それは私も感じていたよ。どうやら魔王が力を強めている証拠だ」
シュヴァリエ様は剣を構えながら答えた。「なるほど……いよいよ決戦の時が来たということですね」
私たちは更に進んで行くと、やがて大きな扉が現れた。その扉からは禍々しい魔力が溢れており、近づくだけで鳥肌が立ちそうだったが、それでも私たちは前に進むしかなかったのだ。
扉を開けるとそこには溶岩が流れている大きな広間があり、その奥にある玉座に一人の女性が座っていた。それは私がよく知る人物だった。
「あなたは……」と私が呟くと、彼女はニタリと笑った後で言った。
「うふふ……久しぶりね」と言って立ち上がると、私の方を見た。「まさかこの世界でまた会えるなんてね……待っていたわよ?」
私は愕然とした表情を浮かべていたが、我に返って話しかけた。
「夢で出会ったあなたが、なぜここに?」
彼女は笑みを浮かべながら言った。「もちろん、あなた方の手助けをするために決まっているでしょう?」「では、やっぱり……」と私が言うと、彼女は頷いた。
「ええ、私は賢者よ」と言うと彼女はこちらにやってきた。その姿はまさに私の夢で見た通りの姿だった。
「そんなことが…?」私は言葉を失ってしまったが、彼女は気にせず続けた。
「魔王との戦いで力を貸しましょう……ただし条件があるわ」
「それは?」とシュヴァリエ様が尋ねると、彼女は言った。
「まずはその剣を渡してもらうわ」と言うと、彼女はシュヴァリエ様から剣を奪い取ってしまった。そしてそれを鞘に収めた。「さてと、共に行きましょう。」と彼女は言うと、杖を掲げた。
「分かりました……」と私は言ったが、シュヴァリエ様は険しい表情をしていた。「どうしたのですか?」私が尋ねると彼は答えた。「いえ……何か嫌な予感がするのです」
私たちは彼女に続いて魔王の部屋に向かうことにしたのだが……その時突然地面が大きく揺れ始めた。そして天井から瓦礫が降り注ぎ始め、壁も崩れ始めたのだ。
私たちは慌てて逃げ出すことになったのだが、その間にも次々と罠や仕掛けが現れ始めた。まるで私たちを魔王城へ行かせまいと思っているかのようだった。
「このままではまずいな」とシュヴァリエ様は呟いた。確かにこのままでは魔王の元へ向かうことも出来ないだろうと思われた。
「ここはわたしに任せろ」と言って、大魔道士が杖を掲げた。すると彼の頭上に光輝く魔法陣が現れ、そこから無数の光の玉が現れたのだ。それらは私たちを守るように周りを取り囲んでおり、襲ってくる罠や仕掛けを次々と破壊していったのだった。
やがて私たちは無事に出口まで辿り着くことが出来たのだが、そこで大魔道士が口を開いた。「気をつけなさい……この先には魔王がいる」
そこで私たちは一度立ち止まった。心臓の鼓動が激しく鳴り響き、緊張感に包まれているのが分かった。しかし私は意を決して言った。
「行きましょう」と私は言ったが、シュヴァリエ様はまだ迷っているようだった。
「でも……」と私が言うと、大魔道士は微笑んで言った。「大丈夫さ……君たちならきっと勝てるはずだよ」と彼は励ますように言った後、続けた。
「さあ!行くんだ!」
シュヴァリエ様は大きく息を吐くと、覚悟を決めたように言った。「分かりました……行きましょう」
私たちは魔王城へと足を踏み入れたのだった……。
魔王の居城へと足を踏み入れると、そこには誰もいなかった。
不気味な静寂が支配していた。しかしその時、どこからともなく声が聞こえてきたのだ。
「よくここまで来たな……ん?見慣れた顔があるな?勇者か」と言うその声は、間違いなく魔王のものだった。
私たちは武器を構えたまま警戒していたが、やがてその姿が現れた。それは禍々しい姿をした恐ろしい存在だった。大きな角を生やした頭には邪悪な笑みを浮かべており、背中からは大きな翼が生えていた。そして手には鋭い爪があり、全身からは黒いオーラを発しているようだった。その姿はまさに悪魔そのものであった……。
「また会ったな……」とグレッグさんが言うと、魔王は不敵な笑みを浮かべて言った。「ふん、懲りずにまた来たのか?」
「今度こそ決着をつけてやる!」とグレッグさんが叫ぶと、シュヴァリエ様も剣を構えた。
「いいだろう……かかってこい」と言うと魔王は魔法を放った。凄まじい威力の炎が私たちを襲いかかり、思わず後退してしまったが何とか耐え抜いたのだ。
しかし次の瞬間には魔王が目の前に迫っており、鋭い爪で斬りかかってきたのだ。私は咄嗟に剣で防ごうとしたのだが弾き飛ばされてしまった。
シュヴァリエ様は私を支えながら剣を構えた。「ローザ!大丈夫ですか!?」と彼は言ったが、魔王は容赦なく襲いかかってきた。私は恐怖で体が動かなくなってしまっていたが、シュヴァリエ様が庇ってくれたお陰で何とか助かったのだ。
「ありがとうございます……」と私が言うと、彼は微笑んで言った。「いえ……当然のことですよ」
グレッグさんは攻撃したが、魔王はそれを避けた上に反撃してきたのだ。
彼は咄嗟に避けることが出来たが、それでも反撃の隙は与えなかった。
魔王は私たちに襲いかかり続けた。私は怖くて動くことすら出来なかったが、シュヴァリエ様やグレッグさんが庇ってくれていたおかげで何とか無事だった。しかしこのままでは私たちは全滅してしまうかもしれないと思った時、突然大魔道士が叫んだのだ。「ここは私に任せろ!」
そして彼は杖を掲げると呪文を唱え始めた。すると魔王の周りに魔法陣が現れたかと思うと眩い光が放たれ、それが収まった時にはなんだか力が湧いて出てきたような気がした。
「一体..........!?」私が驚いていると大魔道士は言った。「私の魔力を分け与えたんだ!これで、しばらくは足止めできるはずだ!」
しかし、魔王は即座に攻撃を再開してきた。私たちは必死に耐え抜きながら反撃の機会を窺っていたが、その時突然魔王の動きが鈍くなったような気がしたのだ。よく見ると体にヒビが入っており、徐々に崩れ始めていたのだ。
「これは.........どういうことだ?何をした?」と魔王が呟くと、大魔道士は笑みを浮かべて言った。
「お前の力を奪い取ったのさ……さあ、観念するんだな」
大魔道士はさらに魔法を使い続けた。すると魔王は少しずつ崩れていき、ついには完全に消滅してしまったのだった……。
「やったか……?」とシュヴァリエ様が呟くと、大魔道士は言った。「いや、まだだ!」
次の瞬間には地面から大きな影が現れ、それが徐々に巨大化していった。そして中から現れたのは大きな翼を持った巨大な竜だった!それは邪悪な笑みを浮かべており、鋭い牙や爪を持っていた。
その迫力に圧倒されそうになったが、私たちは勇気を振り絞って立ち向かった。
「こいつが魔王の正体だったのか……!」とグレッグさんが言うと、シュヴァリエ様は言った。「おそらくその通りです!これで決着をつけましょう!」
私たちは力を合わせ、竜に向かっていった。しかし竜は口から炎を吐き出して攻撃してきたり、鋭い爪や牙を使って攻撃をしてきたりと手強い相手だった。それでも私たちは必死に戦い続けた結果…… ついに優勢に持ち込めたのだ。
竜の動きが鈍ってきたため、賢者は剣を振りかぶって叫んだ。「これで終わりよ!」
次の瞬間、彼女の剣が竜の体を斬り裂いた!竜は大きな悲鳴を上げて倒れ込み、そのまま消滅してしまったのだ……。
「やった……!」と私が言うと、シュヴァリエ様もホッとした表情で言った。「ええ……これで世界は救われたのですかね」
グレッグさんも笑顔で近づいてきて言った。「良かったな.........みんな無事で!」
そして大魔道士の方を向くと彼は言った。「ありがとう、お主たちのおかげで世界を救うことができた」
「いえいえ……皆さんの協力があってこそだよ」とグレッグさんは言った後、思い出したように言った。「そうだ……君たちに渡しておきたいものがあるんだ」そして彼は杖を振ると、私たちの前に一本の剣が現れた。それは黄金色に輝いており、柄の部分には宝石が埋め込まれていた。
「これは...........?」と私が尋ねると大魔道士は言った。「この剣は魔力が宿っているようだ……これがあれば、強力な力を使えることになりそうだな」
「ありがとうございます!」と私は言った。「大切に使わせていただきます」
そして私たちは魔王城を後にしたのだった……。
その後、私たちはグレッグさんたちと共に雑談をしながら帰っていた。
「それにしても、魔王の真の姿があんな竜だったなんて、思ってもいなかったな」
とグレッグさんが言うと、シュヴァリエ様も同意した。
「そうですね........しかし、これでもう魔王の脅威はないと思います」と私は言った。「本当に良かった……」
そして私たちは帰路についたのだった……。
ギルドに戻ってから私たちは、たくさんの人に祝福をされた。
「ありがとう!君たちのおかげで、安心して暮らせるよ!」
「本当に助かりました!感謝しています!」
と街の人々は私たちに感謝の言葉をかけてくれた。
そして私たちは、ギルドの酒場で祝杯を挙げた。「勇者様一行!本当にありがとうございます!」とマスターが言うと、周りの人たちも一斉に拍手をしてくれたのだ。私は少し照れくさく感じつつも嬉しかった。
「さあ、今日は飲みましょう!どんどん食べてくださいね!」
とマスターは笑顔で言った後、料理を運んできてくれた。
私はそれを食べることに夢中になっていたが、その時ふとシュヴァリエ様の姿が目に入った。彼は笑顔を浮かべていたが、どこか寂しげな雰囲気も感じられた。
「シュヴァリエ様、どうかしましたか?」と私が尋ねると、彼はハッとした表情で答えた。「いえ……何でもありません」
私は少し気になったがそれ以上聞くのはやめたのだった……。
そして、私たちは食事や会話など楽しんでいた。
そんな時突然ドアが開き、一人の男性が駆け込んできたのだ。その男は肩で息をしており、顔色も悪く憔悴しきっていたようだった。彼の様子を見かねた私は、思わず「どうかしたんですか?」と私が尋ねると、彼は答えた。
「実は……先程魔王の手下達を確認したんだ!」
その言葉を聞き、私たちの間に緊張が走った。まさかまだ魔王軍が生きているなんて……。
グレッグさんは続けて言った。「今、街の人々が襲われているんだ!早く助けに行かないと……」と彼が言いかけたところで、シュヴァリエ様が口を開いた。「分かりました……行きましょう!」
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