第62話 花嫁候補を誰にするか迷う幸せな俺

「ぬくぬくと温室育ちのお嬢様は、これだからいやになる……。世間知らずにもほどがあるというか……」


フィーナは吐き捨てる様に言った。


もちろん、顔を上気させ、俺を見つめるアイラ姫に対してだ。


「まぁ!なんなの!?この小娘!平民の分際でこの私を愚弄するとは許せませぬ!」


再度、腰のレイピアに手を掛けるアイラ姫。


「わかった!わかりましたよ!アイラ姫!今度俺とデートしましょうよ!まずは、それからってことで!」


「え?デート?」


顔を一層赤らめるアイラ姫。


彼女は剣の腕は大したものだが、周りに甘やかされて育ったため、我がままし放題。

家来の男は皆、彼女の言うことをきく。

だが、男の手を握ったことは無い。

アイラ姫は高飛車で高慢ちきなお嬢様だが、フィーナが言う通り世間知らずで、純粋なのだ。

だから、初めての嫉妬心にモヤモヤして自分を制御できなくなっていた。


ここはひとつ、穏便に事を済ませるため、俺はフィーナでなくアイラ姫の方に振り向くことにした。


……って、俺ってばいつの間にフィーナのことを気にし始めたんだ。


当初は、アイラ姫との結婚を考えていたのだが……


いかん、いかん。


アイラ姫と結婚しなければ。


彼女との間に生まれる子供は、男女問わず、ステータスが素晴らしい。

成長の薬を飲ませて、年齢を一気に12歳くらいにすれば即戦力になる。 

魔王討伐、ひいてはリムルの邪魔をするのに、必須の仲間だ。


だから、ゲームでは俺はアイラ姫をパーティメンバーにしていた。

そしてこの世界でもそうしようと考えていた。


だが、フィーナの方も気になって来ている。


彼女との結婚はどうなんだろう?

どんなステータスの子供が生まれるのか分からない。

そこまでは俺も調査していない。

知っての通り、『ゼノングランドクロッセオ・背徳の少女たち』には、数十万の登場人物が存在し、その半分は女だ。

その女達から結婚相手を選べる。

生まれる子供のステータスパターンは、女と男の相性、ランダム要素、ステータス、職業と多岐に渡る。


当然、アイラ姫の様な主役級と結婚した場合に出来る子供は、優遇された状態で生まれる。

反対に、奴隷の女と結婚した場合に出来る子供のステータスは、大したことは無い。


だから、ゲームでは結婚相手は慎重に選ぶ必要があった。


結婚のメリットは子供が出来て、それが仲間になることだ。

注意:もちろん、同性でも結婚出来るが、その場合子供は出来ない。

   その場合、里親システムで、孤児院から子供を引き取ることが出来る。


この世界で、快適に生きるならアイラ姫一択だ。

だが、俺の今の感情は……

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